未成年 -みセ∵ぃNEん%-

MrR

ぷロ呂ー具

 西暦2000年。あの頃は、「ダルい」という言葉が全国的に流行していた。Dragon Ashに影響されて、B系のオーバーサイズの服を着てティンバーのブカブカのブーツを引き摺りながら歩くのがカッコいいと思っていた。

 

 毎日が退屈に過ぎていく。説明の出来ない苛立ちで頭がおかしくなりそうだった。

 家にも学校にも居場所がない。でもシンナーを吸えば嫌な事は全て忘れられる。

 原チャリで地元の浜寺公園にある海岸沿いに行くとスーパーのビニール袋を取り出して純度の高いトルエンを入れた。

 スリーナインは喉ごしが良いから好きだ。こうして月が異常に近くで見えるようになった頃、唐突に寂しくなって友達に電話をする。電話口から聞こえて来るのはクラスの笑い声。こういうのはマジで白ける。キレそう。

 みんなは昼の学校に行っていた。俺はみんなが遊ぶ時間の夕方に学校に行かなければならない。ああ、めっちゃダルい…。


 俺はずっと普通に憧れていた。思えば小学生の頃からだった。病気で足に装具を付けて学校に通っていたのだが、クラスメイト達からイジメられていた。

 大体が殴られるか無視されるかの二択で、毎日が地獄だった。担任の先生は知らんぷり。だから俺は暴力で解決した。それからは学校側から親にしょっちゅう連絡が入るようになる。俺の暴力をやめさせるようにしつけてくれと。

 酒乱の親父からは人様に迷惑をかけるなと殴られた。矛盾していると思いながらも、この時は反省していた。

 家の中は常にピリピリしていて、食卓では酒に酔った親父が毎日暴れていた。食器が飛ぶのが日常。それが俺の世界での普通やった。

 

 そういえば、中学生になって同級生の家族と飯を食う機会が増えた時に違和感を覚えたな。どこの家庭もみんな食事をしながら楽しく話をしていたんだ…。俺はいつも遠慮なくおかわりをしていた。だって家族団欒で食う飯はめちゃくちゃ美味かったから。

 だけど、つい食い過ぎて気分が悪くなってしまう。言葉に詰まり、何かが一気に喉元まで込み上げてくる。俺は急いで立ち上がり、外の電信柱まで走って泣きながら盛大に吐いた。


 その日から家出をして同級生の家を転々とするようになった。ずっと居ても良いと言ってくれる家には、頼むから出て行ってくれと言われるまで居座った。友達にお前は自己中過ぎると怒鳴られた事もある。でも自己中が、一体どういう言葉の意味なのか当時は分からなかった。


 こう見えても、若い時は何度も更生しようと頑張っていた時期がある。黒縁メガネをかけて、ちゃんと授業を受けてみたりとかな。でも、どうしても勉強の仕方がわからなくて何度も挫折をした。

 授業中に黒板がグニャリと歪む。永遠に続きそうな退屈に苛まれていた。我慢の限界だ。何も言わずに席を立って教室を抜ける。そして、いつもの様に廊下でタバコに火を付けた。この一服が焦りや不安と混じっていてチャイムが鳴っても止まらなかった。

 

 当時はゆず、19のフォークデュオが流行っていて、みんなアコギを持っていた。ある時にクラスメイトからギターを教えて貰った。朝から晩まで夢中になってギターを掻き鳴らしたな。音楽で更生できるという希望がそこにはあった。

 でも、中学の卒業式前に逮捕される事になる。次は少年院措置になると言われていた。自分の事しか考えていない俺は「まぁいっか」という軽い気持ちでいた。

 だけど、鑑別所で数日が経って急に釈放される。どうやら学校の同級生達と担任の先生が、嘆願書を出してくれたらしい。金八先生さながらの人間ドラマがそこにはあった。

 卒業式は出れなかったが、担任の先生と同級生の友達が俺の為にと、特別に卒業式を用意してくれる事になった。

 その日は生憎の曇りだったけど、花道を歩く時には天が味方をしてくれたのか、ちょうど空は晴れて広がった。

 俺はその様子を見上げて、もう二度と悪い事はしないと誓う。高校からはきっと真面目に生きる。そう思っていたのだが…。

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