第146話 対策会議

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すみません。

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 大規模討伐があるとしても、今日明日直ぐに大部隊がやって来るわけではないだろう。

まず調査隊の報告が上層部まで上がって、大規模討伐が必要か否かを検討することになるだろう。

さらに街への魔物氾濫の影響が無くなり、人手に余裕が出来ないことには人員確保も難しいはずだ。

いや、むしろその間に街道で魔物被害が出なければ、元々魔物が多い森に魔物が呑まれたと判断するかもしれない。

危険な森に入らなければ良いだけならば、大規模討伐などしないで済めばそれに越したことは無いだろう。


 では、俺たちはどうすれば良いのか?

①温泉拠点に彼らを近付けさせない方法を探す。

②彼らに捜索されても温泉拠点を見つけさせない手を考える。

③温泉拠点がみつかり、彼らと接触したとしても召喚勇者とバレず、かといって保護などの余計なお節介をされないようにする。

この3つが考え得る対応策だろう。

俺だけでは考えがまとまらないため、皆で考えることにした。


 俺は女子たちをリビングに集めて、彼女たちの意見を求めた。

その際に、こちらの戦力全てを把握していなければ正しい判断が出来ないので、GKの存在など女子に秘密にしていたことも全て伝えた。

大規模討伐対策会議の始まりである。


「クモクモの罠やGKを使って阻止すれば?」


 バスケ部女子が①に対する案を示す。


「駄目。クモクモやGKが倒すべき魔物と認定されてターゲットにされちゃうよ」


 結衣が強く却下する。

たしかにクモクモやGKは、見たまんま魔物そのものだ。

俺の眷属だから安全だとは相手も思ってくれないことだろう。

実際に阻止という行動をとれば、相手から見れば敵対してくるただの魔物であり、討伐対象と見做されてしまうだろう。

それが俺の眷属でしたと説明したならば、俺自身が主犯であり討伐対象となってしまうことだろう。


「却下だな」


 バスケ部女子もクモクモには愛着があるようで引き下がった。

GKは有り得ないと言い続けているが……。


「魔物卵を召喚して孵して眷属にしないで放したら?」


 これも①の案か。

裁縫女子のドヤ顔が気に食わないが、考える余地はありそうだ。


「眷属にしたかしないかで死んでも良いような扱いをするの?」


 マドンナさん、眷属ではない魔物にも慈悲の心を示すのですか。

たしかに、俺の眷属を外れた水トカゲ1なんかも、眷属でなくなったからといって無下に扱おうとは思わないな。

まあ、卵は食べ物、鶏は家禽と見ているのから別扱いで、普通に食えるんだけどね。

人は都合よく物事を考えられるのだ。

だからこそ、このような案も出て来るってことだ。


「眷属でなければただの魔物でしょ?」


「もし、私たちを襲ってきたらどうするのよ!?」


 オークにぶっかけられてから、魔物恐怖症の兆候のあるバレー部女子が拒否反応を示す。

たしかに、俺の眷属でないならば、見境なく普通に襲ってくるだろうな。

特にオークならば、またバレー部女子を襲いかねない。


「うん、そうだったわね」


 あの発射を受けたのが自分だったらと思うと裁縫女子も身体を震わせることになった。


「温泉拠点の周囲に堀でも作れば?」


 紗希はお城をイメージしたらしく、物理的に越えられなくしようと考えたようだ。

これも①に対する案だな。


「それって、温泉に影響は出ないの?」


 マドンナが強めに問い詰める。

温泉命のマドンナにとって、そこは最大の関心事だろう。


「温泉の源泉は地下から自然湧出しているようなんだ。

あの湧き出し口の奥に源泉があって、溜めて魔道具で温度調節をかけてから湯舟に流している。

堀はその源泉に影響を与えかねないね」


 堀には温泉の排水などが溜まることになるだろう。

流れの無い死に水は痛みやすい。

堀が深ければ深いほど、源泉に汚水が混じり込むかもしれない。

そうなると安心して入れる温泉ではなくなる可能性があった。


「却下!」


 マドンナが堀案を強く却下した。

まあ、それは女子たち全員が納得できる却下理由だった。

どうやら①の積極ディフェンスは無理なようだ。


「見つけなくさせるというのは、魔法的にということでしょうか?」


 ②に関して瞳美ちゃんが質問をして来た。

②は自分で上げた対応案件だけれども、確かに魔法をあてにして考えていた。


「そうなるかな」


「結界系の欺瞞魔法か、光学系の視覚妨害魔法でしょうか?」


 そんなものがあるんだ。

さすが瞳美ちゃん、勉強しているな。


「そんな魔法があるなら、それだろうね」


「私たちには無理です」


 瞳美ちゃんが言うからには、そうなんだろうけど、どうしてなんだろうか?


「どうして?」


 俺はそう訊ねるしかなかった。


「私たちは、そんな魔法を使えるレベルになってません。

常設展開させるには、MPが足りなすぎです。

それと錬金術による魔道具化で実現可能ですが、錬金術大全買ってないんですよね……」


 そこか!

たしかに錬金術大全があれば便利だっただろうな。


「たしかに無理だね。今は街にも行けないから錬金術大全を手にいれられない。

手に入ったとしても、その魔道具を作る日数が足りないだろう」


 つまり②も無理だったということだ。


「ならば、③だね」


「実力で排除って方向かな?」


「魔物の時と同じように立て籠もって対処すれば良いな」


 こら運動部二人組、物騒な対策を口にするんじゃない。


「相手が地方貴族レベルなら良いけど、国が出て来たらヤバイんだからね?」


 しかし、それ以外に方法がなさそうなのが困ったところだ。

不可侵を手に入れるには、実力を示すしかなさそうなのだ。

それも召喚勇者だとは気付かれないように。

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