第29話 レベルアップ遠征の結果

 俺たちのチームが拠点に帰ると、そのレベル上げの成果に残っていた委員長たちは浮足立った。

8人中5人がレベルアップし、誰一人傷つくことなく帰還したのだから、浮かれても当然だろう。


「残りの8人も行ってきた方が良いかもな」


 委員長は今から直ぐにレベルアップしてくるとでも言いたげだ。

いや、それはどうかな。

これから日は傾いて行く。夜の方が危険な夜行性の魔物が増える。

特にウルフ系などは夜の方が危ない。

見えない場所から素早く襲ってくるので、昼よりも危険度が増すだろう。


「それより毛皮が手に入った。

毛皮は裁縫ちゃんがスキルで処理済みだ。

今から拠点の床に敷いてしまおう」


 裁縫女子のギフトスキル【裁縫神の加護】がレベルアップにより進化し、できることのオプションが増えていた。

その中に革製品の処理をするスキルが含まれていた。

彼女は道具も何も使うことなく、スキルによる魔法で革の下処理やなめしが出来てしまった。

これにより血や肉に塗れたグレーウルフの毛皮は、肌触りの良い柔らかい敷物へと変化した。

立派な毛皮に女子たちがうれしい悲鳴を上げる。


「これで生活水準が上がるわね」


「そうなるとヒヨコたちに汚されるのは問題ね」


 どうやら、ヒヨコの飼育ケージ問題が再燃したようだ。


「僕のギフトスキルも変化して、植物による籠なんかが作れるようになったんだ」


 栄ちゃんの【植物鑑定】もオプションにより植物を加工するスキルが生えていた。

それにより籠やロープなど、植物を加工して有益な小物を作れるようになったのだ。


「ヒヨコを籠に入れとくのか?」


「いや、籠の応用で囲いみたいのが作れるかと」


 所謂ペットケージのような柵のことだろう。

それを拠点の一角に設置して、そこでヒヨコを飼えばよいのだ。

そうそう、ヒヨコが眷属になるのかという答えが出た。

答えは否。ヒヨコはただの家畜扱いで眷属には該当しなかった。


「ならば栄ちゃんにヒヨコの寝床は任せよう。

それより、栄ちゃんはレベル3で何のスキルを得たんだい?」


 そして、話はレベルアップで手に入れたスキルの話となった。

裁縫女子はレベル2になった時のお決まりで【身体強化】だった。

これは、おそらくレベル2で初めて魔物と戦うための準備が整うということなのだろう。

この世界に生まれた者であれば、俺たちの年齢になる前に自然と経験値が溜まってレベル2になっているはずだ。

なので、ここまでは誰もが通るお約束扱いなのだろうと推測している。


「僕は水魔法Lv.1。

これで水トカゲを借りなくても水が出せる」


 水トカゲに頼りすぎだった状態をようやく脱したか。

今後皆も自分で尻を洗えるようになって欲しいものだ。


「僕は剣技Lv.1」


 雅やんが言う。

俺が会ったばかりの雅やんは内気な感じだったが、今や自信に満ち溢れ堂々としている。

クラスカーストがブービーでヤンキーに良いように使われていたという面影は今やない。

彼は、これでもこのグループ内では上位の戦闘職なのだ。


「私は闇魔法Lv.1」


 腐ーちゃんは相変わらず怪しい魔術師まっしぐらのようだ。


「僕は武技Lv.1」


 サッカー部女子は格闘系のスキルが伸びていくのか?


「ふーん。レベル3への上昇でもらえるスキルは戦うための魔法か技系なのかな?」


 そういや、俺の時も火魔法だった。

委員長の考察もあながち間違ってはいなそうだ。

これでレベル3以上が俺とバスケ部女子を含めて6人になった。

ちなみに居残り組のバスケ部女子はレベル4だ。

1回のレベルアップ遠征では上出来の結果だろう。

あと2回も行けば全員がレベル3以上となるはずだ。

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