第113話 身を隠す

 この世界に俺たちが召喚された理由が、俺たちを都合よく使役して戦力とするためらしいことが、さちぽよとの遭遇で発覚した。

この街には、使役され肉体的に精神的に弄られたヤンキーチームの面々が出没するようで、下手なメンバーと遭遇すると、俺たちまで捕まりかねないことが予想された。


「とりあえず、カドハチの店に戻って、拠点組含めた全員のローブを買おう」


 まあ、さちぽよの言動から、他のメンバーとはさちぽよ本人も会えないらしいので、今はこの街にはさちぽよだけという可能性が高い。

だが、油断は出来ない。細心の注意を払って、移動するべきだろう。

俺たちは周囲を警戒しつつカドハチの店に戻り、ローブを購入し装備すると身を隠した。


「一旦宿に戻る。市場での私物の買い物は中止だ。

食料の買い出しは、俺と結衣三つ編み女子で行ってくる。

なるべく目立たないようにしないとな」


「それは仕方ないわね」

「仕方ない」

「わかりました」


 居残りとなる裁縫女子、紗希サッカー部女子瞳美ちゃんメガネ女子が納得の声を上げる。


「まあ、日用品ならばカドハチの店で全て手に入るだろ?

市場でしか手に入らないものなんて、そうそう無いはずだ」


「まあ、市場は買い物というより娯楽としてのウインドウショッピングだからね」


 裁縫女子が残念そうにしながらも、背に腹は代えられないという感じだ。


「今度、ノブちんたちが行った隣の国に行ってみよう。

そちらならば、安全に買い物が出来るかもしれない」


 どちらも召喚者には厳しいかもしれないけどね。


「魔法か何かで知り合いの位置がわかれば良いのにね」


 瞳美ちゃんがそう呟く。

たしかに探知系のスキルがあれば、ヤンキーチームの同級生が別人のように変わり果てていたとしても、気付くことが出来るかもしれない。

あれはない。姿や話し方まで違うのだから、声をかけられるまで、彼らだとは判らないだろう。

唯一の特徴は豪華な鎧を着こんだ騎士姿ということだろうか。

いや、騎士姿だけとは限らないな。

魔法のギフトスキルを持っているメンバーもいるのだから、魔術師姿にも気を付けないとならないだろう。


「「「気を付けて」」」


 皆が見送るなか、俺と結衣はこっそりと食材の買い出しに市場へと向かった。

小麦はクモクモの袋と入れ替えて来たため、袋を返却することで買うことが出来た。

返さなかったならば、購入できないところだったのだ。

日本では土嚢を作るときに使われるような雑な袋なのだが、それでも貴重品なのだ。

普通ならば袋代か保証金を取られるところなのだろうが、俺が高価な米を購入したため、前回は袋を貸してくれたというところだ。

今回は、クモクモが作った同容量の袋を持って来た。

そこに小麦が移されることで、スムーズに購入することが出来た。


 今回は余計なものに手を出さす、暫く街に来れないことを想定して品物を仕入れた。

速く街を離れたいところだが、夜の森を踏破するのは危険が伴うため、俺たちは翌朝まで宿で身を隠すことにした。


「明日の朝、拠点に帰る」


「「「「わかった」」」」


 そう言うと、皆は自分の部屋に……結衣がそのまま俺に付いて来た。

ああ、しまった! 結衣は俺と同部屋だったんだった。

昨夜は先に寝てしまって気付かなかったけれど、今日は最初から一緒じゃないか!

どうしたら良いんでしょうか?

嫁だからいいんでしょうか?

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