第84話 無限召喚なんて出来ない

「ならば、チョコ丸増やそうよ!」


「そうだよ、卵召喚すれば良いじゃん」


 街行きの同行を諦めきれない女子から声が上がる。

裁縫女子とバスケ部女子だ。

だが、それは出来ない相談だった。


「いや、卵召喚は狙った眷属を出せないから。

それに眷属の数には縛りがある。

余計に召喚したら、今まで眷属にした誰かとの繋がりが消えてしまう」


「眷属譲渡出来るんでしょ?」


「それで移せば卵召喚し放題だよね?」


 どうやら三つ編み女子が水トカゲ2を譲渡してもらったことを知っていたらしい。

だが、それは出来ない相談だ。


「それも無制限ではない。

水トカゲ2を渡した三つ編み女子には、もう新たな眷属は渡せない。

どうやら譲渡は1人1眷属のみという縛りがあるようなんだ」


「えー、なら残り7人分はいけるじゃん」


「そうだよ。私にはクモクモちょうだいよ」


 こらこら、俺はその物をやりとりするように眷属を見られるのは気に入らないぞ。

ここはしっかり言っておこう。


「眷属は物じゃない。なるべくなら譲渡したくないんだ。

前回は繋がりが切れてしまう緊急事態だから譲渡したが、次はよっぽどのことが無い限り譲渡する気はない。

ましてや無駄に召喚したいから譲渡するなんて絶対に無理」


 俺が語気を強めて言ったため、2人はしまったというような顔をした。

だが、街行きを諦めきれないようで、別の主張を始める。


「ならばひっぽくんに複数乗れば良いじゃん」


「そうそう、ひっぽくんはもっと大きくなるんでしょ?」


 マジで言ってるのか?

ひっぽくんってあれでも竜だぞ?

名前からカバだと思って、そこらへんの認識が甘いのかな。


「ひっぽくんという名前で錯覚しているのかもしれないが、あれでも竜だぞ。

竜のゴツゴツした外皮にそのまま乗れると思うのか?」


「「あ……」」


 だから獣車がいるって言ってるのになぁ。


「ならばチョコ丸に2人乗りで……」


「却下。何人乗せられるか未知数なのに、チョコ丸に負担をかけたくない」


 こんな2人を街に連れて行ったら問題を起こしてどうなるかわからないぞ。

ファーストコンタクトは慎重にならないといけないのに、この2人こそ連れて行ってはいけないタイプだろ。

例え2人乗り出来ても、連れて行くわけにはいかない。

だからチョコ丸は今後1人乗りで押し通す。

まあ、鞍でも付けなければ2人乗りは無理だろうけどね。

あ、裁縫女子は革職人でもあったな。

気付かれる前に俺だけで街に行くか。


「さてと、お土産も出来たし、温泉に帰って残ったメガネ女子と三つ編み女子もレベルアップさせてしまおう」


 温泉に入る時間も作らないとならないしね。


「私たちは、あのホーンラビットを狩って来ても良いか?」


「ホーちゃん?」


 ホーちゃんに周囲の魔物を探知してもらう。


「ホーホー」


「バッタ人間も巨大カマキリもいないって。

ただ、ホーンラビットの血の臭いは巨大カマキリを呼ぶから迅速にな」


「わかってる」


 結局、全員で警戒しながらの狩りとなった。

レベルの上がった彼女たちには、最早ホーンラビットは雑魚だった。

運動部系女子3人は、どうやら移動系のスキルを得たようだ。

ホーンラビットを逃がすことなく追い込み、簡単に倒せていた。

俺は、そのホーンラビットを素早くアイテムボックスに入れ、血の跡を【クリーン】で浄化した。

これで巨大カマキリの誘引を防ぐことが出来るだろう。


「よっしゃ、温泉に入って帰るか」


「覗くなよ!」


「少しならいいけど♡」


 何言ってるんだよマドンナさん。

勘弁してください。

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