第234話

「ク、リ、パ! ク、リ、パ!」

「クリクリクリクリク、リ、パ!」

「「へぇーい!」」

「喧しい」



 龍也の家に着くと、テンションがバカ高い二人に挟まれた。

 休日の朝から元気だな、こいつら。



「おいおい暁斗。クリパだぞ? クリスマスパーティーだぞ? これでテンション上がらない方がおかしいだろ」

「そーだぜアッキー。もう今から興奮して夜しか眠れないZE☆」

「夜だけ寝られたら十分だろ」



 だがまあ、気持ちはわかる。俺もクリスマスパーティー……しかも好きな人が一緒にいるクリスマスパーティーなんて、初めてだからな。

 だからって二人みたいに爆発的に興奮することはないが。



「でもいいのか? 普通クリスマスって、大切な人と一緒にいたいだろ?」

「いや、別に」

「いつも一緒だからなー、ウチら」



 あ……そうか、そうだな。俺も梨蘭と一緒に住んでるし、いつも一緒だ。

 今更そういう感覚も鈍いか。



「それより暁斗。どうだった? 久遠寺から許可は貰えたか?」

「ああ、いいってさ。うちなら好きに騒げるし」

「マジ!? 流石、暁斗の嫁! わかってるぅ!」

「それなら、早速色々考えなきゃね!」



 寧夏がパソコンとテレビをケーブルで繋ぎ、カタカタと何かを打ち込んでいく。

 どうやら参加者をリストアップしているらしい。



「えっと、アッキーとリラとりゅーやとウチはいいとして、後はリオとリーシャさんでしょ。ひよりんは……多分自分の運命の人と過ごすだろうからなぁ」

「じゃあ琴乃と乃亜はどうだ? 受験生だし、来るかはわからないけど」



 とりあえずメッセージアプリを起動し、二人のトーク画面に移動。



 暁斗:クリパするけど来るか?

 琴乃:行く!

 乃亜:いっきまーす!



 いや早いな。即レスじゃないか。



「……二人も参加で」

「おけおけ! 人数が多い方が盛り上がるし、おーけーよ!」



 最近は勉強頑張ってるみたいだし……ま、いいか。



「人数も増えたし、やることも考えないとな。ボドゲとかか?」

「普通にゲームとかどーだい? 格ゲーのトーナメント戦で、優勝者には豪華景品が!」

「「却下」」

「なして!?」



 さっきまでノリノリだった寧夏だが、俺と龍也が却下すると愕然とした。

 何を当たり前のことを……。



「ゲームだったら、間違いなく寧夏の一人勝ちだろ。自分の好きな物を手に入れるための出来レースなんてド却下だ」

「うぐっ。流石アッキー、よくわかってるじゃないか……!」



 何年の付き合いだと思ってやがる。



「そんなの、こんなところで景品として手に入れるより、龍也におねだりして買ってもらえ。丁度クリスマスだしな」

「暁斗!?」

「おおっ! ナイスアイディア、アッキー! ねーねー、りゅーや。ウチ欲しい鞄があるんだよねぇ〜」

「ネイさんマジすか!?」



 二人がわちゃわちゃしているのを横目に、梨蘭の顔が思い浮かんだ。

 そうか、クリスマス……クリパもいいけど、ちゃんとプレゼントも用意しなきゃな。

 つってもロクに金もないし……何をプレゼントしたらいいんだろうか。



「龍也は寧夏が欲しいものをプレゼントするのか?」

「お、お手柔らかに」

「で、寧夏は龍也に何をプレゼントするんだ?」

「もう決めてるけど、本人を目の前に言うはずないよね」



 確かに。

 てか、もう二人は決めてるんだな。

 璃音とリーシャさんもなんとなく決めてそうだ。二人とも、相手のことを凄く思いやってるし。

 てなると俺だが……梨蘭が喜ぶもの、か。



「まさか暁斗、決めてないのか?」

「決めてないというか、決まらないというか……梨蘭が喜ぶものってなんだと思う?」

「知らね」

「アッキーのあげるものなら何でもいいんぎゃない?」



 こいつら適当だな。

 まあ、なんとなくそんな気はする。

 だけど大切な人だからこそ、梨蘭にあげるプレゼントは妥協したくない。



「あ、クリパでプレゼントと言ったら、プレゼント交換とかしねーか?」

「おおっ、いいねそれ! ネタあり、ガチありのプレゼント交換。絶対盛り上がるよ!」



 やいのやいのと二人が色々と決めていく。

 それを横目に、俺の頭の中は梨蘭のことで頭がいっぱいだった。

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