第204話

   ◆



「暁斗! アンタはまた無茶ばっかりして……三千院先生に言い訳するの、大変だったんだからね!」

「ご、ごめんなさい……」



 龍也の家でのんびりゲームをしていると、放課後になって梨蘭がやって来た。


 で、俺は梨蘭の前で正座中。

 龍也と寧夏はニヤニヤ顔で見ていた。こっち見んな。



「それと寧夏、アンタの分も言い訳しといてあげたわよ。倉敷の体調悪化ってことで」

「ホント!? えへへっ、ありがとう、リラ!」



 腕を組んでぷりぷり怒っている梨蘭。

 律儀に寧夏のこともちゃんと言い訳してくれるって、やっぱり梨蘭っていい奴だよなぁ。



「にしし。怒られてやんの」

「倉敷! 元はと言えば、アンタがうじうじしてたのがいけないんでしょ!」

「う、うす……」



 そうだそうだー、お前のせいだぞー。

 さすがの龍也も反省してるのか、梨蘭に睨まれて縮み上がった。ぷぷ、ざまぁ。



「それで、仲直りは済んだの?」

「おう、バッチリだ」

「へいへいへーい! これからも俺と暁斗は親友だぜ!」

「離れろ暑苦しい」

「暁斗辛辣〜」



 肩組むのやめろ。頬つついてくんな。


 梨蘭が俺と寧夏の分の鞄を下ろし、何かを思い出したかのように「あ」と口を開いた。



「そうだ、暁斗。校長先生がそろそろ例の件について答えを出して欲しいって」

「例の件?」

「パンフレットモデルよ」



 あ、忘れてた。

 そうか、確か10月に撮影するって言ってたな。

 あと数日で10月。時期的にはそろそろだ。



「なになに? アッキー達、パンフレットモデルやんの?」

「ああ。来年の学校パンフレットのな」

「暁斗と久遠寺ならわかるぜ。濃緋色でめちゃめちゃお似合いだしな」



 龍也と寧夏がうんうんと頷く。

 確かに俺らは濃緋色の糸で繋がっている。世界でも過去に数例しか確認されていない、希少な色だ。


 でも龍也と寧夏も、赤い糸で繋がっている。

 それなのに俺らだけパンフレットモデルをするのもなぁ……。


 …………。



「よし、パンフレットモデルの件、受けよう」

「わかったわ。それじゃあ私から校長先生に……」

「その代わり、条件がある」

「……条件?」



 梨蘭が首を傾げ、龍也と寧夏も訝しむような目を向けてきた。



「ま、条件も含めて俺が直接校長と話すから」

「……わかったわ。それじゃ、お願いね」



   ◆



 数日後。10月3日の日曜日。

 俺と梨蘭はパンフレットの撮影のため、休日の学校を訪れていた。


 と、そんな俺らの傍にはもう3人の男女がいた。



「なんで俺らも?」

「さあ。アッキーが受ける条件だって」

「倉敷君と寧夏さんはわかるけど、なんで私も?」



 そう。龍也、寧夏、璃音である。

 俺が出した条件は、龍也と寧夏も一緒に写ること。

 龍也と寧夏も赤い糸で結ばれてるんだ。俺らが撮って、2人は撮らないのは不公平だろ。

 それに2人は俺の親友だし、どうせなら思い出を残したいという理由もある。


 それを聞いた梨蘭が出した条件は、璃音も一緒に写ることだ。


 勿論、校長は快諾してくれた。

 むしろエキストラ要員が必要だったから、丁度いいのだと。


 まずは校舎内で、校長の手配してくれたカメラマンを前に撮影。

 休み時間の感じということで、廊下に集まっていた。



「へいへい、ちょっと緊張すんな」

「お前でも緊張って概念があったのか」

「暁斗、俺をなんだと思ってんの。これめも繊細ちゃんよ俺」

「身をもって知ってる」

「さすが親友、俺のことなんでも知ってんな!」

「テメェこの前のこと忘れてんじゃねーよ」



 都合のいい脳みそしてんな、こいつ。



「ほう、いい感じじゃないか。あぁ、真田君、もう少しスマーイルスマーイル」

「……うす」



 同伴している校長から指示を受ける。

 す、すまーいる……。



「ぷっ。暁斗、顔硬いわよ」

「し、仕方ねーだろ。作り笑いとかあんまりしないんだから」

「ふふ。なら、これならどう?」



 と、梨蘭が俺の腕に抱き着いてきた。


 思わず目を見張る。

 梨蘭は何も言わずただ微笑んでいた。

 そんな梨蘭を見て、俺もつい笑顔になってしまった。



「いい! いいよ真田君、久遠寺さん!」

「む! りゅーや、ウチらも負けてらんないよ!」

「おうよ!」

「おおおおっ! 倉敷君と十文寺さんも素晴らしい!」

「梨蘭ちゃん、私とも撮りましょう?」

「ええ、璃音」

「久遠寺さんと竜宮院さんもすっっっっっばーーーーーるるるるるるるぁしぃぃぃいいいいい!!!!」



 テンションたけーな校長!

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