第1話 キょうKARAおレは!

 定時制高校の入学式。髪の毛を金髪から黒染めにした。家を出る前にピアスもちゃんと外す。一応、警棒はポケットに入れておいた。

「よし!」と気合いを入れる。今日から学校で友達を沢山作って青春を謳歌するんだと意気込んでいたのだった。

 学校は三国ヶ丘駅の近くにあった。東羽衣駅から鳳駅で乗り換えるのが面倒臭い。電車の中でタバコに火を付ける。ぼーっとしていたら、あっという間に三国ヶ丘駅に着いた。

 階段を上がると、金髪でツイストパーマをかけてるヤンキーが松葉杖を突きながら歩いていた。「同い年ぐらいかな?」と、通りすがりにチラりと見ると細い目で睨んできた。

 まさか、こいつと同じ学校でクラスメイトになって仲良くなるとは、この時は思わなかった。


 入学式も無事に終わり、いよいよ授業が始まると俺は今度こそ真面目に生きるんだと教科書を広げて先生の話を一生懸命聞いていた。

 定時制高校の授業は、ろくに勉強してこなかった俺でも優しい内容だった。自分もやれば出来るんだ。勉強って楽しい!そう思い始めた頃に、また悪い癖が出てしまう。

「ちょっとだけ、ちょっとだけ一服してくるか…」と、中学生の時のノリで教室を抜け出した。

 学校のトイレに駆け込むと、同じ様にタバコを吸っている奴が2人いた。

 「うぃっす」と軽く挨拶をして俺もタバコに火を付ける。

「自分らどこの子よ?」

 俺から声を掛けると背の低い奴が答えた。

「俺らは旭。自分は?」

「高石やで!名前は礼希っていうねん。仲良くしてや!」

「ええで。俺はカズキ、こっちの背が高い方がツルタっていうねん!」

「おう、よろしくな!」


 カズキとツルタは旭中学の番を張っていて堺で有名な年上の2人に可愛がって貰っていた。

 後に、その年上とも仲良くなって浜寺公園でギターを教える事になる。


 こうして仲良くなった2人と、その日は学校を抜け出して吉野家に行くことになった。

 道中、向こうで金髪に背の高いヤンキーがチャリで女とニケツしているのが見えた。

「あれ?サカクラやんけ!おーい、一緒にメシ行こや!」

 と、カズキが大声で引き止める。顔見知りのようだ。


 サカクラは三国ヶ丘中学の番長だった。喧嘩が強くて、入学早々に別の中学のガタイの良い番長とタイマンで勝ち、木刀で鎖骨を折って敬語を使わせていた。

 こうして4人で吉野家に行った後、その日は学校には戻らずに解散した。


 中学の同級生とは、それぞれが離れ離れになった。俺にギターを教えてくれたショウキは昼の学校に通っていたのだが、休みの日は一緒にギターの練習をしたり、戎橋(ひっかけ橋)で路上ライブをしていた。

 殆どがゆず、19の曲をやっていたのだが、オリジナル曲も作っていた。稼ぎは大体一日一万程で皆んなで折半。女の子のファンもついて、ライブをする度に毎回来てくれた。

 何もかもが上手くいっていたのだが、ある出来事がきっかけで俺とショウキは仲違いをする様になった。

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