第96話 鞍を買う
中古馬車屋は城壁の外だというので、チョコ丸の駐騎代が勿体ないので他も回ることにした。
防具を買うのはやめておいた。
身体に合わせて調整をするので半分オーダーメイドなのだ。
既製品を身体に合わせて修正点を書き出し、直したものを後で引き取るというスタイルらしい。
ラノベお約束の、魔法によりサイズ調整がされて常にぴったりなんて鎧は、少なくともこの街には存在していなかった。
ポーション類も仕入れた。
この世界、一番怖いのは病気だろう。
たぶんマドンナの能力ならば傷の回復も病気の快復も出来ると思うが、常にマドンナが治療できる体制とも限らない。
その時のために購入しておくべきだろう。
あと毒消しなんかも必須だと思われるので買った。
「さて、これで大丈夫かな?」
まあ、足りなかったらまた来れば良いのだ。
入街税と駐騎所の代金がかかるが、素材を売るなどのついでならば大した金額ではない。
と、チョコ丸を引き取ろうとして気付いた。
肝心のチョコ丸の鞍がまだだったのだ。
その店は当然なのかもしれないが、駐騎所の横にあった。
騎獣に合わせて調整をするのだから、騎獣の傍に店があるのは当然か。
「鳥型騎獣の鞍が欲しいのだが」
「種類は?」
店のオヤジは作業中なのか、俺の方を見ずに訊き返して来た。
「走鳥だ」
俺はステータスで見たチョコ丸の種類を伝える。
「それなら、そこのやつだ。
調整代含めて金貨2枚だ」
見ると一人乗りで
どうやら取り付けの調整もしてくれるらしい。
「頼む」
「よしきた、どいつだ?」
オヤジは俺が注文すると初めて俺の顔を見た。
そして騎獣は駐騎所のどれかと訊ねて来る。
「そこの首にタオルが巻いてある7番のやつ」
俺が指差すと、オヤジの顔が険しくなる。
「なんでぃ、手綱もねぇじゃぇか。
そっちは銀貨3枚だ」
「それも頼む」
俺がそう言うとオヤジは手綱を持ち鞍を担いでチョコ丸に向かった。
「この袋はそのまま使えるが、括り付けるのは鞍にしとけ」
そう言ったと思ったら、既に鞍と手綱が取り付けられていた。
熟練職人のプロの技だ。
ズタ袋はチョコ丸の身体を跨ぐように左右に垂れ下がるようにしてある。
その真ん中は布で繋がっていてその布部分の上に俺は座ってチョコ丸に乗っていた。
どうやら、この構造のまま鞍に括り付けられるようだ。
俺は金貨2枚と銀貨3枚をオヤジに渡した。取引成立だ。
これでチョコ丸も立派な騎獣に見える。
「調子が悪かったらいつでも来い。微調整してやる。
解ってると思うが、寝床では鞍を外せよ」
どうやらアフターサービス付きらしい。
次は俺が鞍を付けなければならないようだ。
それならば、もっとゆっくり見せてくれれば良かったのにな。
さて、これで街の外に出ても良いかな?
大工道具は買ったし、石鹸も買った。
女子が必要としていたものは、これで良いだろう。
ああ、包丁と裁縫道具は買っていない。
この世界、包丁という専用の刃物が無かった。
なので普通のナイフを使って料理をするのだ。
そのナイフが三つ編み女子がゴブリンナイフから研ぎ出した調理用ナイフ兼解体ナイフよりも酷かったのだ。
彼女のギフトスキルにより研ぎ出された調理用ナイフの方が、包丁と呼ぶに相応しい代物だった。
さらに
布もナイフで切るのだ。
それも裁縫女子が手作りして持っている。
針もクモクモの毛で作った物の方が優秀だ。
つまり買う必要が全くなかったのだ。
お土産に、ボタンは買った。
クモクモと裁縫女子に服を作ってもらうからね。
木、陶器、石、金属といろいろあったが、一般人向けは木か石のようだ。
「騎獣を引き取る」
俺は木札を見張りに渡す。
「あいよ。7番ね」
見張りはチョコ丸の首から7番の札のついた紐を外し、ロープを解いた。
これで後は中古馬車屋を見るだけだな。
俺はチョコ丸の手綱を引きながら、この街へと入るときに使った街門へと向かった。
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