第107話 アイテムボックス

お知らせ

 106話を少し加筆修正しました。

内容的はほぼ変わっていませんが、誤字修正と説明不足な部分を補填しました。

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 朝食を済ませ、街へと買い物へ出ようとしたのだが、このままチェックアウトとなってしまうため、チョコ丸とひっぽくんの獣車を停めておくことが出来なくなってしまうことに気が付いた。


「今から買い物をして昼過ぎに街を出ると、帰路で森の中を夜中に進まなければならなくなる。

出発を明日朝にすれば、夕方には拠点まで帰れる計算になる。

もう1泊して、街を出るのを明日朝にすれば、ひっぽくんたちも預けたままに出来るしどうかな?」


「異議なし」

「それがいいね」

「うん、いいよ」

「いいんじゃない?」


 四者四様でOKが出た。

女将にもう一晩泊まると言って料金を払う。

女将はカードキーを受け取ると、本日分支払い済みの情報を書き込んで渡して来た。

ひっぽくんたちを安心して預けることが出来て、俺たちは街へと買い物に出かけることになった。


 今回は、アイテムボックスの偽装用にチョコ丸を連れ歩くことをしない。

宿屋の女将が、アイテムボックスのスキルを食料保存庫として普通に使用していて、結構有り触れたスキルだと発覚したからだ。

この世界では、レベルアップによるスキル取得が稀に・・起こるらしく、そこでアイテムボックスを取得する人がそこそこ存在するのだそうだ。

なので、俺たち5人のうち1人程度がアイテムボックスのスキルを使っても、怪しまれることはないし、誘拐などの被害に遭遇することもないらしい。

まあ俺たちの場合は、その容量が段違いのようだけど、それさえ見せなければ問題ない。

しかも、この世界の一般人が稀に取得するスキルを、俺たちはレベルアップする毎に必ず1つ取得出来ている。

やはり召喚者特典というものは存在しているらしい。


「アイテムボックスは私の商売には必須の有難いスキルだからさ、レベルアップで失わないように気をつけているんだよ」


 そして女将には、重要なことを教えてもらった。

人が所持出来るスキルの上限は10個まで。

既にスキルを10個持っていて、レベルアップで新しいスキルを手に入れてしまうと、何か1つスキルを失うことになる。

直ぐに不要スキルを指定すれば良いが、その処置をしないと1日以内に勝手に1つのスキルが消えてしまうらしい。

それがもしアイテムボックスだったなら、商売にも影響が出て目も当てられないというのが、女将の話だった。


 なるほど、俺が水魔法と火魔法を失ったのは、そんな理由だったのか。

どうやらギフトスキルは失わないようだが、他のスキルは勝手に消える対象のようだ。

アイテムボックスを失っていたら中身含めて大変なことになっていただろう。

今後はレベルアップに気をつけないとならない。

いや、オークを狩ったせいで、そろそろじゃないかと思うのだが……まさか!


 嫌な予感がする。

戦闘中にレベルアップするとシステム音を聞き逃すことがある。

俺は恐る恐るステータスを表示した。



名前:転校生(ヒロキ)

人種:ヒューマン

職業:なし

レベル:13↑

HP:119/119↑

MP:158/158(132)↑



「……っ!」


 やはり俺はレベルアップのシステム音を聞き逃していたらしい。

おそらくオーク戦でレベルアップしていたのだ。

つまり一晩経ってしまっている。

これでまた有益なスキルが消えているかもしれない。

そう思ってその下のスキル欄に目を落とす。

今回は何を失って何を得たのだろうか?



スキル:身体強化

    生活魔法Lv.2

    アイテムボックスLv.2

    剣技Lv.2↑

    魔力増強Lv.1(MP1.2倍)

    魔力回復Lv.1(MP回復力2倍)

    手当Lv.1

    錬金術Lv.1

    付与魔法Lv.1

    スキル限界突破Lv.1new(スキル上限20)


ギフトスキル:た*まご?召喚 ▲ 鶏卵Lv.2

                トカゲ卵Lv.3

                カエル卵

                魚卵

                虫卵Lv.4

                魔物卵Lv.2

                食卵Lv.1

                眷属召喚Lv.1new


眷属 土トカゲ1 ▼

   火トカゲ1 ▼

   スモールレッサードラゴン(ラキ) ▼

   キャタピー(キャピコ) ▼

   アースタイガー(クモクモ) ▼

   ナイトバード(ホーホー) ▼

   鋼ビートル(カブトン) ▼

   ジャイアントコックローチ(GK) ▼

   ジャイアントハニービー(ハッチ) ▼

   土ゴーレム(ゴラム) ▼

   竜型騎獣・地走竜(ひっぽくん) ▼

   鳥型騎獣・走鳥(チョコ丸) ▼



「え? スキル限界突破?」


 どうやら俺は特殊なスキルを得てスキル上限が20になったようだ。

このスキル、レベルが存在するということは、上限が増えることを意味していた。

これでスキルが消えるという事態は当分――20個になるまで――気にしないで済みそうだ。


 そして、スキルの1つとして数えられているギフトスキル【たまご召喚】のサブスキルに眷属召喚というのが現れた。

どうやらこのサブスキルはスキル数の上限には影響を与えないようだ。

何やら有用なスキルのようなので、後で実験しよう。


 そうそう、魔力回復Lv.1(MP回復力2倍)というスキルがある。

このおかげでMP回復の仕組みも最近なんとなくわかって来た。

スキルとして【魔力回復】を持っていないと随時の自動回復はしないのだ。

しかも俺のスキルはMP回復力2倍。

0の2倍は0だろと思うだろうが、基本の【魔力回復】が1で、それを持つことで自動回復出来るようになる。

俺のスキルはそこに2倍の特典が付き、2回復するということらしい。

ただし、そのスキルを持っていなくても、夜中の0時つまり日をまたぐか、レベルアップすると全回復する。そんな感じらしい。

これを持たない女子たちは、MP枯渇の危険があり、MPポーションで対応する必要があるので注意が必要だった。


「ほら、行くよ!」


 考え事をしていた俺の背中を紗希が思いっきり平手で叩く。


「痛ってーーー! 何するんだよ!」


「皆待ちくたびれたんだよ」


 そんな俺を慰めるように結衣が腕を絡めて来る。

俺の右腕に癒しが当たっている。

まあ、紗希を怒ってもしょうがない。

買い物に出発しようか。


「まず、素材を売りに馴染みの店に行くよ」


 俺は知り合いである商人のカドハチの店に向けて、皆を連れて歩き出した。

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