【エジソン】 モルモット オス -7-

実験二日目、試行回数はどれほどだろうか。少年は姿を現さない。


実験三日目、意味があるのかどうかを自分に問うてみる。答えは出ない。


実験四日目、早くも心が折れそうになる。どうやら改善が必要である。意味のない実験を何度行ったところで、それは意味がないことなのである。必要に応じた修正、および更なる施行があってこそ実験と呼べるだろう。何をするべきであろうか。そもそもこの方法は不可能なのか、あるいは試行回数が足りていないのか、どちらの可能性もある。となると、どちらも試せばよいのだ。


前者については、すぐに思いつくものでないため、至高の思考にて熟考する必要がある。では後者はどうか。皆を頼ってみるほかない。


「皆の者、一度集まってはくれぬか。」


「エジソンが久しぶりにしゃべった~。なになに、報告会?」


「今日は木曜日よ。何も報告できることはないわよ。」


皆の者、この言葉で集まってくるのはぴーたろうとちゃちゃみのみである。総勢11匹のモルモット。その多くの者達にとって、私は変わり者であり、進んで関わるべき存在ではないという事実は、とうに受け入れている。


「私の実験を手伝ってほしい。正直に話そう、あの少年をまたここに呼ぶための実験だ。」


「なんだ。やっぱりあなた、あの子が心配だったのね。」


「そんなものではない。私はただ、彼の持っている知識に興味があるのだ。彼の話を聞いているのは、実に有意義な時間であり、そして今もなお、その蜜の味を忘れられないのだ。」


自分の心に嘘をついてしまった。もし私の実験が、たった今、声が届くという形で成功していたのなら、この言葉を聞いた彼はもう一度ここに来てくれるのだろうか。なに、悪いことを言っているわけではない。彼と話がしたい、それもまた私の本心の一つであることは確かだ。


「それで、実験って何をするの。あなた、いつも黙って目をつむっているだけじゃない。昼寝でもしていればいいの?」


「お昼寝だいすき。協力するよ~」


「そうか、ぴーたろうには昼寝をしているように見えていたのか。だが、あいにく昼寝ではない。私は念じていたのだ。彼にもう一度ここに来るようにお願いしていたのだ。」


「念じてた?本気で言ってるの?理論だっていないことが嫌いなあなたとは思えない発言ね。」


「今回ばかりはそう言われても仕方がない。だが、これが理論だっていないかどうかを見極めるのはまだ早い。これが成功するかしないかもまだわからない。これこそが実験なのだ。して、協力してくれるか。」


「ぼくは協力するよ~。その方がエジソンが元気になりそうだしね。」


ぴーたろうはなんというか。何も考えていないようで他者の気持ちを誰よりも考えているのであろう、そう思わせる何かがある。


「それで、何て念じればいいのかな?」


-少年、もう一度、私のもとに来てくれないか。もう一度話をしたいんだ。そして君がどのような思いを抱えていたのか、あるいは抱えていなかったのか、それを教えてほしいんだ。そして悩みを抱えているのであれば、私に解決させてほしいんだ。君の心が知りたい。-


「うむ。ただひたすらに、もう一度、幹丘動物園のモルモット広場に来てくれ、そう念じ続けてくれれば良い。彼がもう一度姿を現したとき、この実験は成功と言えるだろう。」


「わかったわ、協力してあげる。その代わり土日は、面白そうな話があったらそっちの方に行かせてもらうわよ。」


「ああ、もちろんだ。空いている時間で協力してくれれば十分だ。ぴーたろうもよろしく頼んだぞ。」


「わかった~。けど、エジソン、なんか隠し事してそうだね。」


「ところで、私達だけじゃなくて、他のみんなにも頼んでみたら?あなたのことだから、実験回数を増やしたいとか考えて、私たちに頼んでるんでしょ。」


そうしたいのやまやまなのだが。正直に言うと気が進まない。私ははみ出しものなのだ。


「ぼくも一緒にお願いしにいくよ。みんなと一緒の方が楽しいもんね。」


「そうね、私も行くわ。あなたがあの男の子を心配してるのと同じ。ね、ぴーたろう。」


目頭が熱くなる。この言葉を使うのは初めてだ。

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