第233話
無事に打ち上げが終わって帰宅。
リビングでのんびりしながら、龍也と話していたことを梨蘭に説明した。
因みに梨蘭は今、俺のを背もたれにして完全に体を預けている。俺も梨蘭の体に手を回して、弱い力で抱きしめていた。
「クリパ? クリパって、クリスマスパーティー?」
「おう。まだ詳しいことは決まってないけどな。ウチか、龍也の部屋か、どっかを借りるか。……まあ一番はウチって感じだけど、梨蘭に聞かないとわからないからな」
どこかを借りるにしても、それなりの額がかかるだろう。
寧夏ならウチのグループの高級ホテル貸切にするとか言い出しそうだけど、甘えすぎるのはよくないと思うし。
すると、梨蘭が「そうねぇ……」と腕を組んだ。
「ダメか?」
「……うん、私はここでいいわよ。倉敷の家ってマンションじゃない。なら、一軒家のうちの方が好きに騒げるでしょ?」
「悪いな」
「気にしないで。でも一つだけ条件があるわ」
げっ。許可してから条件提示とか、ずりぃ。
でも今更やっぱやめたは、男としてどうかと思う。ここは覚悟を決めて……。
「な、なんだ?」
「暁斗が着るクリスマスパーティーの衣装は、私が用意するわ」
「……なんで?」
意味がわからない。何故そんな面倒なことを?
「これにうんと言わなければ、我が家を貸し出すことは出来ないわ」
「ぐっ……わ、わかった。だけど変なのはやめろよ?」
「そんなことしないわよ。私に任せなさいって」
そこはかとなく不安を感じるのは気のせいだろうか?
「そうと決まれば、お料理を考えなきゃ。結構な人数になるんでしょ? 手料理もいいけど、お惣菜で賄えるところはそうしちゃいましょう」
「お……おぉ……」
「な、何よ。私、変なこと言った?」
「いや、なんか奥さんみたいだなと」
「おっ……!?!?」
あ、やべ。口が滑った。
後ろから見てもわかるほど、耳や首元まで真っ赤になっている。鎖骨まで真っ赤だ。
間違いじゃない。間違いじゃないが……こうやって口にすると、本気で意識するな。
「あー……ご、ごめん」
「あっ、謝らないで……! う、嬉しい、から……」
「お、おう」
妙な沈黙がリビングに流れる。
でも、この沈黙は悪くない。
梨蘭に回している腕の力を少しだけ強めると、ピクっと反応した。
「痛かったか?」
「んーん……気持ちいいわ」
「言い方がイヤらしい」
「怒るわよ」
「でも昼間のことを考えると、梨蘭ってだいぶエッチだよな」
「あ、あれは歯止めが効かなくなっただけよ」
それをエッチと言うんだが。
俺のジト目に耐えきれなくなったのか、梨蘭は三角座りをしてキュッと口を結ぶ。
全く、この子は。
「わ、わた、私……」
「ん?」
「……私がエッチになるのは、暁斗の前だけ……だもん」
「────」
無意識。無意識だった。
俺は梨蘭を抱き上げると、そのまま寝室に直行。
梨蘭をベッドに横にし、覆いかぶさった。
「あ、暁斗」
「梨蘭が悪いぞ。可愛すぎ」
「ま、待って。まだシャワー浴びてないっ……!」
「それ昼間の自分に聞かせてやれ」
◆
「…………」
「すぅ……すぅ……」
チュンチュン──チュン──。
あー…………やっちまった。最後まで。
昨日の昼はギリギリだったけど、今回はもうダメだ。言い逃れのしようがない。
濃緋色の糸で結ばれた二人が致すと、こうまで理性がぶっ飛ぶのか。頭がどうにかなりそうだった。
「……んっ……んんっ……」
「あ、起きたか?」
「ん……ぁきと、ぉはょ……」
まだ寝足りないのか、完全に寝惚けている。俺の手を握ったまま離さない。
可愛すぎだろ。ずるいわ、こんなの。
しばらく梨蘭の乱れた髪を撫でていると、不意に俺のスマホが鳴った。
誰だよ……て、龍也と寧夏か。
龍也:クリパのこと決めてーから、俺ん家集合な!
寧夏:遅れたら罰金5万!
「額がリアル過ぎるわ」
あと、どこ基準で遅れたとか判断するんだよ。相変わらず適当か。
再び寝息を立て始めた梨蘭を起こさないようにベッドから立ち上がると、とりあえずサッとシャワーを浴びて家を飛び出した。
涼しいを通り過ぎて、寒い空気が肌を撫でる。
もうすぐ、冬が訪れようとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます