第20話 突然に

「えー、緒賀本の突然の転校が決まった」



ガヤガヤ


ザワザワ



騒々しくなるクラス



「アイツ…」



「最後に挨拶が出来ないのが残念です。最初は、こんなクラス思っていたけど、みんな凄く良くしてくれて今までの中で最高のクラスで楽しい学校生活を送れました。別れるのが辛いです。本当にありがとうございました。と、緒賀本本人からのメッセージを残し学校を去った」




ガタッ

  

俺は席を立ち上がった。



「あっ!おいっ!尾田桐っ!まだ、話は…」




俺は、先生が呼び止めるも教室を飛び出した。




「優矢様、どうされたのですか?突然帰るなんて迎えに来て欲しいとは…しかも学校ではなく待ち合わせするなど滅多に車を利用されないのに驚きました」



「悪い…急用で探したい人がいる」

「探したい人ですか?」

「ああ…愛する女だ」


「…女性の方…もしかして…お坊ちゃまと同じ学校の…方…ですか?」


「ああ」


「でしたら…先程、直接、私(わたくし)の方からお坊ちゃまに、お渡しして欲しいと、お預かりしているものがございます」



「えっ?」



「こちらです」




俺の目の前に差し出されたのは封筒に入っている手紙らしきものだった。


俺は、預かり目を通す。




「…あの…馬鹿…」

「優矢様、どちらに行かれますか?」

「○○空港だ!」

「○○空港ですか?」

「ああ」

「かしこまりました」



車は○○空港に向かった。





そして――――



「藍花ーーーーっ!」




ドキン




「…優…矢…?」



辺りを見渡す私。




「藍花ーーーっ!」



「優矢ーーーっ!」




私達はお互いの確認が取れるまで見渡して再会する。




「藍花っ!」

「優矢…どうし…」

「突然過ぎんだよ!一人で何処に行くんだ?行く宛はあんのか?急に転校なんておかしいだろう?」



言い終える私の言葉を遮るように話す優矢。



「私の人生は引っ越し尽くしだから、突然来て突然いなくなっちゃうから」

「なあ、まさか俺の母親絡んでねーよな?もし、絡んでいるなら行く必要ねーだろ?俺の傍にいろ!」




ドキン



「優矢…ありがとう。安心して。優矢の母親は絡んでないから。母方の祖母が倒れちゃって」


「…えっ?」


「しばらく向こうにいようって…そう決めたの。高校には行くか分からないけど…」


「…そうか…」

「…優矢…約束して…くれる?」


「何?」


「公認になれるまで諦めない。だから…優矢も諦めないで…いつか必ず一緒になれるように…。遠距離になっちゃうけど…でも…お互い頑張…」



抱きしめる優矢。



ドキン



「本当…お前にはいっつも元気貰って救われてた。自分も辛いのに頑張るのを見てると頑張らなきゃって…」


「…優矢…。ありがとう。だけど。私もここまで来れたのは優矢のお陰だから」



優矢は私にキスをした。



「…別れ…辛くなるよ…」

「だったら行くな!」

「…バカ…そんな事…」



優矢は抱きしめると再びキスをした。



「お前の所に必ず会いに行く」

「…うん…」



私達は別れ始める。




「藍花」




グイッと背後から抱きしめられ、首スジにピリッと痛みがはしる。




「俺以外の男つくんねーように印付けといた。消えるかもしんねーけど俺の事ずっと待ってて欲しい。愛してる…藍花…」




ドキン…



「…うん…私も…。優矢も私以外の彼女はつくらないでね。でも…私よりも良い人…」



私の両頬を包み込むようにするとキスで一度、唇を塞ぎ、そのまま深いキスをした。



「誰がつくるかよ!最初で最後の女だ」



ドキン



至近距離で言う優矢。




「最愛の女を裏切る気ねーから!」


「…優矢…うん…」


「じゃあな藍花。元気でな」


「…うん…」


「そんな顔すんなよ!行かせたくなくなるだろう?」


「じゃあ、一緒に来る?ううん…来て」


「バーカ」



私達は笑い合う。



「それでは、緒賀本 藍花!行って来ます!」



私は敬礼をした。



「ああ…行って来い!今度会える時は、良い知らせのお土産持って来て、お前を迎えに行くから!」



ドキン…



「うんっ!待ってるからねっ!優矢っ!絶対だかんねっ!」




私達は離れ離れになり遠距離となった。



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