第25話

 騒がしくも駆け抜けた昨日と変わって、朝は酷く静かに目が覚めた。珍しくアラームが鳴る5分前に目が覚め、ハダリーを驚かせてやろうとリビングに歩く。寝室から作戦は始まっていて、ドアを開けるのも、廊下を歩くのも音を出さずにとうとうリビングと廊下を隔てるドアの前に辿り着く。

 全く動じないハダリーの事だから、「早起きっすね」とか「ドア壊れるんで」などの淡白な答えだろうか。意外と少し跳ねて「驚いたっす」とかだろうか。考えているだけでドアを開ける前からにやにやが止まらない。


 お待たせしました、それでは気になる結果は。と訳の分からないナレーションを頭の中で流し、ドアノブを押し下げると同時に突入する。


「おはよハダリー!」


 いつも姿があるキッチンに目を向けて姿を探すが、リビングにもキッチンの向こうにもその姿を捉えることが出来なかった。寝坊をしたのかと思い星海の部屋を覗き込んでみたが、いつも一緒に寝ているはずのハダリーの姿はやっぱり捉えられなかった。


 まだ眠っている星海を起こさないようにそっとドアを閉じ、とりあえず考えようともう一度リビングに戻る。とりあえずいつもご飯を食べるテーブルの椅子に座ろうとすると、置き手紙のような紙が真ん中にあった。嫌な予感がしながらもそれを手に取って封を切ると、中から1枚のドッグタグと1文だけ文字の綴られた紙が出てくる。ただ一言「お世話しました」


「……お世話になりました」


 唐突に、案外早く来た別れに惜しみつつも、ドッグタグのチェーン手首に巻いて固定し、星海を起こしつつ仕事の準備を始める。

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