第111話 皆で買い物4

「これと、これ、そしてこの布を」


 結衣三つ編み女子にも見繕ってもらって、布を購入した。

これはクモクモに作ってもらう女子の服用だ。

クモクモの作るキャピコ糸とクモクモ糸の布だと、なんだか高級感が半端ないのだ。

それと今のところ染色が出来ないので、白い服か草や泥で汚して染めた服しか作れないのだ。


 まあ全員分の服が出来たら余剰分は売ることも考えられるが、それこそ小出しにしていかないと材質的に変に目立ってしまう可能性がある。

そこで市販の布の出番だ。

悪目立ちしないためにも、市販の布で服は作った方が良いという判断だった。

市販の布で出来た服であれば、新品で売ってもあまり目立つことはないだろう。

裁縫女子が暇なら、これで小遣い稼ぎでもさせておこう。


「次は瞳美ちゃんメガネ女子の本屋かな?」


「大丈夫です。この店で買いました」


 どうやらカドハチの店で本が買えたらしい。

どんな本を買ったのか気になるが、そこは詮索しないことにしよう。

それより、自腹で買っちゃったら、お土産にならないぞ。


「そのお金は共同資産から出すよ。

前回のお土産分ということだからね」


「そうでしたね。では、金貨8枚お願いします」


 なるほど、この世界、本も高いんだ。

まさか印刷技術がなくて、手書きだったりするのかな?

しかし、共同資産から出すと言った手前、出さないわけにもいかない。


「どんな本を買ったの?」


 結衣が興味本位でどんな本を買ったのか訊いている。

いや、他人の趣味は詮索しない方が……。

ここでBL本だったりすると変な空気が流れるぞ。


「魔物図鑑よ。魔物のことを知っていた方が良いでしょう?」


 すみません。俺が悪かったです。

趣味の本だとばかり思っていて、まさかの実用書だとは思わなかった。

瞳美ちゃんは真面目だな。

これこそ共同資産から出すに値する出費だよ。


「こういった本だったら、もっと買って良かったね。

あ、渡したお金が金貨10枚だったからか」


 瞳美ちゃんは、自分のお金で買える本にしか手を出していなかった。

自分の服なんか最低限しか買っていないようだ。


「他に必要だと思った本は言って、お金は出すから。

それと、はい金貨8枚。

このお金は自分の物を買うのに使ってよね」


「じゃあ、他の本もお願いします」


 瞳美ちゃん、良い子すぎる。

さっきも買いに走ろうとしたのは、欲しい本があったからなのか!


「皆のためになる本なら、いくらでも出すよ」


「ちょっと、私と扱い違いすぎ!」


 うるさいぞ。裁縫女子。

まず私物をがっつり買ったお前とは、違って当然なのだよ。


「じゃあ、これをお願いします」


 瞳美ちゃんが選んだ本は魔法の指南書だった。

この世界、魔法はスキルさえ手に入れば使えるものと思っていたが、どうやら修行によりスキルが生えるらしい。

その修行方法の載っている本なんだそうだ。

彼女は戦闘職でも生産職でもない知識職だ。

魔法を覚えて役に立ちたいという思いが、ひしひしと伝わって来る。

ああ、良い子だな。応援したくなるよ。


「わかった。買おう」


 お値段金貨30枚。

高いが、これは必要経費だろう。


「それと、これ」


 ああ、薬草図鑑ね。

【植物鑑定】を持っていた栄ちゃんがいた時は必要なかったけど、たしかに今は必要なものだろう。

金貨6枚。買いだね。


「それと、これ」


 国の歴史書か。

なるほど、この国やこの世界の文化的なことが判るかもしれない。

金貨5枚。買いか。


「それと、これ」


 民俗学の本?

ああ、この世界にいる人種なんかがわかるのか。

金貨4枚、なんだかすごい額になって来てないか?


「それと、「ちょっと待って!」」


 裁縫女子がその流れを断ち切った。

瞳美ちゃんが選んだのは錬金術大全、金貨50枚だった。


「もう全部で金貨50枚越えてるわよ!」


 その声に俺もさすがに我に返った。買いすぎだった。


「そうだな。今回はここまでにしとこうか」


 危うく金板1枚軽く超えることになるところだった。

瞳美ちゃんの知識欲は、裁縫女子の物欲よりも怖かった。

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