第17話 動き出す運命〜プロローグ〜始まり
私が出掛けた後、イトコのおばさんは一人部屋にいた。
「…小切手…」
イトコのおばさんは小切手に目が止まる。
「………………」
「何の小切手かしら?家の親族関係には、こういう縁は全くないはずだけど…」
そして、バイトが終わり私はアパートに帰宅。
「あー疲れた。バタバタだったから行く前に疲れた」
ガチャガチャ
玄関のドアノブを回す。
「あれ?帰ったのかな?それとも外出中?まさかね」
私はポストから鍵がある事を確認し部屋に入る。
テーブルの上にメモがあった。
『こちらに住む事、考えておいて下さいね。また、機会があったら伺います』
私は優矢との距離を置くのも良いかもしれないと思った
“離れたらいけない“
そう話をしていたけど今の私達には引き裂かれているのと同じで入る隙なんてない。
「引っ越しとか転校とか嫌だけど…でも…高校中退して他の人生もあるし…両親には高校は出ておきなさいって言われてるけど…小切手返して…優矢と距離………」
私は、小切手のある場所に行く。
「………………」
「…あれ……?…小切手……私……ここに…」
いつもある所に小切手がない事に気付く。
「…嘘……まさか……イトコ……の…人…?」
私はいけないと思ったが、一瞬、疑った。
そうは思いたくない。
だけどあるはずの小切手がないのは事実。
目の付きやすい所においていた私もいけなかったのもある。
取り敢えず、引き出しなど全て、ありとあらゆる場所を開けたり閉めたり、引っくり返したりと部屋の隅から隅まで、くまなく探す。
見当たらない……
全く見つかりもしない……
「……やられた……?」
私がバイトに行く迄はあったのだからおかしい話だ。
泥棒が入った形跡もない。
「やっぱり…ない…」
私は座り込む。
「………………」
私は泣きそうになった。
「…もう…おしまいだ……。…優矢……ごめん……」
唯一の術をなくした瞬間だった。
● 尾田桐家
「優矢さん待ってっ!」
「優矢っ!お待ちなさいっ!」
俺は、二人の飛んでもない状況を目の当たりにして屋敷を飛び出した。
後を追って来る二人の姿。
ドンッ
屋敷を出てすぐ誰かとぶつかった。
「うわっ!すみませんっ!」
「ごめんなさいっ!」
俺とぶつかったのは50代〜60代の女性の人で転倒を防ぐ為、咄嗟に手が出て抱き止めた。
そして道端に落ちているものが目に付き、抱き止めた体を離すと拾う。
「…えっ…?…これ…アイツの…?どうしてあなたが…?」
バッと女性は取り上げた。
見間違いかと思ったが明らかにアイツが持っているはずの小切手だった。
「おいっ!それっ!何であんたが持ってんだよ!」
グイッと女性の腕を掴み引き止めた。
「アイツの藍花の部屋にあったやつだろう?」
「は、離して下さい!」
そう言うと必死に逃げようとした。
「あんた誰だよっ!」
そんな中、背後からは二人の姿。
母親とお嬢様の姿だ。
「優矢っ!」
「優矢さんっ!」
「クソッ!」
俺は女の人の手を振り放すと逃げるしかなかった。
● 緖賀本家
私は悔しいと思う中、諦め片付けをする。
しばらくして―――
私の部屋の玄関のドアを誰かが叩く。
ビクッ
「藍花っ!いるか!?」
ドキン
私の胸は大きく跳ねた。
「…優…矢…?」
私は玄関に向かい開けると優矢に抱き付いた。
「優矢っ!」
「藍…」
私は優矢に抱き付く。
優矢は抱きしめ返し私達は抱きしめ合うと、私はすぐに押し離し下にうつ向く。
「…優矢…ごめん…私…」
「藍花…?」
「…大事なもの失っちゃった…」
「えっ?」
「だから…」
顔を上げる私にキスをする。
「大事なもの…俺はお前以外ないけど?」
ドキン
そして、再びキスをすると深いキスを何度もする。
私は名残り惜しく声が洩れる。
「その反応…ズル過ぎだろ…」
そう言うと再びキスをする優矢。
「それより、部屋…何かあった感じ?」
「…それは…」
私は下にうつ向く。
「藍花…?」
「…小切手…」
「えっ?」
「私も悪かったんだけど…バイトから帰ったら小切手…なくなっちゃって…」
「…小切手…?…じゃあ…あれ…」
「えっ…?」
俺は、藍花を部屋の中に押し入れ、さっきの出来事を話す。
「実は俺が…屋敷を飛び出してここに来る前…一人の女の人とぶつかって、その拍子に…ここにあるはずの小切手が…」
「…女の…人…じゃあ…やっぱり…?」
「心あたりあるのか?」
「…それは…」
私は下にうつ向く。
私の両頬を優しく包み込むと、顔を上げさせる。
「…藍花…」
優しい眼差しの優矢。
「話しな。今、思ってる事。あの小切手は俺も知る権利あるだろう?お前にとっても俺にとっても」
「…実は…バイトに行く前に、イトコのおばさんって人が現れて…家に来ないか?って…言われて…」
「えっ…?まさか行くのか?」
「一瞬、過ったよ。過ったけど…。…だって…今は…辛くて…距離置くのも…」
優矢は私を抱きしめた。
「行くな!そうなったら奴等の思い通りになる!」
「じゃあ…どうすれば良いの!?今、小切手…ないんだよっ!罰が当たったんだよ…」
「…藍花…」
抱きしめた体を離す優矢。
「…おばさんが持って行った可能性は高いよね…私が…バイトから帰ったら無かったから…。行く前まであったはずの小切手はなくなってるし…」
「…藍花…取り敢えず、ここから別の所に移動しないか?」
「えっ?」
「小切手が無い事は分かった。俺も屋敷飛び出してきたから…お前に話したい事がある」
「別れ話なら…ここで言って…。お嬢様と体の関係あるし…私には…もう…」
「誰が別れるかよ!」
「えっ…?」
「俺はお前以外いらねーし。関係あるのは事実だけど、お前を守る為だから」
ドキン…
「…優矢…」
「お前が好きだから…いや…愛しているからこそなんだ!関係さえ持って大人しくしてれば二人はお前に近付きはしない。そう思って…。俺だって、すっげぇ辛いよ…好きでもない女抱いて…」
「…優矢…」
優矢は悲しく辛い表情を見せる。
「だから…」
私は優矢の両頬を優しく包み込む。
「…優矢…私の為に…」
グイッと触れていた両頬の手を掴み引き寄せ抱きしめる優矢。
「一緒に来て欲しい…」
ドキッ
「つーか…一緒にいたいから…俺と来てくれるか?藍花。今後の予定は?」
「…何も…」
「なら好都合だ。俺の傍にいろ!つーか…今夜は帰すつもりねぇから」
ドキン
グイッ ドンッ
私の両手をドアに押さえつけキスをし深いキスをすると首スジに唇を這わせた。
ドキン
「…ゅ…ぅ…っ!」
「その反応ズル過ぎ…ずっとお前に触れたくて仕方がなかった…今すぐにでも抱きてぇけど…一先ず、ここから離れるぞ!藍花」
「…うん…分か…」
言い終える前に唇を塞がれる。
「…ヤベ…今迄の我慢が…」
「…優矢…?」
見つめる私に顔を赤くする優矢が可愛く見えた。
「…可愛い…」
「か、可愛いって…お前…後で覚えてろよ!」
私達は一緒にいられる時間が出来た事に嬉しさを噛み締めながら移動した。
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