第183話

「で、俺らは前に出るか?」

「いや、俺らが負けるとかなり点を取られるからな。一先ず様子見だ」

「了解」



 俺らの左右に、大将騎馬を守る騎馬が2騎いる。

 他の騎馬は、赤組と白組の騎馬と鉢巻を取り合っていた。


 至る所で混戦だ。

 2対1で取りに行ったり、1対1の所に漁夫の利を狙いに行ったり、逃げ回ったり。


 騎馬戦の制限時間は3分らしい。思いの外短いけど、騎馬の数が多いからかなりハイスピードで騎馬が減っていく。



「おいっ、青組の大将だ!」

「久遠寺さんの運命の相手!」

「真田を潰せ! 潰したら30点だ!」



 お、おお? 俺ら狙われてる?

 俺らを守っている騎馬にも1騎ずつつき、白組の1騎が俺らに向かって来た。


 当然高さでいえば俺らの方が上。

 その体長差にビビったのか、敵の騎馬は足を止めた。



「暁斗パイセン、よろしくおなしゃす!」

「へいへい。──総員、前進」



 俺の言葉に、騎馬が動き出す。

 ズンズン進み、俺らの前にいる騎馬が射程圏内に入った。



「うっ……!」

「で、でけぇ……!」

「巨人だ……巨人が進撃してきた……!」



 誰が巨人だ誰が。


 けど、ここで逃げるという選択肢はないのか、騎手が意を決して俺の鉢巻目掛けて腕を伸ばしてくる。



「遅い」



 パシッ!


 伸びてきた腕を手で弾く。

 その勢いが殺しきれず、騎手はバランスを崩して前のめりに。

 その隙をついて、騎手の鉢巻を奪った。



「えっ、な……え?」



 何が起こったのかわかっていないみたいだ。

 まあこんなボクシングの技、、、、、、、、中々知る機会もないしな。


 ……いや、技って言えるほど上等なもんでもないけど。



「お、おおっ! アッキーすげぇ!」

「パシッて! サナたん、パシッて!」

「ねえ璃音、あれってボクシングのやつ?」

「そうね。私も詳しくは知らないけど、確かパーリングってやつよ。相手の攻撃に合わせてパンチで弾き、バランスを崩す……あまり褒められたものじゃないけど」



 褒められなくて悪かったな。あと説明ありがとう。



「龍也、2人を助けるぞ」

「がってん!」



 騎馬が前進し、まずは1騎に向かっていく。



「うわっ、来た!」

「に、逃げろ!」

「へいへいへーい! 逃がさねぇぜおい!」



 逃げようとしたところを回り込み、鉢巻に向かって腕を伸ばす。

 腕をクロスされて防がれた。が。



「取ったー!」

「えっ、あ!?」



 さっきまで取り合っていた青組の騎手が鉢巻を取った。



「ナイス」

「ああ、サンキュー! じゃああいつも助けてくる!」

「おう、よろしく」

「任せとけー!」



 と、今度は護衛騎馬2騎でもう1つを奪った。



「いい感じだな」

「おうよ、さすがは我らが青組!」

「調子乗んな。……でも、さすがに騎馬が少なくなって来たな。俺らも前に出るぞ」

「よしっ。護衛騎馬も行くぞ!」



 3騎1組で前進する。

 近場にいる取られる危険のある騎馬に加勢し、鉢巻を奪っていく。


 が、その間に護衛騎馬の1騎が取られた。



「悪い、取られた」

「気にすんな。あとは任せろ」



 赤組、白組、青組は同じくらいの数だけど、かなり押されてる気がする。

 どうやって形勢逆転を狙うか……。



『ピーーーーッ! 残り、1分です!』



 って、考えてる余裕はない。とにかく1つでも多く鉢巻を取りに行かなきゃ。



「みんな、前進だ!」



 俺の指示で、赤組の大将に向かっていく。

 赤組の大将は既に護衛騎馬はいない。取るなら今!



「き、来たぞ!」

「迎え撃つ!」



 赤組の大将騎馬が俺らに向かって腕を伸ばす。

 それをダッキング、ウェービング、スウェーでかわしていく。



「と、届かない……!」

「ぬはははは! これぞ最強の作戦、『暁斗の身体能力とボクシング技術で取らせずに取る大作戦』だ!」

「おいバカ、これやると不安定なんだから、足元安定させろ──」



 ぐらっ。

 っ! しまった、バランスが……!

 それに加え、赤組の大将が思い切り腕を伸ばし、上から覆い被さってくる。


 バランスを崩した俺。更にバランスを崩した赤組大将。

 俺ら2人がバランスを崩したことで、騎馬までバランスを崩す。


 上から、折り重なって落ちてくる人、人、人。


 あー……やばいなこれ。






 グシャッ。

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