第27話 薪拾い

「薪を拾いに行ってきまーす」


「くれぐれも二人以上で組んで行くんだぞ!」


 女子が連れ立って薪拾いに行った。

委員長が二人以上厳守を叫び、女子に何かを渡した。

女子は三人で手をつなぎながらいそいそと出掛けて行く。

あの光景、昔よく見た光景に似ている。そう思ったが口に出すのは憚られた。

そして暫くすると薪を1本ぐらいずつ持って女子たちが帰ってくる。

どうして薪1本ずつで連れ立って外出するんだ?

そう思っていた時期が俺にはありました。

皆、俺に隠していただけだったのだ。


「おい、薪拾いに行くぞ」


「ああ、じゃあ僕も」


 ん? 女子が行ったばかりじゃないか。

それに、なぜ水トカゲを持っていく?

俺は、その光景に嫌な予感がして彼らに付いて行くことにした。


「ここらへんで良いか」


 そう言うとノブちんが、徐にそこらに落ちていた棒を使って地面に穴を掘った。


「これぐらいで良いだろ」


 そう言うとノブちんはズボンを下ろして穴にまたがった。

おいおい、薪拾いじゃないだろそれ!

どうやら同級生たちは、トイレを薪拾いに行くという隠語で語っていたらしい。

そういや、女性の間ではお花摘みに行くという隠語があるらしい。

それだとここのような森の中では不自然なので薪拾いになったのだろうか。

なるほど、だから女子だけ、男子だけで行動するのか。

あの女子が連れ立って行動するのは女子のトイレ行動そのものだったんだ。


 そして、水トカゲが連れてこられた理由が目の前で展開していた。


「水トカゲ、水を出せ」


 ノブちんはそう言うと水トカゲの水で尻の穴を洗った。


「(いやーーーーーーーーーーーーーーー!!!)」


 俺は思いっきり口を押えて声にならない悲鳴を上げた。

俺の眷属に何やらしてんねん。

まさか女子たちも……。うらやまけしからん。


「ちょっと我慢できない。早く代わって」


 栄ちゃんがノブちんを押しのけて穴にまたがる。

そして至福の表情でいたす。


「水トカゲ貸して」


 そしてなれた様子で水トカゲの水で尻の穴を洗うのだ。

水トカゲはある程度勢いのある水流を1本打ち上げている。

まるで温水洗浄便座のアレだ。

このキャンプ生活、たしかにトイレ後のケアは大事だ。

俺は大の時に【クリーン】をかけていたから気づかなかったよ。

しかし、俺に断りもなく眷属で尻を洗うとはけしからん。


「転校生もするんだろ?」


 ノブちんが木の棒を持って俺に問う。


「いや、俺は小だったから穴はいらない」


「そうか。ならもう埋めるからな」


 そう言うとノブちんはトイレ穴を埋めた。

そのうち誰かがした跡を掘り返す悪夢に遭遇するだろう。


 この拠点生活が、すこぶる快適になったのは、俺の眷属のおかげだ。

まさか飲料水どころか洗浄便座に使われているとは思わなかった。

だから委員長は眷属を増やせないか聞いてきたんだな。


 俺はあんまりな眷属の使用方法にショックを受けたが、衛生面を考えれば致し方ないと思い至った。

この何もない場所での生活で、尻の穴が痒くなるという最悪の事態は避けられるべきだろう。

特に女子にあっては許されざることだ。

その解消に貢献しているのであれば、水トカゲも本望なんだと思うしかなかった。


 しかし、危なかった。

もし女子の後をつけていたら最悪な事態になっていただろう。

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