第10話 優矢への想い

それから2ヶ月。


8月、夏休みも終わる頃―――




「藍花」



ビクッ

驚く私。




「きゃあっ!」



私のアパートの建物の前に優矢がいた。



「えっ!?優矢ぁっ?どうして!?」

「ちょっと…」

「ちょっと?って…」

「お前…バイトしてんだな」

「あ、うん…。あれ…?私、話たっけ?」


「いや…見掛けた」

「見掛けた?」

「ああ。偶々だけど、工事現場とコンビニ」



「……………」



「どうして?」


「どうして?って…。そんなの話す理由ある?私は…優矢と違って良い生活してないから…働かなきゃやっていけないんだよね?」




「……………」




「ともかく、他に用事がないなら帰ってくんないかな?あんたの来るような場所じゃないよ。財閥の彼女や母親に見られたら…。つーか…巻き込まれれんの面倒だし」



「…藍花…」


「お金持ちって何考えて仕掛けてくるか分かんないから逆に怖くて…大事な家族、巻き込みたくないから」


「待てよ!急に態度急変かよ!特別扱いされんのムカつくんだけど!」




「…………」




「あー、そうかよ!だったらもう二度と来ねーよっ!」




ズキン

私の胸が凄く痛かった。




優矢は私の前から去り始める。




「…ごめん…優矢…私…あんたが…好きだから…だから…それに…」





『二度と近付かないで下さらない?』


『これだけあれば借金も返済されるでしょう?』


『貧困な方って色々と大変ですわねぇ〜』




優矢の母親とお嬢様から手を引くようにされたのが分かった。






すごく悔しく腹立だしかった


見下すような言い方された




確かに借金があったのは事実


両親が亡くなって知った現実だった



その為にバイトを始めた




多分調べられたのだろう



お金持ちのやり方は徹底的に調べ


近付けさせない




――― だけど ―――




私は優矢が好き


その想いだけは


誰にも負けない







グイッ

背後から抱きしめられた




「…そんな顔…すんなよ…」



ドキン




「優…矢…?」


「何か言えない理由あんだろ?お前の性格じゃ…理由がねー限り突き放したりしねーもんな」




ドキン



優矢は分かってくれた




やっぱり優矢はそういう奴だ


優しい奴だ





向き合う私達。



「今にも泣きそうな顔…お前…すっげぇ辛そうだし…体調がキツイとかよりも…精神的なもんだろ?」



泣きそうになった。



「………………」




優矢は私の後頭部を押すと私を抱き寄せキスをした。


ドキン



「取り敢えず帰るから」




そう言うと帰って行く。




「優矢っ!」




私は優矢を呼び止めると優矢の背中に抱き付いた。



「ごめんね…優…矢…」

「…謝んな」




優矢をぎゅうっと抱きしめた。





グイッと私の手を掴み壁に押し付けた。




ドキン



「…藍花…」




唇を押し付けるようなキスをされた。




「俺…今、お前にすっげぇ触れてーけど…今日は帰る。俺をあんまり困らせんな…俺の理性搔き乱すなよ…マジで…お前…ズル過ぎ…」



「…優…」



キスで唇を塞ぎ、一旦離すと深いキスをされ、首スジに唇が這う。




「…っ…」


「その反応…ズル過ぎだろ…またな」




深いキスをされ優矢は帰って行く。



私はヘナヘナと座り込む。





私の胸の想いは


もう押さえきれない程


優矢に夢中になっていた……



優矢にもっと近付きたくて




正直…こわいけど…



優矢と……



あなたと…



1つになりたいと……







〜 優矢 Side 〜




俺は彼女を自分のものにしたいと思った


俺達の想いは既に1つになっていた


アイツは…藍花は


俺の為に自分を犠牲にしているような気がした




俺達は


もう相思相愛寸前だと


いや…


既にそうなのかもしれない




でも…


ここで彼女をものにする訳にはいかないと




だけど……



次は逃す訳にはいかないような気がした



お互いの想いを伝え合えたら俺は迷わず彼女を


尾賀本 藍花を一人の女性として


愛してやると思った…


アイツを不安にさせないように……





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る