第二十九話「鮫島冴夜」
林太郎たちはモニターに
地図には赤い点がいくつか表示されている。
「現在、各支部と事務所
「……
林太郎は
しかし
眉毛をハの字にした剣山怪人ソードミナス、
「じつは誘拐じゃなくて、ちょっと
「いや、それはない。これは計画的な誘拐だ。まさかヒーロー本部が
林太郎は“自分ならば”この状況をどう利用するか、邪悪な頭脳で
捨て石にされた烈人と比べて戦略的価値が違いすぎる。
最初は人質交換も考えたが、とても釣り合うようなものではない。
なんにせよ極悪怪人デスグリーンと、サメっちこと
となればサメっちの
しかし今現在、ヒーロー本部から林太郎への
つまりサメっちを利用した
「取引材料としてではなく、怪人そのものを利用する施設……まさか」
林太郎の視線の先には、かたわらで心配そうにモニターを見つめる湊の横顔があった。
「
その結論を
………………。
…………。
……。
相当に
「ちょっとちょっと話が違うじゃないの! あのザコ怪人一匹
彼の名は、
勝利戦隊ビクトレンジャーの
大貫が管理するビクトレンジャーは極悪怪人デスグリーンの出現によって壊滅的な被害を受けていた。
「あのちんまい
ビクトレンジャー全滅までの
いろいろと政治が
大貫司令官はいま、責任追及を
そこで
すべては
しかしそれも
「馬鹿にしてんじゃないよ君ねえ。僕と僕の家族の生活がかかってるんだよ? 頼むから考え直してくれよ」
すれ違う職員たちがその
………………。
…………。
……。
窓が無いので今が昼なのか夜なのかもわからない。
少女は
なにひとつ理解できない言葉がずらりと
「むう? バイオ……ゲノムの……についてッス……?」
「
部屋には、冴夜と呼ばれた少女の他に、もうひとり女がいた。
お
「お砂糖は一〇個でしたね」
「もう大人の女だから砂糖なんかいらないッス! あばぁー、
「本当に変わっていませんね。報告書を見たときはまさかと思いましたが、上野公園の一件で確信しました」
「
「行けるわけないでしょう。あなたは怪人で、お姉ちゃんはヒーロー本部職員なんですから」
そのとき、部屋に置かれた通信端末に赤いランプがともる。
女が端末を操作すると、すぐに落ち着き
『おい
「はい、
彼女の名は
ヒーロー本部長官・守國の
そして数年前まで鮫島
「本当に会いたかったんですよ、冴夜」
三年前、朝霞は冴夜の姉ではなくなった。
怪人
それは誰にでも
世にはびこる怪人のほとんどは
そして覚醒したその時点で、
ヒーローたちの活動の
周囲の者も
どれだけ固い
「
「そう、
「アークドミニオンのみんなはいい人たちッスよ!」
「“人”ではありません。怪人です」
朝霞はそう言うと、冴夜の頭を優しくなでた。
冴夜は不安そうに姉の瞳を
「サメっちも怪人ッス」
「そうですね、しかし私の妹です。お姉ちゃんはあなたのためならば、なんだってします。他の怪人が逃げ出そうとも。
「お姉ちゃん……」
「怪人どもと一緒にいても、あなたはけして
そう言うと、姉は妹を優しく抱きしめた。
…………。
そのころ地上ではひとりの男がヒーロー本部庁舎ビル、正式名称“
「さて、どう攻めたもんかね。こいつは骨が折れそうな仕事だ」
彼の名は栗山林太郎。
数日前ここを追い出された男であった。
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