第243話 早く帰ろう
隣国の上空を夜の闇に紛れてこっそり通過しようとしたところ、なぜか発見されて攻撃を受けてしまった。
どうやら待ち伏せされていたらしい。
おそらく、往路のどこかで目撃されていて、対策をされてしまったのだろう。
「さすがに農業国に入ってまでは攻撃は仕掛けて来ないか」
隣国の攻撃は、その魔法が農業国に入らないように配慮されていたようだ。
ここらへんの対処は、隣国と農業国とが友好関係なおかげか。
その関係を壊すような事は、したくないということだろう。
「どうするのよ、さっさと帰りたいんだけど?」
「そうそう、もう農業国はうんざりだから」
「いや、ノブちんに言って、隣国と調整してもらった方が良いでしょ」
「それって、何日かかるのよ?」
「この世界、情報伝達手段が酷いんだからね?」
ベルばらコンビが限界だった。
ここで、何日も足止めは、もう無理な段階に来ている。
いや、ちょっと待て。
俺たちが農業国に入ったコースは、一度西進して隣国に入り、そのまま南下して農業国に入るというものだった。
そこで西進したのは、最初は隣国でお米を手に入れようとしたからだ。
農業国は北に王国と隣国と接している。
魔の森は王国と隣国を完全に隔てている。
つまり、農業国と魔の森も接している?
たしかに街道と砦部分は王国と隣国が領有しているが、それ以外は魔の森が緩衝地帯となっているのだ。
王国と農業国の間にも魔の森の一部があり、その中の比較的安全な場所が街道として繋がっているだけだ。
隣国と農業国の間も同じ。
国境といっても、通行できる場所以外は未開の地や不干渉領域なだけなのだ。
「簡単な回避方法を見つけた」
「「なになに?」」
「王国と隣国の中間の緩衝地帯、つまり魔の森の上空を飛べば攻撃されない!」
「「盲点だった!」」
俺たちには悪気はなかった。
お米が手に入ったので、早く帰りたかっただけなんだ。
ベルばらコンビは買い物に飢えており、それが農業国で解消されなかったことで、早期の帰還を望んでいた。
それはカドハチ便で思う存分買い物をするのが一番だと悟ったのだ。
「そうと決まればコース変更よ!」
「いや、待て。ノブちんに言って隣国の誤解は解いておかないと」
「そんなの、ノブちんがお米の輸送の話をすれば伝わるでしょ?」
「もう夜中なんだから、農業国で説明してたら帰るのがまた1日遅れるじゃない!」
「ああ、お米輸送の話をノブちんが隣国にすれば解ってもらえるか」
「そうそう、どうせせっちんたちと会うか、お米輸送でしか隣国とは関わらないんだから、問題ない」
「それもノブちんが話を通してからのことだからね」
なるほど、確かに理に適っている。
隣国上空を通るから攻撃されるんであって、通らなければ何の問題もない。
ならば、さっさと帰ってカメレオン2からの念話を待てばよい。
忘れていたが、
奴にお米輸送を任せても良いだろう。
そのためには、飛べる昆虫型の魔物がもう1匹眷属に欲しいな。
たまご召喚で出るまでマラソンするか。
こうして俺たちは、隣国から攻撃されたことをノブちんに伝えることなく、別ルートで帰還するのだった。
◇
Side:ノブちん
「ノブちん、いる?」
隣国からの国境を正式に越えてせっちんと貴坊がやって来た。
「これはせっちんたち、どうしたんだな?」
「人食いの昆虫魔物が出た」
「僕の予知(的中率60%)でも危険な存在だと出ている」
「それは大変なんだな!」
農業国で虫魔物は益虫のカマキリ以外は嫌われる傾向がある。
「どうやら魔の森から
その魔物が農業国から戻るときに迎撃したんだけど、人間を餌として運んでいるところだった」
「なんと
「俺たちが攻撃したので、魔物は農業国に戻った。
農業国で攫われた被害者が出てるはずだ。
警戒するように伝えようと、俺たちはやって来たんだ」
もしかすると転校生くんたちの見間違いかと思ったんだな。
でも、転校生くんたちならば、戻って来て仲裁を求めたはずなんだな。
「直ぐに農業国の上層部に伝えるんだな」
転校生の知らないところで、事態はおかしな方向に進んでいた。
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