第195話 ハルルン
お知らせ
グロ描写があります。
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グロ耐性の無い方は、この線の間は飛ばしてください。
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内容はハルルンの治療前の状態になります。
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ハルルンの呆けた様子は、自らのミスで拠点や仲間を窮地に追いやってしまい、トラウマを負った時のベルばらコンビよりも悪い感じだった。
おそらく、忘れたい記憶を封印するために自ら心を閉ざしてしまったのだろう。
奴隷となる前、加えて奴隷となってから、いったいどんな運命がハルルンに襲い掛かったのだろうか。
「ハルルン、今治療するからね」
マドンナがハルルンに駆け寄り、ベルばらコンビを治療した時のように精神に効く祈りを捧げようとした。
だが、それはたぶん悪手だ。俺はマドンナを止めることにした。
「マドンナさん、治療は待ってくれ」
「なんでだよ! マドンナがハルルンを治そうとしてるっしょ!」
俺の制止にさちぽよが過剰反応し立ち塞がった。
怒りに我を忘れているようだ。
「さちぽよ、ハルルンが今までどんな目に合ったか、想像できるか?
奴隷にされて言葉に出来ないような辛い日々を送ったから、こうなった可能性がある。
この心を閉ざした状態は、ハルルンが自分を守るために無意識に行ったことだと思う。
それを治してしまって、また辛い現実を突き付けるつもりか?
ハルルンには心を取り戻すゆっくりとした時間が必要だと思うんだ。
だから、今は無理やり治さない方が良いんだよ」
俺の説得を聞き、さちぽよもマドンナも少し思案していたが、納得したように頷くと治療を取りやめてくれた。
「うん、転校生がゆーのが当たりだわ」
「治療しないことで、治療をするんですね?」
どうやら2人とも理解してくれたようだ。
「そのためには、何があったかは知りたい」
俺は周囲を見回して、他の奴隷たちに訊ねた。
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「この子が、どんな障がいを負っていたか知っている者はいるか?」
俺の質問は、奴隷に対する強制命令となる強いものだ。
あまり話したくない内容だろうが、この際、無理やりにでも言わせるつもりだ。
「両腕が肘から先が無かった」
「両脚も膝から下が無かったよ。
動けないから俺が運んだんだ」
所謂四つ足ダルマというやつか。
よく見れば、ハルルンの周囲に金属キャップが4つ落ちている。
あれを切断面に嵌めて、犬のように四つ足で歩かせたのだろう。
歩けなかったというのは、他の傷で衰弱していたのだろうか?
欠損奴隷でも良いと言ったが、カドハチもよくもまあそんな状態の奴隷を売りつけて来たものだ。
見張りに使うと俺が言ったから、目さえ使えれば問題ないと思われたということなのだろうか。
本気で肉盾要員だったのかもしれない。
まあ、そのおかげでハルルンを救い出せたと思えば、偶然だがそれで良かったのか。
「私は、出荷前に水浴びを手伝った。
身体は言葉に出来ないほど酷い状態だった」
うわー、どうやらとんでもない猟奇趣味の奴に買われていたようだな。
マドンナにより身体的な傷は癒えているし、手足も元通りだが、心の傷は相当なものだろう。
それにしても、身体的な傷や欠損は完全に治っている。
マドンナの能力は聖女級で間違いないだろう。
これが知られても、この温泉拠点が攻められる原因となるだろうから、気を付けないとな。
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「彼女が何処に居たか知る者はいるか?」
さすがにこれは無理かと思ったが、一応訊ねてみた。
すると1人の男が話し始めた。
「俺は彼女が処分されたときに、一緒に売られた。
奴隷商まで運べと言われて運んだら、そのまま戻らなくて良いと言われたんだ」
つまり、こいつはハルルンと同じ所の奴隷だったということか。
これは貴重な情報が取れそうだぞ。
「それはどこで、主人は誰だ?」
「俺の元主人は貴族だ。
下働きの奴隷だった俺が接する機会はほとんどなかったから、個人の名前までは教えられていなかったが、貴族はバルゲ男爵家、やったのはその縁者の誰かだ。
若かったので多分当主ではなく息子あたりだろう」
「そいつがハルルンをやったんか?」
さちぽよの目が怖い。
激昂し直ぐにでも復讐してやるといった感じで、今にも飛び出しそうだ。
それイコール俺たちが召喚勇者関係者とバレることだ。
何としてでも止めなければならない。
というか、さちぽよ、その男爵家が何処にあるか知らないよね?
「さちぽよ、待て。今はその時じゃない。
だが、いつか復讐はしてやる。召喚の秘密を調べ、帰還する方法を手に入れなければならない。
その時は俺も手伝うから、今はだめだ」
「わかった。我慢する」
バルゲ男爵家か、いつか落とし前はつけないとな。
そしてその元凶を作ったのは、勇者召喚をし役立たずとハルルンたちを売った王国だ。
王国ともいつか戦う日が……俺たちを召喚してこの世界に放り出した張本人だしな。
召喚の秘密を調べ、帰還する方法を手に入れなければならないしな。
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