第30話 委員長チームも遠征に行くって
「半日でその成果ならば、午後は僕たちが行ってくるよ」
委員長が俺たちと入れ替わりで旧キャンプ地に行くと言いだした。
居残り組は委員長、ノブちん、貴坊、せっちん、三つ編み女子、マドンナ、バスケ部女子、バレー部女子の8人だ。
バレー部女子は負傷療養中のため参加出来ない。
「バレー部女子が行けないから、サッカーちゃんか腐ーちゃんに来てもらいたい」
「私は無理だね~。MPが足りない」
腐ーちゃんが、MP不足を理由に行くのを断った。
あれ? レベルアップするとHPもMPもMAXまで回復するんじゃないのか?
周囲を見回しても、俺と同じチームでレベルアップした面々が、腐ーちゃんの発言を不思議そうにしていない。
もしかして、レベルアップでMAXまで回復するのって俺だけ?
「そうか。ならばサッカーちゃん、良いかな?」
「僕? 構わないけど」
サッカー部女子が参加を承諾する。
彼女はレベル3なので、ゴブリン相手ならば楽勝だろう。
これでアタッカー3、タンク1、魔法1、回復1、その他2となる。
何気に俺たち――アタッカー3、魔法1、その他4――よりバランスが良い。
特にタンクと回復職の存在は安全面で大きい。
もしかして、委員長は自分達が有利になる人選をしていた?
まあ腐ーちゃんをこっちに配属してくれたのは、偏っていなかった証拠なのかもしれないけど。
でも、その腐ーちゃんもMPさえ不足していなかったら連れて行く気だったよね?
ちょっと引っかかるが、疑惑の域を超えないか。
「午前と午後では、魔物の種類が違うかもしれないよ。
明日にした方が良くない?」
「いや、夕方になる前に帰れば大丈夫だ」
丸くんがそう警告を発したが委員長は聞く耳を持たなかった。
確かに今までの経験では、昼間はゴブリンか獣にしか遭遇していない。
早朝や夜間が一番危険だったのだ。
夜間ではゴブリンの群れに襲撃された。
そして、早朝は俺が
だが、丸くんも俺も旧キャンプ地でグレーウルフという脅威を目にしている。
死んでいたとはいえあの大きさの魔物が群れる恐ろしさは丸くんも想像したのだろう。
特に新たな獲物――ゴブリンの死骸がある状況では血の臭いでどんな魔物が寄ってくるかわからない。
気を付けるに越したことはない。
「風下からこっそり近づいて危ない魔物がいたら直ぐ逃げるんだよ」
「わかってるさ!」
丸くんが心配して言うのだが、委員長は自分の判断にケチを付けられたと思ったのか、いら立ちの声を上げた。
そうなると丸くんも折れるしかない。
「本当に気を付けてよ?」
「大丈夫、私が判断して、委員長の指示を無視してでも皆を撤退させるから」
バスケ部女子がそう丸くんを慰め、委員長チームの遠征が決定した。
俺は不安を覚え、委員長チームでは比較的仲が良い三つ編み女子を呼んだ。
「三つ編み女子、ちょっと良い?」
「なにかな? 転校生くん」
「
もしもの時は役に立つかもしれない」
「連れて行けば良いのね」
三つ編み女子は、俺からドラゴンだと聞いていたラキを連れていけと言われて身構えた。
もしもの時があるかもしれないと察したのだろう。
「ラキとは念話が出来るみたいなんだが、クワァしか言わないんだ。
だが、誰かが話した事を中継できるみたい。
つまりラキに話しかければ俺に伝わるってこと」
「わかった。ラキちゃんに頼んで話せば転校生くんに伝わるのね」
俺は頷きを返した。
ラキがドラゴンだということは三つ編み女子と俺との二人の秘密だ。
同級生たちにはオオトカゲだと言ってある。
いざとなったらラキが助けるなど、あまり大きな声では言えないのだ。
「危なくなったら、自分の命を優先するんだぞ」
「うふふ。ありがとう」
なんでそこで笑う。
何か可笑しい事を言ったか俺?
本当に危ないんだからな?
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