第14話 食事

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 2話同時投稿です。前話があります。

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 拠点を移動したせいで、あの岩の窪みを使うことが出来なくなってしまった。

非ヤンキーグループ――便宜上今後は委員長グループと呼ぼう――が大挙してそこまで戻れば、ヤンキーたちもさすがに何かあると気付くだろう。

委員長グループ16人は今日1人1個しか玉子を口にしていなかった。

しかし、なぜかそれで満腹感が得られ、活力がみなぎっていた。

どうやら、俺が出した玉子には回復魔法的な不思議な力があるらしい。


「これ、食い続けて大丈夫なのか?」


 このドーピング状態に危機感を持っているのは、どうやら俺だけのようだ。

俺が危惧しているのは、玉子食がゴブリンを食っているのと同じでは本末転倒だろうということだ。

もう食ってしまったのだから、あれなんだが、このドーピング、大丈夫なのか?


 俺はいま、密かに玉子を茹でている。

昨日召喚した卵が孵って、今度は土トカゲが生まれた。

土トカゲは土魔法が得意で、土魔法で土器を作ってくれた。

それを鍋にして、水トカゲに出してもらった水を、俺のスキルの火魔法で熱湯にして玉子を茹でているのだ。

ヤンキーどもがまた安全な場所を独占したので、そこから離れれば隠蔽は楽勝だ。


「委員長、ゆで卵だ。

これをヤンキーどもから隠れて皆に配って欲しい」


「わかった。

いつもすまない」


「それは言わない約束でしょ」


「……」


 おかしい。テンプレのはずだ。

田舎では通じないのか?



 今日の道中で俺はまたゴブリン3匹を倒しレベルが上がっていた。

俺に外周の危険な場所を歩かせたヤンキーどものおかげ(嫌味)だ。

俺は特にゴブリン討伐を報告していないので、ヤンキーどもは自分達だけがレベルが上がっていると思っていることだろう。

おそらく、ヤンキーどもの今日の成果はゴブリン1匹。

しかもヤンキーは15人で俺は1人。

獲得経験値にあからさまな差が出来ている。


 それにしても、ヤンキーどもは、ゴブリン食に躊躇いがなくなっているようだ。

今日も1匹のゴブリンが丸焼きになっている。

人型が食えるというのは、どんどん人を捨てて行っている気がしてならない。


 よくラノベでオークやミノタウロスが食肉として流通している描写があるが、頭部や手先、足先以外はほとんど人と同じ身体をしている。

所謂半人半獣と呼ばれる魔物なので、半分人だと認識してもかまわないのだ。

それを肉として枝に加工したとき、構造的に人と何が違うというのだろうか?

昔某国では足の付いたものは机以外は何でも食うと言われていた。

その某国で、二本足の鹿という肉が流通していたことがあったそうだ。

まともな人間は、さすがに食うのを躊躇う食材だろう。

それなのに、ヤンキーどもはあからさまに人の子供のようなゴブリンを躊躇なく食べている。

逞しいと言うべきか、落ちたと言うべきか、立場によって違う見方になるだろう。


 さすがに委員長グループのメンバーは、そこらへんの忌避感は健在だった。

いくら飢えても、人としての尊厳はまだ失われていなかった。

まあ、今は玉子が食えているからなんだけど、人は極限状態になったら生きるために何でもすることは過去の事件の数々が示している。


「さて、MPもレベルアップで回復していたから、また何かの卵を召喚しておくか」


 俺はレベルアップしたステータスを表示した。



名前:転校生

人種:ヒューマン

職業:なし

レベル:4up

HP:44/44up

MP:33/50up

スキル:身体強化

    火魔法Lv.1

    生活魔法Lv.1

ギフトスキル:た*まご?召喚 ▲ 鶏卵

                トカゲ卵Lv.2

                カエル卵

                魚卵


 スキルは生活魔法を得た。

どうやらレベルアップで毎回スキルを1つ得ることが出来るようだ。

そして、ギフトスキルという最初にもらったスキル、これは成長していくスキルのようだ。

せっちんの火魔法もそのうち便利機能が追加されるのだろう。


 さて、今回注目はトカゲ卵Lv.2だ。

レベル2になって何が違うのか試してみるしかない。


「トカゲ卵Lv.2召喚!」


 俺がそう唱えると、以前より大きな駝鳥の卵大の卵が召喚されて来た。

おそらく、孵るトカゲが大幅にパワーアップされるのだろう。

そして、MPが4も消費されていた。

レベルアップしていなかったら危ないところだった。

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