空飛ぶ円盤と女の子
@chased_dogs
空飛ぶ円盤と女の子
あるところに女の子がいました。それから男の子がいました。
女の子と男の子は、二人で円盤を作っていました。女の子と男の子くらいの大きさの、大きな円盤です。
そこへ、おじさんがやって来ました。おじさんは、女の子と男の子の円盤を見て訊ねます。
「やあ、すごい円盤だね。それで何をするんだい?」
男の子は
「何もしないよ。ただ作っただけ」
と答えました。
女の子は
「飛ばすの」
と答えました。
「へえ! そいつは素晴らしいね!」
おじさんは関心した様子で頷きながら、円盤の周りを行ったり来たりしました。それから、
「これから飛ばすのかい?」
と訊ねました。
「うん。そう」
女の子が答えました。
女の子と男の子は、円盤を持って高台までやって来ました。そして円盤を飛ばしてみることにしました。
二人が手を離すと、円盤は真っ逆さま。地面にぶつかって壊れてしまいました。
「おや、壊れてしまった」
おじさんが言いました。女の子も男の子も、何も言いませんでした。
それから、女の子と男の子は円盤を作り続けました。来る日も来る日も、円盤を作っては墜落させました。小さかった女の子と男の子は、大きな女の子と男の子になりました。
ある日、円盤を運びながら、女の子が男の子に言いました。
「あのね、この円盤が飛んだら……」
でも男の子は空飛ぶ鳥を見ていて気が付きません。
「あの」
女の子は少し大きな声で言いました。
「なに?」
男の子は弾かれたように振り向きました。
「後でね。話があるの」
「うん」
それからまた二人は歩き始めました。
女の子と男の子が高台まで円盤を運んだとき、辺りはもうすっかり暗くなっていました。高台の下には木々の黒い影が広がり、その先に街の灯りが瞬いています。
女の子が合図しました。男の子は頷いて、スイッチを押し、ハンドルを回します。すると、
「ウンゥオンオンオン……」
円盤は音を立てながら滑るように動き出し、そしてゆっくりと浮かび上がりました。
空飛ぶ円盤を見つめながら、女の子が言いました。
「それで、さっきの話だけど」
「さっき?」
男の子は首を傾げました。女の子は話を続けます。
「私、もっと円盤を作ろうと思うの。それで、もしよければ」
円盤はどんどん遠ざかり、やがて夜空の星と区別できないほど小さくなっていき、そして見えなくなりました。
「また一緒に円盤を作ろうね」
空飛ぶ円盤と女の子 @chased_dogs
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