母とともに牛や馬のいる草原で暮らす少年・ジャックの運命譚です。
感受性が強く傷付きやすい性格で学校には馴染めないながら、豊かな自然の中で、兄のような存在のトニーと野菜を育てたり、母から世界情勢を学んだり、大切に日常を過ごしています。
自然の移り変わり、カラフルな野菜、洗濯物の匂い、学校でのちょっと苦い思い出、トニーとの畑仕事や草むしり、草原や山の風景、母との会話――まだまだ書き切れないくらいありますが、日常風景が丁寧に描かれ、確かな生活の息遣いを感じます。
この穏やかな生活が永遠に続けばいいのに――そう思うほど愛しいです。
やがてジャックも運命の大きなうねりに巻き込まれていくことになるのですが、母と暮らした草原での日常の思い出が、ジャックの心をいつまでも守ってくれますようにと願ってやみません。
親子の深い愛が描かれた作品です。