第239話 お土産
「お金も出来たし、次は買い物ね」
「ノブちん、デパートみたいな商会に連れてって」
「わかったんだな。
でも、期待してはいけないんだな」
ノブちんが歯に何かが挟まったような言い方をする。
これは何かありそうだな。
だが、ベルばらコンビは、やっと買い物が出来ることに浮かれていて、ノブちんの様子には気付いていないようだ。
「ここなんだな」
「ん? ここなの?」
「農協の間違いでは?」
「おお、稲の苗が売ってるじゃん」
そこは良く言ってホームセンターのガーデニングコーナーだった。
各種肥料や農薬、農器具、野良着、モンペ、長靴などが並んでいた。
奥の方にはおそらく牛か馬に引かせる農耕器具だろうものが置いてあった。
「なんじゃこれは!」
「カドハチの荷馬車の方がマシじゃん!」
そこにはカドハチ便だけで間に合っているという現実があった。
「農業国なので、こんなもんなんだな」
「お土産の民芸品とかもないの?」
「あっちに雨乞いの人形があるんだな」
「要らない……」
ベルばらコンビの落ち込み様は尋常ではなかった。
「隣国ならば多少はマシだったんだな」
「それだ!」
「隣国に買いに行くぞ!」
いやいや、せっかく避けて来たというのに、何言ってんのこいつら。
「それは隣国で騒ぎになるから避けたんじゃないか」
「ノブちんが隣国から派遣された勇者ってことは、隣国にも私たちの情報は行くよね?」
「それならば、隣国で買い物しても問題ないはず!」
それはそうだけど、上空を侵犯して農業国に行きましたとか、言えるわけないじゃん。
「皆は王国の品が手に入るんだな?
それならば、隣国の品なんてがっかりするだけなんだな」
ノブちん、ナイスアシスト。
「ほら、だからお米だけ買って帰ろうよ。
あとでカドハチ便で爆買いさせてあげるから」
「「約束だぞ!」」
おそらく、ベルばらコンビが欲しいものはカドハチ便で手に入る。
唯一出掛けなければいけないのは、武器屋のオヤジが本人が来ないと売らないと言っている黒鉄の剣だ。
あれも今となっては、俺が錬金術で作った剣の方が性能が良さそうなんだよな。
第3職業に錬金術師も入ったし、剣は俺が作ってしまおう。
「約束だ。
今回は短期旅行ということで我慢してくれ」
「そう思ったら、この国の観光名所を見てなかったぞ」
「何が名物なんだ?」
「この一面の田んぼが名所なんだな。
名物は美味しいお米なんだな」
「「もうお腹いっぱいだよ」」
田んぼなんて見飽きるほど見てるし、ご飯も振舞われた。
ベルばらコンビは2つの意味でお腹いっぱいだった。
「俺は、この稲の苗を持ち帰りたい。
輸出規制とかあるのか?」
「王国への持ち出し転売は禁止されてるんだな。
なので身分がきちんとしてないと買えないんだな」
「となると、王国に接している俺たちの
「王国に盗まれる危険があるならば、無理なんだな」
米の栽培は断念しなければならないか。
だけど、食用のお米が定期的に手に入るのならば、それで良いか。
「食べるためのお米ならば買えるんだよね?」
「農業国からプレゼントしてくれるそうなんだな」
「いや、お金は払うぞ。
300万ギルも手に入ったしな。
これを国外に持ち出すよりは、しっかり使いたいからね」
「それは無理なんだな。
農業国は、受け取らないんだな」
それって、俺たちに農業国の勇者になれってアピールだよね?
貰うだけ貰うのは後ろめたいけど、国のメンツを潰さないために貰っとくか。
俺たちは買うって言ったんだからね?
「わかった。今回は貰っとく。
でも次は買うからね。
300万ギルを使わずに国外に持ち出すって経済的にまずいでしょ」
お金は動いてこそ経済が回る。
そのお金を俺が死蔵してしまうのは良くないだろう。
「そうだ、隣国経由でお米の輸送をしてもらうってどうだろう?
その代金をノブちんに預けておくから、定期的にお米を送って欲しい」
「それなら任せるんだな。
拙者が居なくなっても継続出来るようにしておくんだな」
「ありがとう。ノブちん」
「なんのなんの」
こうしてお米を入手するアイデアが提案され、そのルートや実施計画が練られた。
「ところで、住所はどこなんだな?」
「魔の森の中かな?」
ノブちんがジト目を送ってくる。
国境越えルートは、王国にお米を接収される可能性があったのだ。
「それならば、隣国内で受け取れるようにしておけばいいんだな」
「すまない」
なんとかして隣国と正常に行き来できるルートを開拓しなければ。
街道は王国領だから面倒なんで、うちの領地と隣国で国境があれば良いんだよね?
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