第226話
「あ、お兄!」
正気を取り戻した梨蘭と共に琴乃と乃亜の待つ正門近くに向かった。
2人とも中学の制服で、乃亜はちょっとだけ着崩している。
琴乃のこの姿は毎日見てるけど、乃亜は久々に見るな。
「もうっ、暁斗センパイ遅いです!」
「すまん。ちょっと野暮用で」
「もう……それにしても」
乃亜が俺と梨蘭をじーっと見る。な、なんだよ。
と、2人して同時にスマホを構え、問答無用でカメラを連射してきた。
「似合ってる! 似合ってるよ2人とも!」
「センパイ可愛すぎ! 姐さん可愛すぎる! なんですかそれあざといですよ!」
「ちょ、2人ともやめなさい……! は、恥ずかしいからっ」
梨蘭が2人を必死に制止する。
わかる、わかるぞ。俺も見る側だったら、梨蘭をめっちゃ写真に収めたい。
でも俺を可愛いっていうのやめて。恥ずかしい。
なんとか2人を大人しくさせ、学校内を案内することに。
高校の学園祭が珍しいからか、2人ともあっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロしている。
「ほわぁ~。高校生はみんなコスプレしてるんだね~」
「リアルゾンビっぽい人もいてちょっと怖いですが……中学と違って、楽しそうですねっ」
「そうね。中学はこんなにお祭りって感じじゃなくて、もっと勉強の一部って感じだったから」
「へえ、そうなのか」
「「「おい中学OB」」」
そんな一斉に睨まなくても。
「俺が面倒なイベントにまじめに参加するとでも?」
「まあ、暁斗ってそんな人よね……」
「「うんうん」」
めっちゃ頷かれた。
それはそれで腹立つな。
「お兄、中学の文化祭は基本的に飲食はなくて、クラスごとに調べ物をしてそれを展示してたんだよ」
「ああ、そういえばそんなんだったな。俺も1つ調べた覚えがある」
「へえ、何調べたの?」
「教師にバレないで寝る方法」
「馬鹿なの?」
すっごい純粋な目でディスられた。
そんな目で見ないで。悲しくなってくる。
「かなり評判よかったんだぞ。文化祭後に試してみて、マジでバレなかったって感謝されたくらいなんだから」
「どうしよう乃亜。うちの学校馬鹿しかいない」
「私達はそうならないよう、頑張っていこうね」
変なところで友情が育まれてしまった。
あと梨蘭。そんなゴミを見る目で見ないでほしい。梨蘭にその目をされると結構来るものがあるから。
取り合えず、まずは2人を我がクラスの和風喫茶に案内することに。
幸いちょっと人は引き、大して並ぶことなく教室に入れた。
「いらっしゃ……って、暁斗君と梨蘭ちゃんじゃない」
「よ、璃音。順調か?」
「2人がいないから、ある程度安定してるわ。それでもすごい人だけど」
「それはよかった。いやー、手伝いたかったんだけどなぁ。俺らがいると迷惑かかるからなぁ」
「え? 怒られたいの?」
ごめん。謝るから頭ぐりぐりするのやめて。
「暁斗センパイ、何やらかしたんですか? 出禁ですか?」
「俺が何かやらかす前提で話すな。単に、俺と梨蘭が一緒にいると人が集まりすぎるから、店に来るなって言われただけだ」
「嬉しい悲鳴なのか、悲痛な悲鳴なのかわかりませんね」
確かに。
4人席に案内されて、席に着いた。
「姐さん、おすすめってあります?」
「試食で食べた中で一番おいしかったのは、抹茶ラテとお団子セットね。ここにあるほとんどのデザートと飲み物は市販のものだから、外れはないけど」
「なるほど……むむむ、結構な量がありますね。どうしようかな……」
「ねえねえ乃亜。私とシェアしない? シェアした方が沢山食べられよ」
「あ、いいね! 琴乃は何にする?」
2人はメニュー表を見て、キャイキャイと話し合っている。
こうして見ると、2人って本当に仲いいよなぁ。
なんだか、赤い糸で繋がってるような……まさかな。
「ね、ね、暁斗。私達もシェアしましょ?」
「本音をどうぞ」
「苺大福とお団子、どっちも食べたいわ」
「あなたは正直者ですね。ご褒美に2つ頼んでいいぞ」
「やったー! えへへ、ありがとう暁斗!」
単純な子だ。チョロ可愛い。
「暁斗君、梨蘭ちゃん」
「ん? 璃音、どうした?」
「当店でいちゃつきはご遠慮ください」
「……してないが」
「「「「「は????」」」」」
教室にいる人達にすげえ顔で見られた。
あんなの、いちゃつきの内に入らないのに……解せぬ。
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