第16話 複雑な心境
それから二人のラブラブ度は日に日に増して上昇中が分かり見たくなかった。
複雑な心境の中、私は遠くから見つめる事しか出来ずにいた。
優矢も私の所に来る事がないまま月日だけが過ぎる。
私は以前、優矢が話をしていた事を思い出した。
「ごめん…これを伊江元さんの手に渡らないように尾田桐君に回して」
「OK」
私は授業中、優矢に手紙を渡すように伝え、表にも一言書いておいた。
《お願い…優矢に…無事に回って…》
私は手紙を見届けながら無事に優矢の元に届いた事を確認した。
優矢は、目を通し私だと気付いたのか私の方を見てくれた。
優矢は頷き私も頷いた。
〜 優矢 Side 〜
俺宛に手紙が授業中に回ってきた。
内容を見て藍花からだとすぐに気付いた。
自分の想いをぶつけた内容に藍花は辛い想いをしている事が十分に伝わった。
今、二人の時間がなくなっているのは事実。
俺がお嬢様と関係を持っている事も書いてあった。
多分、俺の母親が藍花に伝えたのだろう
正直、俺も藍花に触れたくて仕方がなかった。
だけど、行動が出来ないのが辛い所だ。
お嬢様は、朝から放課後まで俺にベッタリだからだ。
毎日送迎される俺には、藍花の傍に行けないのが現状だった。
お嬢様は毎晩のように関係を求めてくる。
外にも出れない俺の自由な時間も奪われていた。
まるで監禁されているみたいに感じてしまう俺の個人的な思いだった。
● 尾田桐家
夜。
「ねえ、優矢。今日もあなたと1つになりたいですわ」
「そうですか。分かりました」
彼女は俺にキスをする。
彼女に対して愛情なんて一切ないから感じもしない。
俺は彼女に合わせ任せるだけで良いとは思わない。
彼女は、ただただ俺と1つになることを望んでいるだけ
そして、その彼女が演技している事くらい分かっていたのだから…
ある日の事だった。
私・緒賀本家の所に一人の訪問者が現れた。
「緒賀本…藍花…さん…?」
「…はい…」
一人の女性だ。
50〜60代位だろうか?
「私…あなたの親戚でイトコにあたる緒賀本です。ご両親の事、大変気の毒でしたわね…」
「ええ…あの…良かったらどうぞ」
私は部屋にあげた。
「お一人で暮らしてらっしゃるのね?何かと大変でしょう?」
「最初は、色々と大変でしたけど今は慣れました。でも…時々、人恋しくなります」
「元々、引っ越しが多かったものね」
「そうですね…」
「ねえ、家に来ない?」
「えっ?」
「私も娘が結婚して、夫も病気で他界して、今は一人で住んでいるの。後は孫の顔を見るだけだから」
「そうなんですね」
引っ越し。
転校。
一瞬、脳裏に過った。
今のままじゃ本当に辛いだけ。
だけど……
私達は、色々と話をする。
「あっ!もうこんな時間。あの、私、バイトがあリますので、ゆっくりとされて下さい」
「あら?そうだったの?ごめんなさい…お時間取らせてしまって」
「いいえ。それじゃ出かけられるなら鍵はポストにお願いします」
「ええ」
私は慌てて出掛けた。
そして、これが大事件になるなど知るよしもなく。
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