第129話 引っ越し

お知らせ

 125話において、女子のステータスに誤りがありました。

三つ編み女子とマドンナのアイテムボックス所持が反映されていませんでした。

修正し、お詫び申し上げます。


 あと、124、125話は同日公開のため、124話を読み忘れている方がいるようです。

アクセス数が明らかに谷間となっております。

急な2話公開で混乱を招いたようで申し訳ありません。

124話が内容的に短かった事と、125話がほぼステータスだったため、急遽そうしてしまいました。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 土ゴーレムは拠点周辺の土を吸収すると大きくなった。

卵から孵った姿は身長20cmぐらいだったものが、直ぐに成長して180cmぐらいになった。

この成長率が生物ではない魔物の利点だろうか。

ゴラムよりもちょっと小ぶりだ。

ゴーレムには性別はないけど、女性的かもしれない。


「おまえの名前はゴレーヌだ」


 その印象で、つい女性名をつけてしまった。

ゴレーヌもゴラムと同様に土魔法と建築スキルを持っていた。

これで温泉に建設中の家の完成が早まるに違いない。


「土ゴーレムを増やせたので、今日引っ越ししてしまおうと思う。

捜索隊に発見される可能性もあるし、魔物の氾濫で拡散した魔物が、この拠点にも来る可能性が高いからだ。

万全を期して塀のある温泉に向かう。引っ越し準備をしておいてくれ」


「「「「わかった」」」」


「まあ、引っ越し荷物なんて、私たちは・・・・そんなに無いんだけどね」


 特に居残り組は私物が少ないので、準備に時間がかからない。

そこに街へと行けた者との差が出てしまう。

なんとかしないと、不平不満の元となりそうだ。


「たまご召喚、眷属卵、アースタイガー!」


 俺はクモクモと同種の眷属卵を召喚した。

するとバスケットボール大の真球に近い虫卵Lv.3が召喚されて来た。

たしかクモクモもこれから出て来たはずだ。

これでお土産に買って来た布地から服が量産出来る。

それを居残り組に優先的に配布して不満を和らげよう。

だが、それでも孵化に3日かかるんだよな。

そうだ、それなら他の眷属卵も召喚しておこう。


「たまご召喚、眷属卵、スモールレッサードラゴン!」


『特殊個体のため、眷属卵Lv.1では召喚できません』


「おお!」


 俺の頭の中にシステムメッセージが流れた。

そのことに思わず驚いてしまった。

レベルアップの音が鳴ることはあったけど、説明的なシステムメッセージは初めてじゃないかな?

そういや結衣なんかも、魔物の解体の仕方や料理方法が頭の中に浮かぶと言っていたけど、これのことだったのか?


 それにしても、やはりラキは当たり個体だったのか。

さすがにそんな特殊個体を簡単に召喚出来る訳がないか。

まあ、クモクモと同種の卵――たぶん――が召喚出来ただけで良しとしよう。

チョコ丸も増やせれば良いが、今は街へと行けないので召喚しても持て余す。

それに馬が6頭もいるから、その世話で手一杯だ。余計な手間を増やすわけにはいかない。


「準備出来たよー」


 結局、荷物は結衣とマドンナのアイテムボックスに収納したようだ。

ひっぽくんの獣車を準備したのに、その荷台には何も積まれていなかった。


「それじゃあ、出発しよう」


 俺がチョコ丸、さちぽよと紗希が馬、ついでにバレー部女子とバスケ部女子も恐る恐る馬に乗り、結衣、瞳美ちゃん、裁縫女子、マドンナ、腐ーちゃん、そしてゴレーヌと鶏がひっぽくんの獣車に乗って出発した。

ラキは結衣の胸の定位置。ホーホーは俺の頭の上。土トカゲと火トカゲは俺のポケットの中だ。

結衣の眷属となった水トカゲ2は女子の誰かが持っているようだ。

クモクモは自分で移動し、キャピコはカブトンの背中に乗っている。

ハッチはたまにハチミツを持って来てくれるが、常にどこかでハチミツ集めをしているために不在がちなため、同行していない。

そしてGKは影から俺たちの移動の痕跡を消しつつ付いて来てくれている。


 そういえば、全員のステータスを見たことで、腐ーちゃんの本名を知ってしまった。

鎖百合と書いてサユリ。腐女子の腐ーちゃんということであだ名となったと聞いていたが、名前の鎖から腐りと転じて腐ーちゃんでもあるらしい。

鎖と百合でサユリ。いったいご両親はどっち方面の方なのかと思ってしまう。

名は体を表すと言うが、名が体を表してしまったのだろうか?

いや、BLは薔薇だから違うか。


 そんなバカなことを考えながら移動できるほど、温泉への道は平和だった。

ラキがいることもあるが、GKやカブトンを筆頭に、戦える眷属が一緒に移動していることも、魔物が寄ってこない理由のようだ。

GKには、また移動の痕跡の隠蔽を行ってもらっている。

拠点から移動したことが足跡や獣車の轍でバレバレでは困るからね。


 そしてついに到着した温泉には、立派な塀と半分出来かけの家が存在していた。

俺が不在の間も、ゴラムが魔力欠乏になって停止しながら毎日建築してくれていたのだ。


「へえ、結構出来上がってるね」


「でしょでしょ。温泉に来る度に出来て来てるから楽しみだったんだ」


 裁縫女子が感想を述べると、マドンナが嬉しそうに自慢した。

この家もマドンナが強行に主張して作り始めたのだ。

そこに拠点に来る人間が俺たちにとって危険かもしれないという考えが加わって、本格的に建築することになったのだ。

その出来上がる様子を、毎日温泉に通っていた居残り組は見ていたのだろう。

ここらへんは草原の罠も含めてクモクモが巣を張って支配しているので自由に動けたのだ。


 家は平屋建てで、一部屋ずつ増築するかのように建てられているようだ。

つまり、完成している部分には屋根もあり、もう住むことが出来た。


「ゴレーヌ、ゴラムに協力して完成させてくれ」


 俺がゴレーヌにそう言うと、ゴレーヌはゴラムに近寄って何やら交信しだした。

そしてゴラムとともに右手を俺に対して上げると2体で作業を再開した。

どうやら、作業内容を交信して「了解」ということらしい。


「今見て来たけど、部屋はまだ4部屋とリビングしか無いわよ?」


 女子9人と俺で10人だ。

それで4部屋となると、部屋割りが微妙だな。

俺が1人部屋で、女子たちが3人部屋というのも気が引ける。

俺はリビングにごろ寝で、女子たちに2:2:2:3で部屋を使ってもらうか。

そう提案してみたところ、バレー部女子に全否定されてしまった。


「はあ? 何言ってるの?

夫婦が同室じゃないと皆が困るのよ!

声は構わないけど、目の前で盛るのはやめてよね?」


 いや、共有空間のリビングでそんなことしないって。

それに声って!

たしかに防音が必要かもしれない……って違うわ!


「私たちは別に見えても……」


 そこ、興味深々で観察する気満々の態度もやめてよね。

これは結衣と二人で個室を提供してもらう方向に決定か。

あれ? さちぽよから【クリーン】の使い方も教わったし、夫婦だし、個室だし、何の問題もなくなってるぞ?


「じゃあ、部屋割りは転校生くんと三つ編みちゃんで1部屋、バスケちゃんとバレーちゃんとサッカーちゃんで1部屋、私とマドンナちゃんとメガネちゃんで1部屋、腐ーちゃんとさちぽよで1部屋でいいかな?」


 裁縫女子が勝手に部屋割りを決めた。

これは増築される度に変動する予定だそうだ。

いや、変動と言っても次は3人部屋から1人ずつ移動するだけだろうけど。

そして最終的には9部屋の予定だそうだ。

おかしい、10人なのに1部屋足りないぞ。

そうか、さちぽよが増えたから1部屋足りなくなったんだな。

だが、当初の計画通りのままってなんだよ。

え? 夫婦はずっと同室決定?

それはそれで自制が……。防音ってどうすれば良いんだ?

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