クラス転移だけど転校初日なので疎外感ＭＡＸな件―スキルたまご召喚って何だよ！―

第208話 カドハチからの情報

　緊急の要件があったのだろうと思ったため、チョコ丸にカドハチを迎えに行かせた。

チョコ丸に手紙を携えておいたため、カドハチがチョコ丸に乗って温泉拠点までやって来た。

往復１日もかかっていない。

その速度に俺はある補給方法を思いついた。

侯爵軍の残りがやって来た時、道を封鎖されると補給がままならないと思って考えていたのだ。

　アイテムボックスのスキルを持つ者が街道まで出て、カドハチから物資を受け取り帰ってくれば良い。

森の魔物はＧＫの配下がコントロールできるから、その際、何も正直に道を通る必要は無い。

チョコ丸の機動力ならば、森の魔物を振り切っての移動も可能だ。

問題はアイテムボックス持ちが俺と結衣とマドンナの３人だけだってことだ。

俺は温泉拠点を無暗に離れられないし、２人をこんな危険な任務に行かせるわけにもいかない。

「誰か、レベルアップでアイテムボックスのスキルを手に入れたら教えてくれ」

「ご主君、私が持っております」

　青Ｔ改めセバスチャンが名乗り出た。

まさかの彼がアイテムボックス持ちだったのだ。

何という僥倖だろうか。

「よし、これでいざという時の補給の目途が立ったな」

　そして、俺は南門広場にやって来たカドハチと対面した。

カドハチを南門にある応接室に招く。

「このようなかたちで御会いするのは初めてですな」

「そうか、このような姿で会うのは初めてか」

　冒険者としては何度も顔を合わせたが、俺たちが貴族を装ってから会うのは初めてだった。

「まあ、そういうことだ」

　ここはカドハチには俺たちが貴族だと騙されていてもらおう。

カドハチも頷いている。

どう判断したのかはわからないが、俺を貴族として接するつもりのようだ。

「この度参りましたのは、侯爵軍の動向のご報告のためでございます」

　俺は頷くとカドハチに先を促した。

「侯爵軍２千は、第３軍による伯爵領内での犯罪行為の咎で領境で足止めされておりました。

これに対し国は制裁金を科し、その支払いを以って侯爵軍本体が進軍を開始いたしました」

「そこで帰るとはならなかったのか」

　そういえば、まだ第３軍副官のバージルを戻して我々が危険だと知らせてなかったか。

捕虜のまとめ役が居なくなるのは困るが仕方ない。早急に派遣するか。

「オールドリッチ伯爵も進軍の妨害をし続けていたのですが、バーリスモンド侯爵が制裁金を支払ったことで、進軍を認めざるを得なくなってしまったというところです」

「ちょっと失礼」

　そう言うとカドハチが身を乗り出しこちらに近付き小声になった。

「ここだけの話、伯爵様は補給を渋って未だ妨害を続けております。

侯爵軍本隊の最高指揮官、ロイド将軍は、此度の争いをなるべくなら避けたいと思われており、それにわざと乗っかってくれている次第です」

　つまり、侯爵軍本隊がゆっくり移動している間になんらかの方法で戦を止めろということか。

「そこはバーリスモンド侯爵に使者を出そうと思っていたところだ。

第３軍の副官、バージルに我らの力を報告してもらうのだ。

我らは青の勇者と第３軍指揮官を討った。

そして第３軍を壊滅させたのだ。

それを以って停戦としたい」

「待ってください。第３軍指揮官を討ったのですか！？」

　カドハチの表情が一気に曇る。

俺はその様子に首を傾げながら、質問に同意した。

「ああ、討った」

　俺の返答にカドハチが頭を抱えた。

「第３軍の指揮官の名はジャスパー＝バーリスモンド、彼は侯爵の孫です。

これで侯爵軍本隊が引き返すということは無いでしょう」

　どうやらこれで無駄に人を殺めなければならなくなったようだ。

あのおバカ指揮官が侯爵の孫だとは想定外だ。

これで侯爵軍は何が何でも攻撃して来るだろう。

「カドハチ、長引きそうだ。

カドハチには食料の調達を頼みたい。

我が方からアイテムボックス持ちに街道まで取りに行かせる。

カドハチは隣国に荷を運ぶように装って西進してもらいたい。

こちらから接触して荷を受け取る」

「隣国への輸出の馬車を装うのですな」

「そうだ。

そして、捕虜約２００名をどうにかしたい。

このままじゃ補給物資を倍も消費してしまう。

良いアイデアはないか」

「難しいですね。

賠償金を取って侯爵に引き取ってもらう……いや、それは孫が生きていて初めて成立することか」

　カドハチも悩んでしまった。

「申し訳ありません。

持ち帰りとさせていただきます」

「頼りにしているぞ」

「ははっ」

　これで話も終わりとなるところだったのだが、カドハチがふと思い出したというように語りだした。

「そういえば、第３軍の輜重隊が道の入口まで来ていましたぞ」

　それは、捕虜たちの食料が届いた（・・・）ということだった。

それを正当な権利者である捕虜が美味しくいただいて（・・・・・）も構わないだろう。

脅しにはモドキドラゴンが良いかな。

あの図体は迫力があるから、荷物を置いて逃げ出してくれることだろう。