第166話 屋敷建築1
草原の草を大量に採取してアイテムボックスに入れる。
時間経過庫を利用して乾燥をかけると良い状態の草藁となった。
余計な虫や細菌、黴なども排除されているため、草といえども清潔感がある。
これをクモクモの糸で作った布袋に入れてマットレスとするのだ。
「じゃあ、人数分頼むわよ?
あんたたちのはダブルで手間がかかるんだからね」
裁縫女子が渡して来たのはシングルサイズの布袋だった。
しかも、先に女子たち人数分のマットレスを作れという。
「手が空いたらベッドのボルトを人数分作ってくれ。
ベッド製造の木工は私
いつのまにか大工道具を手にした
こういう工作などの時はしっかり服を着ているのだな。
そういや、一番ベッドを欲しがっていたのがバスケ部女子だった。
彼女を街への買い物に連れて行けなかった手前、俺たちだけベッドを使おうなど許されるはずもない。
街へと行けていれば、ベッドなど家具屋で調達して、アイテムボックスで苦も無く運ぶことが可能だったのだ。
ここは負い目があるので素直に従っておこう。
ボルトとボルト受け、それにレンチを渡しておけば、勝手にベッドを製造するだろう。
俺は錬金術でボルトを作り、木工でベッドの部材を製作し、組み立ては居残り組各自に任せた。
不在者分の製造組み立てはバスケ部女子に任せておく。
そしてマットレス用の草調達で草原に赴くなど忙しくした。
俺しかアイテムボックスの時間経過庫を使えないから仕方がなかった。
結局、草の調達が思うように行かず、今夜は俺たちのベッドはマットレスが無くて使用不能だった。
草原でインセクターとの遭遇戦になってしまったからだ。
しかも、裁縫女子が意図的にダブルサイズの布袋を後回しにしたのも原因の一つだ。
裁縫女子はじめ、ベッドが完成しなかったメンバーは床にマットレスを敷いて眠り、バスケ部女子はベッドの上にマットレスを乗せて唯一完成品のベッドで寝た。
解せぬ。その草があれば、俺たちのベッドは完成していたはずなのだ。
今夜もまた、俺たちはハンモックで眠ることになったのだった。
当然、俺の初夜は延期となった。
◇
翌日、朝起きると結衣が膨れていたが、その怒りは裁縫女子に向かったようだ。
朝食でおかずを減らされて、初めて裁縫女子はそのミスの大きさに気が付き涙目になっていた。
今日は真っ先に草の調達を終えると、街に錬金術大全を買いに行っている3人の分のベッドも組み立てる。
バスケ部女子め、自分のベッドが完成したら、組み立て作業を中断しやがった。
まあ、部材だけは用意してあったので、ベッドを1日1個でも組み立てれば、3人が戻ってくる前に間に合いはするのだが……。
「ベッドを置く位置を決めてから組み立てた方が良いと思って」
俺が全て組み立て終わると、バスケ部女子はそう言い訳をした。
いや、帰って来た時にベッドが完成していて驚かせたいじゃん。
それに……。
「家具の移動はアイテムボックスに入れて出せば簡単に出来るぞ」
「そうだった!」
これで完成してないのは俺たち夫婦のベッドだけになった。
いや待て、街へ行っている3人の分こそ後回しで良かっただろ。
3人分の草藁があれば、ダブルベッドのマットレス分に余裕でなるじゃないか!
俺の様子を見に来た結衣もそれに気付いた。
裁縫女子の昼食のおかずが減り、俺たちのダブルのマットレスには刺繍が入ることになった。
草藁も良いように乾燥したので、ダブルのマットレスに詰める。
ついに俺たち夫婦のベッドが完成した。
きっと裁縫女子の夕食は豪華になるだろう。
午後はいよいよH鋼を錬成する。
強度計算は魔法に委ねた。
建物の建材としての強度を持つようにとイメージを込めた。
そんなアバウトな感覚が通じるので魔法は便利だ。
【建築】スキルも得たため、なんとなくでそこらへんがクリアできるのはありがたい。
三階建て四隅を完全に貫く長さを4本作った。
鉄が足りなくなっても、途中から繋げて錬成できるのがとても便利だ。
魔法でないとこうはいかない。
あとは横と奥行きを繋げるものを1階下から3階上部分までの4本×2ずつ製造する。
これらの鉄骨を溶接しなければならないが、例の錬成による一体化がここでも使える。
日本なら、そのつなぎ目をフレキシブルにして耐震ダンパーでも付けるのだろうが、ここではそんなことはしない。
剛構造だが、高層建築ではないので大丈夫だろう。
これで屋敷の外枠の鉄骨が完成したが、作業はそこで終了した。
俺のMP切れだ。
まだ、各部屋を仕切る壁を乗せる梁や階段部分の構造材を作っていない。
それに床や天井に板を乗せるための軽量鉄骨の製造もまだだ。
屋敷建築の先は長い。
夕食に
マットレスに刺繍をしたことで裁縫女子のステーキが大盛りだった。
俺も大盛りだった。
これって今晩ガンバレってことだよね?
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