第10話 見張り
お知らせ
2話同時投稿です。前話があります。
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またレベルアップした俺は、ステータスに知らない表示があることに気付いた。
それはギフトスキルであるたまご召喚の文字の横にあった。
「この▼は、下に隠された表示があるって印だよな?」
俺はとりあえず空中にあるステータスの▼に触ってみた。
すると俺の目にAR表示されているはずのステータスに変化が現れた。
どんなユーザーインタフェースなのか理解不能だ。
ギフトスキル:た*まご?召喚 ▲ 鶏卵
トカゲ卵
カエル卵
魚卵
これってつまり、出て来る卵の種類はランダムだったということだろうか?
たまたま玉子を指定して召喚したから食える鶏卵が出て来ただけで、へたすると違う卵だった可能性があるのか……。
それが今はメニューで選べるという事か。
「魚卵って……。イクラとかタラコが一粒出て来ても腹の足しにならないぞ。
しかもカエルって……。殻が無いからどうすればいいのか……。
水たまりに離すのか? まあ、水トカゲに水を出してもらえばいいんだろうけど。
トカゲやカエルは孵して使役しろってことか?
あ、もしかして鶏卵を選べばニワトリが孵って鶏肉が食べられる?」
うん、俺を同級生の食糧庫人生にするのに都合良くなっただけだ……。
これはそろそろ逃げ出す算段を付けとくか。
そろそろ日が落ちる。
深夜の魔物からの護りは集団の方が都合が良いか。
同級生の集団に合流した俺は、微妙な空気を感じた。
同級生の関係に亀裂が走ったような感じ?
リアルに香ばしい臭いは、ゴブリンを焼いた臭いか?
「おい、食わねーのか?」
「そうだそうだ。
「お前らも、
どうやらヤンキーどもが
さっき俺がターゲットになりそうになったやつだ。
まさかあれがターゲットを変えて実行されたのか……。
その結果、
俺の見解では、魔物肉は危険度が高いと思っている。
ラノベでも、魔物肉を大量に食ったせいで本人が魔物化するなんて現象もあるのだ。
それは蓄積性があって、今が大丈夫でも将来どうなるかわからないのだ。
たった一口食べさせて影響がないからといって将来のことはわからないのだ。
知識が無いうちは魔物肉に手を出さない方が良いだろう。
そのうち街に出るだろうから、その時に現地人が食っていれば安全性は担保される。
それまでは口にするのは危険だ。
食っていないのは、人型生物の肉に忌避感がある者と、そもそもゴブリンを食うのが嫌な者、そして俺のように警戒感のある者だけだろう。
ヤンキーは
フグだって毒の部分を美味しく頂けてしまうんだ。
それを致死量食べていないから助かっているだけで……。
ゴブリンもそうかもしれないのに良く食えるものだ。
しかし、ヤンキーの無理強いも女子などには通用していなかった。
「みんな、注目してくれ!
これからの事を話さないとならない」
委員長が先頭に立って今後の事を話そうと訴えだした。
どうぞどうぞ。俺はそれに反対せずに傍観した。
いや、むしろ大歓迎だ。
身を守るためには集団で行動するべきなのだ。
「そろそろ日が沈む。
そうなると、ここらでキャンプしなければならない。
雨が降らなければ、焚火を前にして雑魚寝でも良いが、寝ずの見張りが必要になる。
ずっと起きていろというわけではない。
最低5人ぐらいが起きて交代で魔物を警戒する必要がある」
委員長の言う事は尤もだ。
だが、このクラス、果たして全員が協力できるのか?
ヤンキーどもなんてかなり自分勝手に動いているが?
「うるせぇ委員長! 俺たちはお前の指図なんて受けねーんだよ」
案の定ヤンキーたちは協力する気が無いようだ。
俺も自分の命をヤンキーに預けたくはない。
ヤンキーたちもそれと同じ思いなのだろう。
理想はヤンキー1人に他4人ぐらいで組むことだ。
そうすればヤンキーもサボりにくくなる。
だがこのクラス、男女合わせればヤンキーが全人数の半分いやがるのだ。
つまり多数決でもヤンキー側に傾きがち――暴力による票の纏めがある――なのだ。
15対15に俺の1票で決まるなどという単純な話ではないのだ。
「ちょっと君たち!」
委員長としては単純戦闘力の高いヤンキーをあてにしていたのだろうが、ヤンキー側も自分たちが利用されるのはたまったものではないのだろう。
とうとうヤンキーたちは集団で同級生たちから離れてしまった。
しかも、守りやすい三方を崖で閉ざされた棚のような場所に陣取った。
ここなら一方を警戒すれば良いのでゴブリン程度の魔物であれば守りきれるだろう。
ヤンキーも少しは頭を使うらしい。
だが、そこは予期せぬ強力な魔物に襲われたら逃げ場のない死地だ。
そうならなければ良いがな。
残った同級生15人と俺は、この人数で自分達の身を守らなければならなかった。
「委員長、これを提供する。
素手より攻撃力は上がるだろう」
俺は先ほど倒したゴブリンのこん棒を委員長に渡した。
俺が眠っている間に襲われて終了などとなってほしくないからな。
「すまない。活用させてもらう」
おそらく魔物は火を嫌う――そんなことは確定していない――だろうから、焚火を囲んで寝ることにした。
見張りは4人。それを4交代で2時間ずつ見張ることにした。
見張りメンバーの男女比は丁度2:2。
ヤンキーの抜けたこの集団は元々男7:女8だったのだが、俺が入ることで8:8になったのだ。
その4人で四方を向いて警戒する。
俺は栄ちゃんメガネ女子三つ編み女子の知り合い4人組での見張りとなった。
順番は最後、明け方の4番目だった。
俺は水トカゲに何かあったら起こすように言って眠りについた。
「起きて。時間よ」
身体を揺すられて目を覚ますとメガネ女子が俺を起こしに来ていた。
「すまない」
俺は慌てて起きると、ちょっと自分の無神経さに驚いてしまった。
まさか熟睡できるなんて……。
もし、これがメガネ女子でなく魔物だったら命を狩られていただろう。
どうやら、水トカゲに監視をまかせたからか、安心していたようだ。
これが同級生だけの監視だったらここまで安心出来たのだろうか?
俺は彼らを信じ切れていないとはっきり解ってしまった。
このまま4人で見張りに立つ。
俺の担当は一番危ないと思われる森の中心に向かう場所だった。
そこには俺が渡したこん棒が置いてあり、ここが一番の最前線であることを匂わせていた。
ヤンキーたちの棚も守るような位置なのが、なんか腹が立つ。
緊張しながら見張りに立ったのだが、案外安全な場所だったらしく、魔物に襲われることはなかった。
もしかすると、俺が昼間倒したゴブリン2匹が、この場の最大戦力だったのかもしれない。
朝を迎え、委員長が起きて来ると、今日の見張りは終了となった。
そして、重要な発見があった。
寝て起きたらMPが回復していた。
それは眠ったから回復したのか、日付を跨いだ――つまり時間が来たから回復したのかは定かではなかった。
これは明日の夜に確認することになった。
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