第165話 ベッドを作る原動力は

 カブトンのおかげで鉄が手に入った。

しかもロックトカゲの体内で生物濃縮された純度の高い状態だった。

ロックトカゲが岩を食べ消化し、その中から金属を抽出し甲殻として背負っていたのだ。

亀の甲羅のようでもあるが、亀との違いは背中しか覆っていないことだ。

単純計算だが、1匹の甲殻の大きさを長さ4m×幅0.5m×厚さ0.1mとすると、その体積は0.2㎥になる。

鉄の比重は7.85なので1匹で1.57トン弱の鉄を含む金属塊が手に入ったということだ。

まあ今の状態では不純物も含んでいるので、1匹で鉄1トンと思っておこう。

そう思うと3階建ての柱となる鉄骨は何トン――ロックトカゲ何匹分――あるんだろうかと恐ろしくなる。


「ちょっと20匹では足りない気がして来たぞ」


 まあまだこのあたりには生息しているようなので、足りなければまたカブトンに狩ってもらおう。

自分で狩らないとスキルレベルが上がらないのだが、安全には代えがたい。

そういえば、魔物って繁殖しているのか湧いているのかで狩れる量も変わってくるな。


 チョコ丸に乗って温泉拠点に帰る。

その道中にステータスをチェックしたのだが、カブトンから経験値が大量に入ったため、レベルが6つも上がっていた。


名前:転校生 大樹(ひろき)

人種:ヒューマン

職業:なし

レベル:34↑

HP:375/375↑

MP:546/546(420)↑

スキル:身体激成

    スキル限界突破Lv.1+Lv.1new→Lv.2(スキル上限30)

    魔力増強Lv.2(MP1.3倍)

    魔力回復Lv.2(MP回復力3倍

    アイテムボックスLv.3


    剣技Lv.5

    金剛化Lv.2

    俊足Lv.2

    毒耐性Lv.1


    探知Lv.1

    人物鑑定Lv.1


    手当Lv.1

    生活魔法Lv.3

    火魔法Lv.4

    水魔法Lv.3↑

    風魔法Lv.2

    土魔法Lv.1new

    氷魔法Lv.1new

    闇魔法Lv.1new


    技術工作Lv.2

    錬金術Lv.2

    付与魔法Lv.1

    木工Lv.1new

    建築Lv.1new

 

ギフトスキル:た*まご?召喚 ▲ 鶏卵Lv.2

                トカゲ卵Lv.3

                カエル卵

                魚卵

                虫卵Lv.4

                魔物卵Lv.2

                食卵Lv.1

                眷属召喚Lv.2

                眷属卵Lv.1

                眷属纏Lv.1


眷属 土トカゲ1 ▼

   火トカゲ1 ▼

   スモールレッサードラゴン(ラキ) ▼

   キャタピー(キャピコ) ▼

   アースタイガー(クモクモ) ▼

   ナイトバード(ホーホー) ▼

   鋼ビートル(カブトン) ▲ レベル4↑

                 スキル 剛力

                     刺突

                     硬化

                     高速飛行

                     毒耐性new


   ジャイアントコックローチ(GK) ▼

   ジャイアントハニービー(ハッチ) ▼

   土ゴーレム(ゴラム) ▼

   竜型騎獣・地走竜(ひっぽくん) ▼

   鳥型騎獣・走鳥(チョコ丸) ▲ レベル2↑

                   スキル 俊足

                       持久力

                       刺突

                       跳躍new


   土ゴーレム(ゴレーヌ) ▼

   アースタイガー(ヌイヌイ) ▼

   アースタイガー(オリオリ) ▼

   アースタイガー(チクチク) ▼

   アースタイガー(ワナワナ) ▼

   土ゴーレム(ゴレッタ) ▼

   土ゴーレム(ゴロロ) ▼

   土ゴーレム(ゴリキ) ▼



 なんと【スキル限界突破】を再度手に入れたことで、スキル統合によりレベル2になった。

これでスキル総数が30に増え、今回のレベルアップ分6ー1でスキル総数が25となった。

スキルが多くなったことで見にくくなったため、スキル内容により分けてみた。

自分でも見やすくなったと自負している。


 新たに加わったスキルは【土魔法】、これは今回のロックトカゲ戦に使えたと、削除したことを後悔したから出たのだろうか?

【氷魔法】は【水魔法】スキルで使い続けたせいで固定化したようだ。

【氷魔法】を育てた方が上位の強力な魔法を覚えやすいそうなので、ありがたいことだ。

そして【闇魔法】に【木工】に【建築】……。

まるで誰かに心の内を見透かされている気分になる。

欲しかったスキルをピンポイントに得た気がする。

何らかの作為を疑いたくなる。神様の恩恵ってやつか?


 そして夜を迎える前に温泉拠点に到着した。

結衣の作った夕食を食べ、温泉に入り、ハンモックで寝る。

当然結衣と同衾なのだが、ハンモックの中で空中戦をするわけにもいかず、悶々としながらも疲れ果てていたため眠りについた。


 ◇


 朝起きると結衣がムクれていた。

毎夜毎夜初夜を回避してしまっているため、不満が高まっているようだ。

結婚した。日本に戻る前に妊娠しないように避妊方法も知った。

結衣も求めているのに、なんの遠慮がいるのだろう。

それなのに手を出さない俺に結衣がぷんすか怒っているのだ。

ハンモックじゃ出来ないなんて言い訳にしか過ぎない。

これは真剣に初夜を迎えるべく行動するべきなのかもしれない。


 あれ? 木工スキルを手に入れたし、鉄も手に入ったから、ベッド作れるんじゃない?

とりあえず鉄からH鋼を作る前にボルトでも作ってみるか。


 今日の作業はベッド制作だ。

ついに大人の階段を上ってしまうのだ。



 大工道具がバスケ部女子の所に行っているが、俺の【剣技】スキルと黒鋼の剣にかかれば、木材を板に切り出すなど、剣を振るだけの簡単なお仕事です。

アイテムボックスには乾燥させた木材が潤沢にある。

これで部品となる板を制作していく。

ヘッドボード、フットボード、横枠右、横枠左、中枠、底板上、底板下と木材を切り出す。

切断面が綺麗なのでかんながけも要らない。

横枠右と横枠左には底板を受ける溝を掘っておく。


 これらの部材を接続するために、鉄を加工してボルトとボルト受けを製造する。

ヘッドボード、フットボード、中枠にボルトを嵌めるボルト受けを取り付け、横枠右、横枠左に穴をあけてボルトで接続するつもりだ。

某大型家具店のキットのように、細かな木材加工は出来ないが、ベッドの形にするだけならば問題ないだろう。

ベッドにかかる体重は床に直で接するボードと横枠の下部に分散されるので、横枠を中空で支える仕組みは必要としない。

それだけ簡単に製造できるだろう。


 庭でロックトカゲから甲殻を引きはがし鉄を入手する。

これは結衣に解体してもらった。

この大きさ――4m――の魔物を解体するにはキッチンでするわけにはいかなかったのだ。

甲殻は何枚かのプレートで出来ているので、その1枚を剥がしてもらう。

さすがに1トンオーバーの1枚板だったら、それを剥がし取るのにクレーンが必要になる。


「排水を流す配管や作業台を備えた解体部屋が必要だよ~」


 結衣が眉を顰めて言う。

たしかに庭でやると、ロックトカゲの口から流れ出た紫の毒液とかで汚しまくりだ。

そのまま毒を垂れ流しにするのも良くない。


「わかった。別棟で建てるよ。

下水処理もしないとならないし」


 今回は甲殻を剥がすだけなので、解体途中のロックトカゲは結衣のアイテムボックスに入れる。

後でロックトカゲの肉が食卓に並ぶかもしれない。

美味いらしいので期待してしまう。


 その鉄を使用し、土魔法と錬金術の併用で不純物を取り除く。

これは石英の抽出でも使った土魔法を、錬金術で金属塊に適用させたものだ。

石英の場合は小さな粒を集めるだけだったが、これは金属塊を変形させて、その中から任意の金属を取り出すという作業になる。


「抽出、鉄以外の何か」


 この時、俺が抽出したのは鉄以外の不純物の方だった。

ロックトカゲの甲殻は純度が高かったため、その方が早かったからだ。


「ケイ素化合物に石炭、微量の亜鉛、錫、ニッケル、銅、銀……金まで入っているのか!」


 ロックトカゲは生物鉱山だった。

微量とはいえ希少金属まで入っていたのだ。

しかし塵も積もれば山となる。

案外、鉱山から算出する希少金属の鉱石よりも含有量は高いかもしれないぞ。


 そして残った鉄でボルトとボルト受けを作る。

ボルト受けとは、俺が勝手にそう言っているだけで、実際は違う名前かもしれない。

円柱状の金属部材の真ん中にボルトを嵌めるねじ切りがしてある部材だ。

材料は純度の高い鉄なので、強度的に炭素などを含有させなければならない。

そこは錬金術、魔法ならばなんとかなる。


「硬く折れにくい鉄で、こんなイメージのもの」


 俺が魔力を込めて鉄に錬金術を使うと、イメージ通りのボルトとボルト受けが出来た。

ヘッドボード、中枠、フットボードに穴をあけ、そこにボルト受けを撃ち込む。

そうすると、そのねじ切り穴にボルトを通して固定することが出来るのだ。

横枠右、横枠左にボルトを通す穴とボルトの頭が入る溝を掘る。

それを縦2で3ヵ所ずつ作る。


「これで組み立てれば……この世界、六角レンチがないじゃないか!」


 慌てて錬金術で六角レンチを作る。

L字形で先の部分がボルトの頭に嵌ってボルトを回せるようになっているやつだ。

その先が入るように溝を作ったというのに、そのレンチが無いとか盲点過ぎた。

もしかして、この世界には存在しないオーバーテクノロジーなのかもしれない。

流出には気を付けよう。


 俺たちの個室に運び、ベッドを組み立てる。

ベッドは真上から見ると日の字の形になる。

その枠の内側に底板を2枚乗せて完成だ!


「あ、マットレスがない」


 これはクモクモの糸の布に藁状の草でも詰めるしかないか。

巨大カマキリのいる草原の草がストロー状の茎を持っていて良さそうだ。


「裁縫女子、マットレス用の布袋を作ってくれ、サイズはこんな感じで」


「何よ、ついにベッドを作り始めたわけ?

マットレスのアイデアがあるなら先に言いなさいよ。

マットレスだけでも使えたでしょ!」


 ああ、そうか。

ベッドの枠が無くてもマットレスだけで床に寝れたじゃないか。

ベッド、ベッドと気が逸って、本質が見えてなかった。

そんなにやりたかったのか? 俺。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る