第31話 委員長チームを覗く1
委員長チームが出発して1時間が経つ。
そろそろ旧キャンプ地へと到着する時間なのでラキと念話を繋げてみた。
『くわ?』
『どうしたのラキちゃん?』
おお、三つ編み女子の声がする。
これでラキが見ている視界でも見られれば……そう思ったところ、俺の視界が切り替わった。
目の前にあるのはセーラー服のスカーフだろうか?
それがほとんど接するほどの距離にある。
しかも左右を何かにホールドされているようで、視界が得られない。
「あ、これラキの視界だ! 目の前は三つ編み女子の胸部装甲か!」
せっかくの視界が、三つ編み女子の胸で遮られていた。
ラキの体長はダチョウの卵サイズから生まれて20cmぐらいだった。
チワワの子犬ぐらいだろうか。
たぶんラキを胸に抱えているのだ。
さて、困ったぞ。正面を見られれば委員長チームの状況がわかるのだが、このままじゃ三つ編み女子の胸しか見えない。
『ラキ動けないか?』
『くわぁ! くわぁ!』
ラキが藻掻いているようで視界が左右の乳房に向く。
ラキは完全に胸の谷間に収まっている。
『どうしたのラキちゃん』
あまりにもラキが暴れるので、とうとう三つ編み女子がラキを持ち上げて顔を覗き込んだ。
俺の目の前に三つ編み女子の顔がアップになる。
こいつ、思ったより可愛いじゃないか。
いや、そんなことを言ってる場合じゃない。
『ラキ、後ろを向くんだ』
そう指示したところやっとラキが進行方向に向いた。
『前が見たかったのね』
そう言うと三つ編み女子はセーラー服の胸元を広げ、こともあろうかそこへラキを入れようとする。
急なことでラキの視線が下を向き、その行動がすべて視界に入ってくる。
そこには白い双丘とそれを下から覆うピンクのブラが見えていた。
『ちょ、おま』
俺は慌てて視線を逸らしたが、その視界はラキのものなので変わるわけがない。
そうこうするうちにラキはその双丘の間へと収まった。
広げた胸元が戻されると、ラキの視界は前へと向けられたままになった。
「これは黙っておかないと拙い。
(覗き放題だとバレたら、やってなくても人生終わる!)」
いや、胸見てるし。
絶対にバレるわけにはいかなかった。
◇
進行方向に向いたラキの視界によって、委員長チームの状況がわかった。
ノブちんを先頭に、委員長、バスケ部女子、サッカー部女子が横に並んで続き、その後ろにマドンナと三つ編み女子が並び、たぶんその後ろにせっちんと貴坊が続いてるのだろう。
弱い三つ編み女子とマドンナを中央に配置するとは、委員長も気配りが利いているようだ。
俺はラキとの念話をつなげたままで状況を見続けた。
この距離ならば、先頭を行くノブちんの声も聞こえている。
『ちょっと風向きが変わった』
『ああ、横からになったかな。
横からなら大丈夫だろう』
ノブちんの指摘に委員長がGOサインを出す。
そろそろ旧キャンプ地が見えてくる位置なので、仕方ないだろう。
『見て、ゴブリンが10体いるぞ』
『せっちん、火魔法の範囲攻撃ってできる?』
『やってみる。でも、どのぐらいの範囲なのか、やってみないと判らない』
『ならば、中央の少し
『了解』
『僕とバスケちゃんとサッカーちゃんはノブちんがヘイトを集めた奴を横や後ろから倒すよ』
『『わかった』』
『準備は良い? せっちん、今だ!』
『ファイアストーム!』
せっちんの火魔法が前方の大きい奴に向かう。
そして当たったと同時に周囲に火の塊をまき散らした。
『ぐぎゃーーーー!』
大きい奴が悲鳴をあげ、その周囲のゴブリンも体についた炎を消すために転げまわった。
『おら、来い!』
ノブちんが盾を叩いてヘイトを稼ぐ。
撃ち漏らされた左右のゴブリンがノブちんに気を取られて向かってくる。
そこへまたせっちんの火魔法が飛んできた。
『ぐぎゃぎゃ!』
右側のゴブリンが前回同様に転げまわる。
『バスケちゃんとサッカーちゃんは、転げまわっているゴブリンの脚を斬ってまわって。
各々2体までは殺しちゃって良いからね』
『くっ』
バスケ部女子が不満の表情を溢したが委員長の指示に従った。
指示を出した委員長が、そのまま左から回って来て、ノブちんの盾を攻撃しているゴブリンをこん棒で殴る。
どうやら上手くいっているみたいだ。
三つ編み女子がゴブリンの接近に恐怖して右往左往しているため視界が定まらないので半分推測だが。
『ぐぎゃ! ぐぎゃ!』
突然中央から最初の的にした大きい奴が飛び込んできた。
その大剣によりノブちんの盾が粉砕する。
『【ヒール】!』
マドンナがノブちんに【ヒール】をかける声がする。
三つ編み女子の右にいるはずだが、視界には入って来ない。
混戦となり、ますます周囲が見えにくくなった。
三つ編み女子も自分の身を守るためにナイフを振ってがんばっているからだ。
『転げまわっていた奴らは僕らで行動不能にしたよ!』
その声はサッカー女子だろうか?
バスケ部女子とともにこのチームでは高レベルな方なので安心感がある。
『バスケちゃんはノブちんと大きい奴と戦ってる』
『そうか、ならばこっちを援護してくれ』
サッカー部女子の報告に委員長が答える。
『ぎゃっ!』
『貴坊!』
三つ編み女子の視界が貴坊に向く。その胸に収まっているラキの視線も当然そっちを向く。
どうやら貴坊はゴブリンのこん棒で殴られたらしい。
貴坊はこん棒を持っていて、それで受けたようだが、力押しで当たってしまったようだ。
そこへ三つ編み女子が駆け込む。
三つ編み女子の優しさが、自らの危険を顧みない行動に出たのだ。
ゴブリンは貴坊よりも三つ編み女子の方が組し易いと思ったのか、目標を三つ編み女子に変えた。
目の前に迫るゴブリンのこん棒。
『きゃあ!』
三つ編み女子が絶体絶命なのに俺はどうすることも出来なかった。
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