第180話 襲撃2
あの冒険者兼盗賊に襲われた経験のある
『キャー、いやー!』
ラキと視覚共有している俺の目の前に騎士姿の賊の手が迫って来ていた。
その様子は結衣の胸元視点であり、まさに結衣が見ている光景と同じものを現実かのように目にしていることになる。
『ラキ、敵を倒せ! 殺しても良い!』
このままでは結衣が危ない。
俺はラキに賊を倒すように命令した。
その際に賊の命を奪っても良いと付け加えることを忘れなかった。
中途半端に倒すことで、反撃される危険があるからだ。
賊の姿は騎士鎧だ。国か貴族が動いている。
俺たちが平穏を得るためには、全力で排除しなければならない敵だ。
『クワァ!』
ラキが爪斬波を放つ。
『ぐわ!』
それをまともにくらった賊が鎧ごと切り裂かれ、その勢いのまま後ろに倒れ込み、ピクリとも動かなくなった。
『よし、いいぞ』
『クワァ!』
『ラキちゃん、
『クワクワ』
『そうなのね?』
そう言うと結衣はラキの顔を覗き込んだ。
逆さまに映る結衣の顔の可愛いドアップに少し照れる。
『大樹くん、賊の襲撃だと思う。
シャインシルクを渡せって言われた。
賊は騎士鎧姿、どこかの騎士だと思う。
玄関ホールから侵入、リビングから
たぶん2階にも向かってる。
人数はわからないけど、足音は10人以上いる感じ。
瞳美ちゃんは裏口から逃がしたよ。助けてあげて』
結衣は、自分たちの状況を的確に教えてくれた。
この時間だとカドハチの荷馬車がやって来た頃だろう。
そこを狙われたか?
外の様子はわからないが、初撃を受けただろうベルばらコンビは、ただでは済まないかもしれない。
『おい、ショーンがやられてるぞ!』
『なんだと? あの
見せしめに殺してしまえ!』
ラキの念話から不穏な会話が聞こえて来た。
結衣の身に危険が迫っている。
いや、温泉拠点に居る全員の危機だ。
『ラキは、そのまま全力で結衣を守れ!』
こうしてはいられない、直ぐに屋敷に戻らないと。
「チョコ丸! 全力で屋敷に戻れ!」
「クワ?」
俺は乗っていたチョコ丸を急かすと屋敷へと急いだ。
全速のチョコ丸ならば、5分で到着することが出来るだろう。
だが、その5分が生死を分けかねない。
シャインシルクを狙って賊が屋敷に侵入したとなると、3階の作業場が危ないな。
そうだ、3階の作業場にはあいつらがいる!
俺はこんな状況でも対応できる優秀な眷属たちに念話を送った。
『ヌイヌイ、賊が侵入した。
糸で侵入路を塞いで裁縫女子とマドンナを守れ。
オリオリ、腐ーちゃんを探して合流、援護しろ。
チクチク、さちぽよと
ヌイヌイ、オリオリ、チクチクとも視覚共有して視界の隅に小さくAR表示させた。
これで状況を見ることが出来るだろう。
ヌイヌイは服飾関係の作業場になっている中倉庫に裁縫女子とマドンナと共にいた。
入口を糸で塞げば、俺が戻るまで時間稼ぎが出来るだろう。
オリオリとチクチクは窓から外に出て、別の部屋の窓から中に戻り、腐ーちゃんやさちぽよたちの武器を探し始めた。
さちぽよと紗希は生き物係で厩舎だろう。
いや、カドハチ便を当て込んで、休憩に入っているかもしれない。
いつもならベルばらコンビがカドハチ便の到着を知らせて買い物が始まるのだが、生き物係は汚れる仕事なので、汚れを落としてから買い物に出て来る。
となると、温泉に入っている可能性もあるぞ!
そこを襲われたら大変だ。チクチク、頼むぞ。
あとは、南門入口からGKに出張ってもらうか。
『GK、温泉拠点が襲われた。
配下を使って排除してくれ』
南門にはベルばらコンビがいるはずだ。
彼女たちは格闘神の加護と拳神の加護を持っている。
レベルも一般的な騎士よりも高い。
むざむざとやらはしないだろうが、唯一心配なのは、人を殺められるかというところだ。
紗希は冒険者兼盗賊を倒した時に1人手にかけているが、2人にその覚悟があるかどうかは微妙だ。
それで遅れをとっていなければ良いのだが……。
生きてさえいれば、GKの配下が助けに入れるかもしれない。
とにかく俺は屋敷へと急ぐしかなかった。
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