第157話

「お……おおおっ、玄関も広いわねっ!」

「ああ。田舎のじいちゃんの家より広いな……」



 大の大人が4人横に並んでも問題ないほどの広さ。

 目の前には100足以上並べても問題ないシューズインクローゼット。

 全身が余裕で映る姿見。

 上がりかまちは結構な高さだけど、靴を履き替える時は便利そうだ。

 横にはスロープも付いていて、バリアフリーになっている。


 ぶっちゃけ、ここだけで俺の部屋くらいの広さがある。


 玄関だけでこの広さ……なんかソワソワしてきた。



「ここが、私と暁斗の家……! ど、どうしよう暁斗。私、テンション上がってきたわ!」

「まあまあ、落ち着きなさい」



 気持ちはわかるけど、そんなはしゃぐとコケるぞ。


 靴を脱いで玄関から上がる。

 と、小物置きに間取り図のようなものが置いてあるのが見えた。



『家の中の間取り図です。お役立てください。諏訪部仁美』



 こういうちょっとした気遣い……ありがとう、諏訪部さん。


 ありがたく間取り図を見てみる。


 玄関を上がると左右に分かれる廊下がある。

 右には来客用に、3つのゲストルームがあるみたいだ。

 とりあえず、左の方に進んでみよう。


 スライド式の扉を開けると、最初に現れたのはリビングだ。



「ひっっっっろ!」

「わあぁ……! すごおぉ〜い……!」



 間取り図によると、リビングの広さは30畳。

 テレビは壁に埋め込んであり、配線関係は全く外に出ていない。

 ソファーも座卓も高級感漂っていて、これ一つとっても格というのをわからせられる。


 反対側にはシステムキッチンがあり、調理器具は勿論冷蔵庫まで揃えられている。

 最近発売されたばかりの最新の調理器具なんかもあるし、至れり尽くせりすぎるな……。


 リビングからは庭も一望できるし、テラスにも直通だ。

 ここで料理を作って、テラスで食う……それもありだな。



「わ、私、こんなキッチン使いこなせないんだけど……」

「ま、家事は分担してやろうぜ。俺も簡単な料理だったら作れるから」

「本当? 暁斗って普段どんな料理作るの?」

「レンチンブロッコリー、茹でササミ肉、水で洗ったミニトマト、アボカドのわさび醤油和え」

「ほぼ食材の味じゃない!」



 何を言う。これも立派な料理だぞ。……多分。



「はぁ……これは料理は私が頑張らないといけないみたいね……」

「だから、俺も作るって。無理すんなよ」

「無理して食材の味を楽しむより、ちゃんとした料理を食べたいの、私は」



 わがままな奴だなぁ。


 リビングの反対側の扉を抜けるとさらに廊下が続き、左右には洋室と和室が並んでいる。


 1つ1つの部屋が10畳以上あるらしい。

 うちの両親や梨蘭の両親が来た時用に、ここを使うのもありだろう。



「中々いい大きさね。ちょっと狭いけど」

「いやいや、十分広いだろ」



 10畳の個室とか俺が欲しいわ。


 さらにトイレ2つ、風呂場、ランドリールーム、ウォークインクローゼットを見て周り、2階へ。


 玄関近くの階段から登ると、目の前に20畳のリビングが広がっていた。



「いや広いわ……!」

「1階にも2階にリビングがあるって、お掃除が大変ね……どうしましょう」

「どうもこうも、やって行くしかないだろ……後はどうにかして、週一でハウスキーパーを雇うとか……」

「そんなお金ないわよ」

「だよなぁ」



 てことは、俺と梨蘭の2人でこれを維持する、と?

 諏訪部さん、気持ちはありがたいけど、すげー持て余すよ、これ。


 2階はリビングの他に、子供部屋として3つ、トイレが2つ、そして書斎のような場所が1つある。


 そして最後に、寝室。


 高級感漂うキングサイズのベッドに机と椅子。

 更に冷蔵庫、テレビ、シャワールームまで併設されている。


 はっきり言って、この部屋だけで十分生活できるだけのスペックだ。


 バルコニーから下を見ると、かなり高い。

 周囲の2階建ての家と比べても、見下ろせる高さだ。



「こんな場所に住むのか、俺達……」

「…………」

「ん? 梨蘭?」



 どうしたんだ、そんなボーッとして。



「ベッド、ひとつ……ここで寝る……私と暁斗、ここで……ぁぅ〜……」



 ダメだこりゃ。


 トリップしている梨蘭はさておき。


 確かに、次の土曜日からここで梨蘭と寝るって思うと……心の準備と覚悟をしといた方がいい、かもな。

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