第181話 襲撃3

お知らせ

 予約日付を誤って180話を公開してしまいました。

そのため昨日は2話公開となってしまっています。

179話の読み忘れが発生しているようなのでご注意ください。


 裁縫女子たちの作業場を2階と書いてしまっていましたが、3階の誤りでした。

修正しました。

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 視覚共有によると、幸いなことに3階の作業場には賊はまだ到達していなかった。

作業場の出入り口をヌイヌイが糸で覆ったため、屋敷に放火でもされない限り裁縫女子とマドンナの安全は確保された。

尤も、石造り板張りの屋敷は燃えたとしても、可燃物は床板や天井板と家具カーテンぐらいのものだ。

水魔法が使える裁縫女子ならば消火は容易いはずだ。


 オリオリが探していた腐ーちゃんは、3階の自室に居て薄い本を読ん寛いでいたところだったようだ。

腐ーちゃんは下の階からの異常な物音に、既に警戒態勢となり自室に立て籠もっていた。

そこへ窓から室内へと侵入したオリオリが合流し、こちらも出入口を封鎖した。


 腐ーちゃんは、自室の窓から外を眺め、襲撃の状況を把握しようとしていた。

窓から見えるのは南門の様子だろうか。


『バレーちゃんとバスケちゃんが苦戦してるでござる!

ここからだと私の魔法は2人を巻き込んでしまう……』


 オリオリの視界によると、南門には賊の援軍が増えていて、ベルばらコンビは複数の賊を相手していた。

2人は徒手空拳で戦えているが、賊を殺してしまうことに躊躇していて精彩を欠いてしまっている。

腐ーちゃんが援護しようにも、腐食魔法は拡散性があるので、混戦状態では味方も巻き込んでしまう可能性があり使えないようだ。


『どういたそう。部屋を出て戦うべきか。

オリオリが来たということは、作業場の安全は確保したのでござろう。

されば、廊下で戦うよりも部屋で籠城戦をした方が多人数相手ではやりやすかろうな』


 どうやら腐ーちゃんは動かないことに決めたようだ。

彼女も魔法職なので、複数相手に近接戦で立ちまわるのは分が悪い。

賢明な判断だと言えるだろう。


 ベルばらコンビにはGKの配下が助けに向かっている。

間に合えば良いのだが……。


 チクチクの視界には、賊となる騎士姿が映り込んでいた。

チクチクは北側の壁から屋上を回って南側に向かい、2階まで降りて、ちょうど窓から紗希の部屋を覗いたところだった。


『やったぞ! シャインシルクを見つけた!』


 賊は紗希のチェストを漁って、シャインシルクの下着(使用済み)を手に入れたようだ。

女性の箪笥を漁って下着を盗むとはなんと恥知らずな賊か。


『こっちの布も価値がありそうだぞ』


 それはクモクモたちアースタイガーの糸から織った布だった。

シャインシルクには劣るが、それも高級素材だった。

賊は引き出しの中身を放り出しながら、価値ある布を物色していた。

その時、一陣の風が吹きカーテンが揺れた。

チクチクが外から窓を開けたからだ。

視覚共有していた俺は、チクチクが賊にみつかったかと思った。

だが、そうではなかった。


『この布も同じ素材か!』


 カーテンの素材に目が眩んだ賊が、喜び勇んで窓に接近する。


『チクチク、糸で確保!』


 シャッとカーテンを開けた賊とチクチクの目が合う。

その時には既に、賊はチクチクの糸に絡め捕られ簀巻きにされていた。


『チクチクは紗希とさちぽよの無事の確認を優先してくれ。 

賊に隙があれば糸で確保。危なければ逃げろ』


 視界の隅に見えていた結衣の映像に動きがあった。

結衣に向かって来ていた賊は、ラキが容赦なく始末していた。

だが、それが結衣への注意を引くことになり、賊が集まりだしていたのだ。


『おかしら、上の部屋は2カ所だけ侵入出来ないということです』


『そこに大量のシャインシルクがあるに違いない。

なんとしてでも開けさせるんだ。

まずは、あいつを捕まえようか』


 賊たちはラキの爪斬波を警戒してリビングから先へは接近して来ていなかった。

だが、結衣はその場を動けなくなってしまっている。

結衣を捕まえるために大型の盾などが用意されていく。

おそらく裏口にも賊が回っていることだろう。


 いまラキがブレスを放てば、賊どもを一網打尽に出来るチャンスなのだが、それを結衣が止めていた。


『大樹くんが苦労して建てたお屋敷がダメになっちゃう』


 そんなのどうでも良い。

屋敷なんてまた建てれば良いだけだ。

俺にとっては結衣が傷つく方が耐えられない。

ああ、結衣に念話が通じないのがもどかしい。


 そこに状況を一変させる事態が発生した。


『よくやった。こいつらで脅しをかければ一発だ』


 そこには血だらけのベルばらコンビが引きずられて来ていた。

結衣の事だ。人質を取られたら抵抗することが出来ないだろう。


『おい、抵抗したら、こいつらを殺すぞ。

そのトカゲにも攻撃させるな!』


 ラキという最大戦力も、もう使うわけにはいかなくなった。

結衣が、俺の結衣が捕まってしまう。


『わかりました。ラキ、抵抗してはいけません』


 とうとう結衣が賊に降伏してしまった。

このゲスな笑いを浮かべる賊に捕まったら何をされるかわからない。

殺されるかもしれない。いや、生きていてもひどい目にあわされかねない。


 早く助けに行かないと。

チョコ丸よりも早い移動手段は無いものか……。

そうだ、カブトンのスピードだ。


 俺は危険性を考慮して使っていなかったあのサブスキルを使用することを決意した。

【眷属纏】、眷属と融合しその能力を得るスキル。

これに賭けるしかなかった。


「元に戻れなくなっても良い。

結衣が、結衣さえ無事ならば!

眷属纏! カブトン!」


 俺は眷属であるカブトンを召喚し纏った。

俺の身体はカブトンの甲殻に覆われ、その姿はまるでインセクターのような昆虫人間だった。

いや、贔屓目で見れば仮面〇イダ―カ〇トか!


 俺はカブトンのパワーとスピード、そして甲殻の防御力を得て、チョコ丸よりも速い速度で飛ぶと屋敷へと突入した。

カブトンの刺突のスキルでダイニングの壁を貫いたのだ。

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