第142話

【作者からのお願い】


俺の『運命の赤い糸』に繋がってたのは、天敵のような女子だった件


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よろしくお願いします!!!!



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   ◆



「あわ、あわわわわわ……!」!

「梨蘭、落ち着け」

「おおおおお、落ち着けるはずないじゃないっ。い、いきなりご挨拶なんて……!」



 あれから3日後。

 梨蘭に諸々の事情を説明し、駅前で待ち合わせをしてから家に向かっていた。


 その間、梨蘭はずっと緊張しっぱなし。

 その気持ちわかるなぁ。俺も最初に梨蘭の家に行った時、マジで緊張したもん。



「そ、そういえば、暁斗のご両親の話って聞いたことないけど……どんな人なの?」

「どんな人……普通、かな」

「暁斗の言う普通って、ちょっと信じられない」



 酷い言われようだ。



「安心しろよ。俺や琴乃からしたら普通だから」

「それが安心できないのよ」



 えっ、そんなに?


 1歩1歩、まるで時間を稼ぐようにゆっくりと歩みを進める。

 が、残念ながら無駄な抵抗だ。



「……着いちゃったわね……」

「着いたな。じゃ、開けるぞ」

「まっ、ままままま待って……! もう少し心の準備を……!」

「ただいまー」

「人の話聞きなさいよ!?」



 そこまで叫べるなら大丈夫だろ。


 鍵を開けて玄関に入る。

 と、そこには父さんと母さん、琴乃が待っていた。



「やあ、おかえり暁斗」

「おかえりなさい。それで、そちらが……」



 2人の目が梨蘭に向く。

 にこやかだが、まるで値踏みをするかのような目の父さん。

 逆に母さんは、いつものバリバリキャリアウーマンみたいな雰囲気はなりを潜めて、見事なまでに母になっていた。


 そんな2人の視線に晒された梨蘭は。



「はっ、はっ、はじめましてっ! あああああ暁斗、しゃんとおちゅきあいをしてましゅっ、く、く、久遠寺梨蘭、でしゅ!」



 盛大に、噛んだ。



「ぁ……ぅぅ……」

「あっはー! 緊張してる梨蘭たん、かわえー!」

「んにゃっ!? こ、琴乃ちゃんっ……!」



 さっきからうずうずしていたのか、琴乃が梨蘭に抱きついた。

 おい琴乃、そこ変われ。梨蘭は俺のだ。



「ふふ。琴乃は随分懐いてるみたいね」

「そうだね。さあ、立ち話もなんだし、中へどうぞ」

「は、はいっ。お邪魔します……!」



 琴乃に抱きつかれながらも、まるでロボットのようにガチガチの梨蘭。

 多分、俺が梨蘭の家に行った時も、こんな感じだったんだろうなぁ。


 リビングに入り、父さんと母さんが並んで座り、俺と梨蘭も並んで座る。


 琴乃は席がないから、ソファーに座ってニコニコしていた。



「では、改めまして。僕が暁斗と琴乃の父です」

「母です」

「は、はいっ。く、久遠寺、梨蘭です……! こ、これっ、こちらっ、つまらないものですが、どうぞ……!」



 今だガチガチの梨蘭が、紙袋に入ったお菓子を差し出した。



「これはご丁寧に。今お茶入れるわね」



 と、母さんが席を外し、席には俺と梨蘭と父さんが残された。



「ふふ。久遠寺さん……いや、梨蘭さんと呼ばせてもらおうかな」

「は、はいっ、どうぞっ」

「梨蘭さん。あまり緊張しないでほしい。僕らも怖がらせようと思って、君を呼んだわけじゃないから」

「は……はい。すみません」



 梨蘭は気持ちを落ち着かせるために、何度か深呼吸をした。


 父さんの物腰の柔らかさとおっとりとした口調に、梨蘭もだいぶ落ち着いたみたいだ。



「でも、まさか君のような美しい女性が暁斗の運命の人だなんてね」

「そ、そんなっ。あ、ありがとう、ございます……」



 何人の彼女口説いてんだ、この人。おん? やんのか、おん?


 スパァンッ──!!



「ほげっ!」

「暁斗、パパにガン付けるのは止めなさい」



 戻ってきた母さんに叩かれた。

 妙に力強いし、内側に響く叩き方して来るからやめてほしい。



「パパも、私というものがありながら息子の彼女に甘い言葉囁いてんじゃないわよ」

「誤解だよ。僕の女神は君一人さ」

「……ならいいわ」



 うーん。なんでこの人達、俺らの前でイチャイチャしてんだろう。

 こんな大人にはなりたくないものだ。



「いやお兄。お兄達もだいぶ拗らせてるからね?」



 琴乃ちゃん、ナチュラルに人の心を読むのやめなさい。



「どうぞ、梨蘭さん。冷たい烏龍茶でいいかしら?」

「あ、はい。いただきます」



 それぞれの前に、烏龍茶と梨蘭が買ってきてくれたバームクーヘンが並べられる。



「梨蘭さん、暁斗はどうだい? ご覧の通り、若干面倒くさい性格をしてると思うけど」

「面倒くさくて悪かったな」

「僕としては、褒めてるつもりなんだけどね」



 どこが? ねえ、どこが?



「そ、うですね……暁斗さんは……」



 梨蘭が俺の方をチラッと見る。

 俺も梨蘭を見ると、意図せず目が合った。


 その時、フワッとした笑みを浮かべた。



「暁斗さんは……いえ、暁斗はとても優しいです。誰にも分け隔てなく優しくて、みんなのヒーローです」

「ちょっ、お前何言って……!?」

「私はそう思うわよ」



 ぐっ……! そ、そんな真っ直ぐな目で恥ずかしいこと言うな……!



「それに、面倒な性格といえば私の方が面倒ですし……」

「あー、それは否定しない」

「いやしなさいよっ」



 ツンデレと言えば聞こえはいいが、梨蘭以上に面倒な性格の奴なんていないもの。



「ふむ。暁斗がヒーロー……これは楽しい話が聞けそうだ。じっくり武勇伝を聞かせてもらおうじゃないか」

「ふふふ、そうね。時間もたっぷりあることだし」

「は、はいっ! 暁斗はですね……!」



 ちょ、や、やめっ──。




 その日、2時間に渡って俺は辱められ、最後の方には2人からめちゃめちゃイジられた。


 私のライフはもうゼロよ(白目)。

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