第11話 ゆで卵をこっそり食う
ゴブリン肉を腹いっぱい食ったヤンキーたちは、まだ起きて来ていなかった。
これをチャンスだとばかりに委員長が俺に提案して来た。
「転校生くん、MPが回復したことは黙っていてくれないか?」
「どうして?」
「奴らはゴブリンを腹いっぱい食べたが、僕たちは昨日の玉子1/3だけだ。
彼らが寝ている隙に我々だけで玉子を食べよう」
委員長は、このままではここにいる同級生たちの身体がもたないと思ったらしい。
ヤンキーたちが寝ているのを良いことに、さっさと玉子を食べてしまおうと言うのだ。
「バレたら恨まれるんじゃないか?」
「彼らにはまだゴブリンの肉がある。
あれを独占できるうちは文句はないだろう。
それに、こちらだけで食べたことがバレなけれな良いだけだ」
どうやら委員長も切羽詰まっている様子だ。
確かに、こちらの同級生たちは夜の見張りもしたし、憔悴しきっている。
ここで玉子の優遇ぐらいあっても良いだろう。
「わかった。16個出そう。
調理はどうする?」
「ちょっと来てくれ」
委員長に連れて行かれたのは、渓流から少し外れた場所で、そこには岩があり、その真ん中に窪みがあった。
「ここに水を溜めて熱した石を入れれば、鍋にならないか?」
確かにそうすればお湯が沸いて湯の中のものは茹でられるだろう。
「ゆで卵が作れるんだな?」
委員長ナイスアイデアだ。
俺も生卵は避けたいところだ。
「せっちんを呼んで火魔法を使うと奴らにバレる。
だから石を使うんだ。今から石を焼こう。
木で挟んで持ってくれば直ぐにゆで卵は出来るだろう」
いや、それでは遅い。
ヤンキーどもが起き出して来れば全てを奪うに違いない。
「委員長、ここだけの秘密にしてもらえるか?」
俺の真剣な提案に委員長も頷いて同意を示した。
委員長もヤンキーたちに内緒で玉子を食おうと言うのだ。
ここで秘密をバラすようなことはしないだろう。
「ゴブリンを倒すと、スキルが手に入ると言ったよな?」
「ああ、そうだったな」
「隠していたが、俺も火魔法が使える」
「!」
「ああ、ここに水さえ張れば直ぐに玉子は茹でられる」
「直ぐに茹でて食べてしまおう。
食べてしまえば証拠は残らない」
委員長もヤンキーどもとの共存は無理だと思っているようだ。
委員長と2人で水を手で掬って運び、火魔法で熱湯にした。
そこにたまご召喚で玉子を16個出して沈めた。
このまま10分も待てば半熟ゆで卵か、お湯が冷えても温泉卵ぐらいにはなるはずだ。
「出来たかな?」
「たぶん」
そう言うと、俺はゆで卵を手にする。
「あちあちあち!」
ゆで卵は熱かった。
俺は制服の袖でゆで卵を掴むと、そのまま渓流に持って行って冷やしながら殻を剥いた。
殻の中からはつるんとした白身が現れた。
少なくとも温泉卵ではなく、半熟卵になっているようだ。
俺はそれを口に放り込む。
「美味い!」
すきっ腹に久々の食材、そのスパイスはただのゆで卵を極上の美味に仕上げた。
「本当だ。美味い」
委員長もゆで卵を食べていた。
「皆を呼んで来よう。この熱さだと持っていけない。
そうだな。全員に顔を洗いに来たふりをさせて食べさせよう」
こうして、ヤンキーの抜けた同級生15人+俺はゆで卵を食べることが出来た。
夜にまた16個茹でて提供しよう。
火魔法でMP1ずつ使うことになるが、それでもMPはいくらか残る。
一晩寝ればまたMAXまで回復するだろう。
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