第132話 内装工事
全ての部屋の窓――といっても今ある4部屋と新たにリビングに開けた窓の5カ所で増築分は後だが――にガラス窓が嵌った。
風でガラス窓が勝手に開かないようにロック機構もつけた。
なんのことはない。回転しないように壁の上部からストッパーを出せるようにしただけだ。
それが上部左右の2カ所から出るようにした。
風向きによっては逆方向に回転しようとするだろうからだ。
防風防雨も窓の役割だ。肝心な時に勝手に開いてしまっても困るのだ。
「このガラス窓の軸で回転する機構を応用すれば、出入り口の扉も作れると思う」
結衣がまたアイデアを出してくれた。
なんか必死に個室のプライバシーを守ろうとしているように思えるのは、気のせいだろうか?
「なるほど。軸を端に持って来て回転させれば良いのか」
そういえば、そんな感じのドアもあった気がする。
ドアノブはドアに出っ張りを付ける感じにして、ロック機構はスライド式でいけるか。
木も乾燥させたし、一枚板の端に軸を設ければ……。
「あ、一枚板って結構重いぞ」
扉って案外気付かないけど、枠に薄い板を張って重さを調整しているものが多いんだよな。
そうでないと重くて開閉もままならなくなるからね。
重厚な一枚板なんて、それこそ何人もで押さないと開かないような代物となる。
ましてやここでは単純な開閉機構を採用しようとしているんだ。
軸への負担が半端ない。
薄い一枚板か……。ミリ単位の加工は無理だぞ。
窓枠だってそれなりの太さの角材を使っているんだ。
「とりあえず、身体強化でなんとかするか」
なんとかするの意味は、重い扉を身体強化でなんとか開け閉めするということだ。
薄い板を加工する技術的な問題は先送りすることにした。
軸の強度は太くすれば問題ない。
将来誰かが木工のスキルを手に入れれば、薄い板を作れるようになるだろう。
それまではこれで行こう。
「扉を付けるにしても、床や壁が硬化した土というのも冷たい感じがしない?」
「つまり?」
「板張りにしましょう」
壁というのは、結衣さん、やはり防音ですか?
「ほら、床とか作ってからじゃないと、段差に扉が引っかかったり扉の下に隙間が出来るでしょ?」
「なるほど、内開きの場合、床板分だけ床を下げるか扉の下部に隙間を作らないと扉が当たるのか。
だが、ここは外開きでお願いします」
防音は必要だけど、まだそこまで作業が追い付いていない。
だいたい、日本はほとんど外開きだぞ。
「後で廊下も板張りにするわよ?」
扉の内開き外開きの問題じゃなかった。
家は外側だけじゃ完成じゃないようです。それ以上に内装工事が重要だとは……。
家が建ったと言っても、住むにはいろいろやらなければならないことが多すぎた。
そういや、キッチン周りの下水ってどうなってるんだろう?
水道は水魔法スキルや水トカゲ2がやってくれるから問題ないんだけどね。
え? キッチンはまだ無い?
盲点だった。そういやトイレも無いぞ。
全て外でやることに慣れすぎてたわ。
「そんなところに大事な木材を使うなよ。ベッド作ろうぜ、ベッド!」
「そうだぞ。なんのために木を伐採して来たと思ってるんだ」
寝床はハンモックで解決したと思っていたのに、また運動部2人組がベッドを要求して来た。
木を伐採して来たからベッドを手に入れる権利があると主張している。
「確かにベッドは必要ね」
結衣がそれに同調する。
真剣を装ってるけど表情がダレてるぞ。
結衣さん、何を想像しているのでしょうか?
まさか、ハンモックじゃアレが出来ないからベッドをとか思ってないよね?
「今日は扉までね。ほら罠まで日課の巨大カマキリ狩りにも行かないと」
ベッドのマットって草を刈って来て、布袋に詰めれば良いのだろうか?
それならば、巨大カマキリが出る草原で採取してくれば都合が良いな。
いや、そうじゃなくて。ベッドは直ぐに作らないとならないの?
何やら追い詰められている気がするのは気のせいだろうか?
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