第12話 共存

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 2話同時投稿です。前話があります。

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 昼近くになって、ヤンキーたちが起き出した。

日頃の生活リズムが狂っているので、それが異世界でも出たかたちだ。

この世界、どうやら地球と1日の時間はそんなに変わらないらしい。

何人かが持っている腕時計で時間がわかったが、地球と違和感がないのだ。

最近はスマホで時間を確認することが多くなったため、腕時計はファッションとしてしかつける生徒がいなくなった。

そのため、腕時計を持っている者は意外と少なかった。


「おい、転校生、玉子出せよ」


 いきなりヤンキー2がカツアゲして来た。


「MPが回復しないと無理だと言ったよね?」


 俺がそう言うと、ヤンキー2はバカにした様子で言った。


「はぁ? MPは日跨りで回復するんだよ!

そんなことも知らねーのかよ!」


「それって、誰情報?」


「さちぽよがよー、昨日使った魔法のMPが戻ったって言ってんだよ。

だからお前も戻ってんだろ? 早く玉子出せよ!」


 さちぽよが魔法を使えるのか。

その使った分が回復したから俺も回復しているとヤンキー2は思ったんだな。

だが、その根拠、あまりにも薄弱じゃないか?


「それって数字でいくつ戻ったんだよ。

は玉子を10個も出したんだからな。

魔法10回分だぞ!

同じように回復するわけがないだろ!」


「え? そうなの?」


 ヤンキー2が小声でつぶやく。

しかし、それを誤魔化すように大声を張り上げる。


「うるせー。今日はこれぐらいにしといてやるよ!

回復したら俺に言うんだぞ!」


 ヤンキー2は俺の出まかせを信じたようで、捨て台詞を吐いて去って行った。

どうやら、さちぽよは魔法を1回そこらしか使っていなかったらしい。

そこに俺との差があることに気付き、ふり上げた拳を降ろさざるを得なかったようだ。


 このままだとヤンキーにカースト下位に落とされ、搾取される毎日になってしまうだろう。

これは近いうちにここから出て行くべきだろうな。

水と火と食料(玉子)は確保した。

ゴブリン程度ならば、身を守る術もある。

心残りはメガネ女子のような善良な同級生の存在だが……。

全員を俺が養うのは違うからな。



「既に、もう昼だ。

これからの行動を決めたいんだが、このままでは一緒に行動しかねる」


 委員長が遅く起きて来たヤンキーたちに怒りの声を上げる。


「うるせー! 委員長。

ならば、このまま二つに分かれて行動すればいいだろうが!」


「そうだ。そうだ。お前の指図は受けねー!」


 これは有難い。ヤンキーどもと分離するだけで、どれだけ気持ちが楽になるか。


「いや、この森で別れるのは危険だ。

街へ着くまでは一緒に行動するべきだ。

それに召喚主が探していた場合、分裂していると面倒だろう」


 委員長が結束を深めようと説得する。

余計なことをしやがって。


「ちっ。仕方ねーな。

で、どうするつもりだ」


 ヤンキーたちも召喚したのは王様か何かだと思っていた。

その救助隊が到着した時に、バラバラでは問題だろうと察した。


「まず、街か街道を探そう。

貴坊の予知でなんとかなるだろう。

かと言って、水が無いと困る。

なので、渓流を下っていくというのはどうだろう?」


 つまり水を確保しつつ。拠点を変えながら街を目指すということだった。


「それには異論はねぇ」


 残念なことに、ヤンキーとの共闘は続くようだった。

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