第147話 コスプレ作戦

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「つまり、嘗められない格好をすれば良いのだよ」


 腐ーちゃんが我が意を得たりと発言した。


「今の皆の格好は、どう見ても庶民。

隠れ里の怪しい集団にしか見られない。

でも、これが貴族に見えたら、相手も対応に困るだろ?」


「つまり貴族を騙るってこと?」


 それはバレると逆に拙いのでは?

おそらく貴族を騙ることは貴族制の国では重罪だろう。


「いや、貴族だと敢えて誤解してもらうんだよ。

しかも他国の貴族だと思わせるのが良い」


 つまりこの国からは手を出せない存在を騙るのか。


「いったい、どうやって?」


「コスプレ!」


 ああ、腐ーちゃんの専門分野か!


「いけるかも」


 腐ーちゃんの案に瞳美ちゃんが乗っかった。


「この森は、はっきりと何処の国の領有だとは決まっていないのよ。

敢えて何処の領有かというと魔物という感じかしら。

そこを実効支配している国があるなら、切り取り自由だと思われるわ」


「でも、ここは二国間の国境に近い。

国境があるからには、国境線が引かれているのでは?」


「その国境線は、この森の中では曖昧なのよ。

それに、わざわざ危ない森の奥まで入り込んで領有を主張することもないはずよ」


 この世界、人口に比して土地は余りまくっているらしい。

そのため利用価値の無い土地までわざわざ領有して、防衛の義務が生じるのは、国力的にもナンセンスということらしい。

あの国境も二国間の生活圏が重なった部分に国境が出来ただけであり、その支配が及ばない所まで国境線を引いているわけではないのだ。

つまり今回の大規模討伐も、街道を守ることが主で、森の奥を領有するために行うわけではないということだろう。


「だけど、それが庶民の隠れ里だと思われたら、これ幸いと併合されるということよ」


「そのために他国の貴族を装って他国の領有を主張するのか」


「貴族の保養地――別荘だと思わせるのが良いわね」


 この主張には女子たちも納得せざるを得なかった。

併合されたら、どのような扱いを受けるかわからない。

ヘタすると、税を払っていないなどの難癖をつけられて奴隷落ちも有り得るのだ。


「幸いなことに、ヌイヌイ、チクチク、オリオリがいる。

服飾の生産力は向上している。

デザインは腐ーちゃんと裁縫女子に任せれば良いな」


 俺も納得の対策案だった。

実行も可能だ。


「運動部3人とさちぽよには護衛役をやってもらおうよ」


「男装ね!」


「「「きゃーーーーーーーーーー♡」」」


「待って、高級な服にするには布の色数が少ないわ。

それに高級感の出る色なんてまだないわよ」


 裁縫女子が染色技術がまだ実用的ではないと主張する。


「そこは敢えて白一色で行けば、逆に異国っぽくなるはずよ」


「キャピコの糸なら、そのままで高級感が半端ないしね」


「それで行こう!」


 どうやら懸案事項も回避出来たようだ。

女子たちもコスプレ作戦に乗り気になった。


「貴族家当主は転校生くんで良いわね」


「そうすると、男装含む白い衣装の人物が5人になるわよ?

転校生くんが他の男装4人に埋もれるわ」


 裁縫女子、ハッキリ言いすぎ。

いや、自覚はあるけどさ。


「そうだ、転校生くんのブレザーをリフォームしよう。

あの色はこの世界では珍しくて目立つし使えるわ。

1人だけの特別な色になれば当主っぽさが出るわよ」


 どうやら俺の一張羅はリフォームされるようです。

勝手に決まって行くけど、もはや口出しできる状況ではなかった。

まあ、あのままだとブレザーは召喚勇者絡みだとバレる原因となりかねず、使いようが無かったのも事実だ。

ここで有効利用されればブレザーも本望だろう。


「奥方役は名実共に三つ編みちゃんで良いとして、愛人の1人ぐらい居ないと……。

マドンナちゃんしかいないわね」


「むしろ正妻っぽくなるわね……」


 こら、裁縫女子、それ言わないでよ。

結衣が多少地味でマドンナがクラス一番の美人なのはわかるけどさ。

俺の一番は結衣なんだからね。


「まあ、紹介しなければどっちでも良いわよ。

相手が誤解するだけだからね」


 正妻問題は玉虫色の解決となった。


「腐ーちゃんとメガネちゃんと私はメイド役ね。

セーラー服をリフォームして可愛いメイド服にするわよ!」


 さっそく裁縫女子と腐ーちゃんがデザインに入る。


「この世界共通の貴族の所作は民族資料で頭にあるわ。

3人にはマスターしてもらうからね」


 瞳美ちゃんも本気だ。


「待って、貴族の別荘にしては家がチープじゃん!」


 さちぽよ、チープ言うな。


「そこはゴラムに言ってハリボテで装飾するよ。

どうせ中には入れないしね」


 増築作業が止まってしまうのは致し方ない。

こうして温泉拠点がみつかった時のためのコスプレ作戦が始動したのだった。

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