第214話
玄関から出ると、門の向こうにグレーのスーツを来ている男性がいた。
デカい。龍也並……いや、それ以上か。
全体的にがっしりしていて筋肉質。スーツの上からでもわかるって、どんだけでかいんだ。
ギロッ。
ひぇ、睨まれた……!
ど、どう見てもお父さんじゃない……よな? 似ても似つかないし。
てことは、ボディーガードとか? ……有り得るな。なんと言ってもジョーテラの御曹司なわけだし。
と、とにかく刺激しないようにしないと。
「お、お待たせしました。真田暁斗です」
「…………(ジロッ)」
怖い。やだ帰りたい。あ、ここ俺の家だった。ぴえん。
竦む脚をなんとか堪えていると、男性は厳つい顔を綻ばせて名刺を差し出してきた。
「お初にお目にかかります。朝彦の父です。倅がお世話になっております」
「はぁ。どうも」
思わず受け取り、俺もぺこり。
……? …………????
「え、ということは……か、株式会社ジョーテラの社長!?」
え、嘘。息子のお迎えで、なんでジョーテラの社長がここに……!?
「今日、息子が真田さんと遊ぶと聞いてね。これはチャンスと思い、こうして私が迎えに来たんだ」
「チャンス……?」
「ええ。私も一目君を見たくて」
一目見たくてって……どう考えても専属モデルが関係してるよな。
まさか、朝彦をこんな時間になるまで遊ばせてたから、専属モデルの件はなし、とか……?
緊張で体が硬直する。
が、朝彦のお父さんは朗らかな笑みを崩さず俺の肩を叩いた。
「そんな緊張しなくていいよ。本当に会いたかっただけなんだ」
「そ、そうですか……?」
「うん。むしろ、息子が時間を忘れて友達と遊ぶことなんてなかったから……礼を言わせて欲しい。ありがとう、真田さん」
またお辞儀をされ、俺も頭を下げた。
「と、とりあえず中へ。ですがすみません。朝彦君、ちょっと寝ていて」
「疲れて眠るまで遊んでいたなんて、いいことじゃないか。真田さんのお陰だな。ははははは!」
一乗寺家、親子揃って俺のこと持ち上げすぎじゃない?
俺、そんな大したことしてないんだけど。
リビングに戻ると、梨蘭はまだ惚けていた。
あれは事故だったんだし、あんまり気にしないで欲しいんだけど……。
「おい、梨蘭?」
「……ふぇ? ……ぁっ。す、すみません! く、久遠寺梨蘭、ですっ」
「ふふ。初めまして、朝彦の父です」
まさかの挨拶に、梨蘭は目を見張った。
わかる。わかるぞその気持ち。俺だってボディーガードとかお付きの人が来ると思ってたもん。
「ん? おやおや、ひよりさんも一緒に寝てしまっていたんだね。本当、お似合いの2人だ」
2人を見て微笑みを浮かべる朝彦のお父さん。
と、どこからかバズーカのようなカメラを取り出し──え?
「ちょ、どこから取り出したんですかそれ」
「何を言う。私は世界的大企業、ジョーテラの社長だぞ? これくらいできなくてどうする」
理由になってなさすぎません?
朝彦のお父さんは無心で2人の寝顔を撮りまくる。
それをぼーっと見ていると、梨蘭が俺の服を引っ張った。
「ねえ暁斗。本当なの? あの人が朝彦君のお父さんって」
「本当らしい。名刺貰った」
「……組織の上に立つ人って、変な人が多いのかしら?」
失礼だから言うんじゃありません。俺も同じようなこと思ったけど。
「おっと、失礼。つい可愛い息子夫婦に見とれてしまって」
「あ、いえ。大丈夫ですよ」
将来のことを考えると、多分俺も似たようなことしてるだろうからなぁ。
カメラをしまい、朝彦の肩を揺さぶって起こす。
「朝彦。朝彦、起きなさい」
「……ん……んん……? ぁ、父さん……」
「んゅ……ふあぁ〜……あ、パパさんだー」
「ああ、パパさんだぞ。迎えに来た。ひよりさんも送っていくから、起きなさい」
「「あ〜い……すぴー」」
寝てんじゃねーか。
「全く。似た者カップルというか、似た者夫婦というか……すまない真田さん。2人を運ぶのを手伝ってくれないかい?」
「あ、はい。わかりました」
朝彦のお父さんは、軽々と朝彦を持ち上げる。
じゃあ俺はひよりだな。
肩と足裏に腕を回し、ひよりを起こさないように慎重に持ち上げる。
「ぁ……!」
「ん? 梨蘭、どうした?」
「うぐっ……にゃんでもにゃい……」
いや、そんな渋い顔をしておいて、にゃんでもにゃくないだろ。
「おやおや。真田さんは、もっと女性の心を学ばないといけないよ」
「はぁ……?」
一体なんなの……?
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