第106話 初日夜
「だよねー」
お節介2人組が居ないということは、無理やり同衾させられることもないということだった。
女子4人が3人部屋に行き、俺は1人で2人部屋に寝ることとなった。
さすがに壁のある部屋で結衣と2人きりは危なかった。
そして何事もなく朝を迎えた……と思ったら、いつのまにか結衣が同じ部屋で寝ていた。
いや、2人部屋だから当然隣のベッドだぞ。
「なんで? 鍵閉まってたよね?」
まさか、4人で集まっていたのはおしゃべりのためであって、最初から結衣はこっちで寝るつもりだったのだろうか?
鍵は俺が持ったまま部屋に入ったから、宿屋の女将にでも開けてもらったということだろう。
俺は結衣が女子部屋で寝るのだと勝手に思って、鍵をかけて先に寝てしまっていた。
この世界、宿屋であっても鍵をかけないのは不用心らしい。
宿屋の女将に窃盗被害があっても補償しないと注意されていたので、俺は鍵をかけてしまったというわけだ。
まさか貴重な初夜のタイミングを棒に振ったのだろうか?
それより、先に寝ちゃって閉め出して結衣が怒ってないかが心配だ。
いや、怒っていたら昨晩のうちに叩き起こされてたか。
しかし、結衣の寝顔が可愛い。
「今からでも」
ドンドン! 「起きたかー?」
いきなりドアがノックというには盛大に叩かれた。
声からして紗希だろう。
「うーん、うるさいなー」
その音と声で結衣が起きる。
俺と目が合うと結衣はサッと目を逸らし赤くなった。
もしや昨夜に何かあったのだろうか?
俺に記憶がないだけで、何かしたんじゃないだろうかと不安になる。
「寝顔、見たの?」
それかー! たしかに可愛い寝顔を堪能しました。
ありがとうございます。
ドンドン! 「朝食出来てるよー」
どうやら先に起きた紗希たちが食堂で朝食を準備してもらっていたようだ。
「わかった。今行くー」
そう言って慌てて毛布を捲って起きた結衣は下着姿だった。
「あ」
思わず声が出てしまった。
温泉で裸を見て――ラキの視覚経由だが――しまったとはいえ、治療で少し生で見てしまっているとはいえ、その姿は眩しかった。
「もう、えっち♡」
女子の下着姿を見ても激しく怒られないなんて、なんて幸せなんだろうか。
そう言うと、結衣はさっさとワンピースを着てしまった。
眼福です。ありがとうございました。
扉を開けると、紗希は既に階下に降りて行くところだった。
結衣の返事を聞いてさっさと行ってしまったようだ。
俺は結衣と2人で階段を下りていくと食堂へと向かった。
「こっちです」
食堂にはいくつかテーブルがあり、宿泊客が各々座っていた。
瞳美ちゃんと裁縫女子がテーブルを確保していて、既に5人分の料理が並んでいた。
「ぐふふ、昨夜はお愉しみでしたか?」
裁縫女子が下品なことを言い出す。
赤くなる結衣。でも、なんにもしてないんだからね!
「やめろよ、まだだってば」
俺が否定すると裁縫女子は心底がっかりした表情を見せた。
「ヘタレ!」
俺の心を抉る一言が発せられる。
「大丈夫、まだ早いよ」
瞳美ちゃんが慰めてくれるが、この一撃は効いた。
ちょっと男としてどうかと思ってしまう。
結衣は終始赤くなっている。
紗希は全く興味を示さずに、もう飯を食い始めていた。
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