第15話 マドンナ

お知らせ

 PC不調につき、今日から暫く1話更新になります。

WindowsUPDATEが良くなくてシステム負荷が増えてるのかな?

とうとう買い替え時ってことか?

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 また夜が来た。

ヤンキーグループは自分達だけで水を確保できるようになり、完全に別行動をとるようになっていた。


 そう、ヤンキーグループは水を手に入れる手段を得たのだ。

今まで水の確保は、渓流の水をペットボトルで掬ってきて丸くんの浄化で飲めるようにする方法だった。

だが、彼らはゴブリンの頭蓋骨で器を作り、それに水を溜め、焚火の火で煮沸することを実現させたのだ。

委員長はゴブリンの頭蓋骨から肉を剥がすことに苦労し放棄したが、彼らは肉を舐めるように食ってしまえば良いので、作業は簡単だったようだ。


 その委員長が放棄した頭蓋骨も今やヤンキーのものだ。

それを加えて新たに2体分の頭蓋骨を確保したことで、簡単な煮炊きまでするようになり、奴らはゴブリンのスープまで飲めるようになっていた。


 焚火に火を点けるのも百円ライターを使っているので、せっちん要らずになっている。

水の確保も丸くん要らずだ。

つまり、ヤンキーグループは委員長グループの誰の手も必要としないという事だった。

むしろお荷物扱いで遠ざけるようになったのだ。


 そんな彼らの生活を委員長グループの何人かが羨ましがるようになっていた。

元々非ヤンキーグループというその他が集まっただけなので団結力など元から無いのだ。

それでも、集まっていればゆで卵が支給される。

それを食べれば1日は持つ。それだけで委員長グループは成立していた。


 委員長グループは今夜も4人4交代で夜の見張りをすることになった。

事件が起きたのは、その3交代目の時だった。


「嫌! やめて!」


 学級一の美少女、所謂マドンナが悲鳴を上げた。


「だから、俺たちの所へ来れば良い思いが出来るんだってば。

俺の女になれば、受け入れてもらえるから」


「やめて! さわらないで!」


 どうやらヤンキーの一人が、マドンナに言い寄った……いや、レイプしようとしたようだ。

所謂夜這いだ。


「私は、あなたのことなんて嫌いです!

二度と近寄らないで!」


「んだと、このアマ!」


 昭和のような捨て台詞でヤンキー8――固有名パシリが声を荒らげる。


「はい、離れて」


 委員長がおろおろする中、俺は仕方なく仲裁に入った。


「君、こんなことをして良いと思ってるのか!」


 俺の後ろから委員長が威勢の良い声をあげる。

いや、俺を盾にして吠えないでくれよ。


「あぁん?」


 ほらパシリが興奮して手が付けられなくなった。

弱いヤンキーほど、こういった場面では引くに引けずに虚勢を張るもんだ。


「か弱い女性を襲おうだなんて、犯罪行為だぞ!」


 いや、委員長、煽らないでくれよ。

そもそも、ここは異世界の森の中、警察も裁判所もない。(今のところ)

法で縛られないからこそ、こいつもたがが外れたのだろう。

ヤンキーグループという力が背景にあるから勘違いしてやりたい放題するつもりだったのかも。

正に虎の威を借る狐状態だ。


「ふん。日本の法律なんてここで通用するかよ!」


 パシリもそう思っているのだろう。

鼻で笑っている。


 だが、このままにするわけにはいかない。

警察力を行使しなければ、同様のトラブルを呼び込み続けることになるだろう。


「ああ、確かに日本の法律は通用しない。

だからこそ、こういったことに対する報復にも法律は通用しない」


 そう言うと、俺はパシリの腹に身体強化を乗せたパンチをお見舞いした。


「げぼぉ!」


 パシリは身体をくの字に曲げて数メートル後ろの木まで飛んで行って気絶した。


「転校生君、拙いよ。

ヤンキーどもの報復がある」


 あれだけ煽っていた委員長が急に弱気になる。


「いや、これは正義だ。

どうせパシリの独断専行だろう。

こんな恥ずかしい犯罪は、彼らのプライドが許さないはずだ。

それに、向こうには女子メンバーもいる。

女子が絶対に許さない」


 俺はパシリのワイシャツを脱がせて後ろ前に着せた。

そのワイシャツの背中部分に炭で「レイプ魔」と書いて、パシリをヤンキーどものキャンプ前に放り投げて来た。

これで、ヤンキーグループがこいつの味方をするなら、俺一人でも奴らを倒す所存だ。



 翌日、朝も早くからヤンキー1――固有名金属バットが委員長グループのキャンプへとやって来た。

どうやら、気絶したパシリが早朝に目を覚まし騒いだらしい。

金属バットは、マドンナの所へ行くと深く頭を下げて謝罪した。


「パシリが迷惑をかけた。

俺の顔で二度とこんなことはさせねぇ」


 そう言うと、金属バットは後ろからボコボコに顔を腫れさせたパシリを引っ張り出し、強引に頭を下げさせた。

ヤンキーの矜持見せてもらいました。


 金属バットによると、ヤンキーグループは男子8人女子7人のグループで、皆付き合っているわけではないのだが、このまま異世界から帰れないとすると、この中で恋人を作ることになるのではないかと、誰もが薄々感じていたらしい。

だが、この人数、男子が1人余る。

その男子とはつまり、ヤンキーカースト最下位のパシリとなる。

それでパシリは委員長グループから1人女子を調達しようと考えたらしい。


「それがよりによってマドンナだとは……」


 マドンナはヤンキーグループにも人気が高いらしい。

憧れているヤンキーも1人や2人ではないそうだ。

そりゃまあボコるわ。


「次からは正々堂々と言ってある」


 金属バットもマドンナ狙いらしい。

いや、告白に来られても迷惑なんだけど?

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