第226話 双六を登録する

「スゴロクですか?」


 カドハチ便でやって来たケールに双六を見せてみると、知らない娯楽だという。

怪訝な顔のケールに少しプレイさせてみると、彼はその面白さにハマり興奮していた。


「売れる! 間違いなく売れる」


「過去に類似品が出回ったとか、禁止されたとかはないか?」


 そう訊ねたが、ケールは首を横に振った。


「このような新しい娯楽は、商業ギルドに登録して専売権を得るのですが、これは未登録のはずです」


 なんと著作権管理のような仕組みもあるそうだ。

そこに登録さていなければ、今まで売っていなかった物ということだ。

つまり登録出来るのであればそれは新しい物という認識で良い。


「そうなのか。トランプとかと同じなのか」


「トランプは過去の勇者様が登録されていましたが、既に専売権は切れてますね」


 専売権が切れるなんてことがあるのか。

それは条件を知っておいたほうが良いな。

それと誰が開発したのかを秘匿できないものだろうか。


「専売権について詳しく教えてくれ。

切れてしまう条件とか、名前を隠して登録できるのかとか」


「かしこまりました。

専売権が切れるのは、新しく登録してから10年です。

トランプは既に10年を過ぎたのと、その勇者様が亡くなったため切れました」


「登録者が死ぬと切れるのか」


「専売権は相続可能ですので、大抵は子孫に移り10年を全うするものですが、その勇者様は子孫がいなかったため失効しました」


「その専売権だが、他人に売ったり、例えばカドハチ商会として持つことは可能か?」


「はい、譲渡も、商会での所持も可能です。

名前を隠したい場合などにも、商会として登録するという事を利用します」


「双六をカドハチ商会の登録として、我が家が表に出ないことは出来るか?」


「手数料をいただきますが、製造含めて我が商会にお任せいただけると幸いです」


 これは任せた方が得だな。


「ベルばらコンビ、任せても良いか?」


「「良いこと尽くめだ」」


「よし、双六はカドハチ商会に任せよう」


「ありがとうございます。

つきましては、この試作品を持ち帰って「「待って」」」


 ベルばらコンビがハモリながら止めた。


「それを持って行かれると困る」


「まだ遊び足りてないのだ!」


 ベルばらコンビ、どこまで行っても残念だった。

だが、遊び足りないというのはわかる。

さっそく複製を作ろうではないか。


「じゃあ、明日のカドハチ便までに複製を作ろうか」


「直ぐにかかろうか」


「これで小遣いアップだからな」


 お金になるということで、ベルばらコンビの動きは素早かった。

そしてスゴロクという遊びがこの世界で爆発的にヒットするのだった。

盤面の内容を変えることでリピーターも現れ何度でも売れた。


 ただ2つほど問題が発生した。

一部で玩具のお札が簡易的な通貨として流通していたのだ。

この世界には紙幣が存在していなかったため、その有用性に庶民が気付いたのだ。

カドハチ商会では、このお札では物は買えないといちいち説明するはめになった。

双六の販売価格より高いお札が入っているのに、実際に使えるわけがないのだ。


 そしてサイコロが別の遊びを生んでしまい、それが賭け事になり摘発された。

所謂チンチロリンとか丁半博打というやつだ。

それらが王国の注目するところとなってしまったのは想定外なことだった。

まあ、カドハチ商会に矢面に立ってもらったんだけどね。

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