第8話 お嬢様現る、心機一転のアイツ
「優矢っ!あなたは、尾田桐家の一人息子。名を汚すような事は、お辞めなさいっ!」
「知るかよっ!俺の人生じゃん!名を汚すような事とか綺麗事、言ってんじゃねーよ!あんたらの人生を俺に押し付けんなっ!」
「まあっ!」
バシッ
母親は俺の頬を打った。
「あなたはいつからそんな子になったのです!?名門の高校にと思っていましたが、あなたがどうしても行きたいと行った学校に仕方なく通わせてあげていたのに言葉遣い、ピアス、安っぽい洋服。尾田桐家の恥ですっ!」
「………………」
「伊江元財閥のお嬢様に相応しい男性になるのです!今からあなたを尾田桐家らしい息子に致します」
俺は母親により、専属美容師などに寄って俺の容姿は変えられてしまった。
次の日、制服に着替えるも、学校に行く気などなく下手にウロつかれずに、私服に着替え目立たないように過ごしていた。
そんなある日の放課後、学校帰る前、そうとは知らない私は、
「尾賀本、すまんが、これを尾田桐の所に渡して帰ってもらえないか?」
「分かりました」
私は、先生に頼まれ寄る事にした。
優矢の所に寄りインターホンを押そうと手を伸ばした、その時だった。
「どちら様?」
高級リムジンが私の横に止まって、後部座席の窓から私とそう変わらない年齢でありながらも気品がある美人系の女の人が私に尋ねた。
「あ、あの…優…尾田桐君のクラスメイトで先生からお預かりした物を渡すようにと言われまして…」
余りの美人系を目の前にして自分の慣れない言葉遣いに自分自身にも違和感がある。
「まあ…それは、わざわざありがとうございます」
「い、いいえ」
「私(わたくし)で宜しければ彼に、お渡ししておきますわよ」
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
私は頭を下げ帰り始める。
ふと振り返るとリムジンは屋敷の中に入っていく。
「お嬢様かな?美人系だったし…やっぱりお金持ちは違う…」
胸の奥が痛かった。
私は少しずつ自分の思いに気づき始めていく。
一方、
「先程の女性…可愛い方ね。一般の方かしら?」
「そうではないかと」
「優矢さんのクラスメイト…ふふふ…」
「どうされました?」
「いいえ。優矢さんの学校にもあんな可愛い方いるのね?と思って…」
次の日の朝。
教室の出入り口に人影。
「…………」
「あのー…」
ビクッ
人影は驚く。
「うちのクラスに何か用事ですか?」
「……………」
「誰かに用事なら呼び…」
私は教室の出入り口にいる人影に目を疑った。
「えっ…!?優矢ぁっ!?えっ?何?何?今日から真面目ちゃんにでもなる気?」
「うるせーな!」
かなり恥ずかしがり赤面の優矢。
可愛すぎだ。
「誰かと思ったら優矢だったんだ!」
クスクス笑いながらも
「あんた不良(わる)じゃん!今更戻るにも時間かかるんじゃないの?」
「俺は髪の色変わった所で戻る気ねぇよ!親が勝手にしたんだよ!」
「じゃあ髪の色戻せば?」
「戻しても一緒だ!また、戻される」
「大変だね?裕福の家庭とかお金持ちとか色々家庭の事情…」
ガンッ
扉に手をつく優矢。
そして至近距離で
ドキッ
「家庭がどんな環境だろうと俺は俺のやり方を通すんだよ!親の言いなりなんてごめんだ!」
そう言うと教室に入って行く。
「親…いるだけでも良いじゃん…私は…もう…」
「藍花?廊下で授業受ける気かよ?」
「な、何言って…」
私は教室に入る。
グイッと引き止める優矢。
ドキッ
私の顔をのぞき込む優矢。
ドキン
「な、何?」
「…いや…」
パッと離れる優矢。
「…まだ…俺の知らない何かがお前にあるなぁと思って」
ギクッ
「えっ…?」
「まあ無理に聞こうとは思わねーけど…お互いゆっくり知っていけば良いかな?と思っただけ」
「…優矢…」
「一人で考えないで何でも話して欲しいから。俺もそのつもりだし」
ポンと頭をされた。
ドキッ
優矢は私の心の中にスッと入ってくる。
嫌な入り方は彼はしない。
距離を保ちながらも、時折、胸の奥に入ってくるけど、すぐに離れる彼。
私は、そんな彼の行動や対応にいつも、つい、心を開いてしまう自分がいた。
その日の学校帰り。
「ねえっ!」
「何だよ!」
お怒り気味の優矢。
無理もない。
今日は、優矢を茶化すように私が優矢に接していたからだ。
「今日はごめん!」
「…別に…」
「……………」
私も反省しつつも優矢に接するもご機嫌ななめだ。
私は足を止める。
「…藍花?」
私が来ていない事に気付き足を止め振り返る優矢。
「藍花」
気付けば傍に来ていた優矢。
ポンと頭をする優矢。
私は顔をあげる。
優矢はキスをした。
ドキン
「そんな顔すんなよ!」
「だって…確かに私も悪かったけど許してくれないから…どうする事も出来なくて…」
「……………」
再びキスをされた。
「じゃあ仲直りのキスな」
「な、仲直りのキスって…私達は別に付き合って…っ」
再びキスをされ、深いキスをされた。
「じゃあ、俺の機嫌が直るキスなら良くね?」
「それって優矢がキスしたいだけじゃん!」
「でも、それで機嫌が直るならお前も良いだろ?しかも俺とキスなんて滅多に出来ないけど?」
「どんだけ特別な存在なの?」
「さあな。俺達の間は目に見えない分厚い壁あるし。俺は親の言いなりの操り人形だから。見えない所でありのままの自分出せる相手いなきゃやっていけねーだろ?」
「……………」
「特にお前…本音でぶつけ合える奴いねーだろうし!」
「…それは…」
「だから…ありのままの自分出せって言ってんの!本音出して欲しいし。正直…俺も、そういう相手に会ったのはお前が初めてだから」
「…優…矢…」
「だから…お互い信頼しあえる俺達でいたいから。ほら、帰るぞ!」
「…うん…」
私達は帰る。
「そういえば昨日、美人系の女の人、優矢の所に来ていたけど学校からの預かり物、渡してくれた?」
「ああ」
「そっか。それなら良かった。一体、誰なの?なんていうか品があるっていうか」
「伊江元財閥の女。伊江元 流麗(いえもと るり)」
「ざ、財閥ぅぅっ!?やっぱ金持ちは違うね」
「一緒だ」
「えっ?」
「ただ世間体が違うだけだ。俺的には良い気しねーけど」
「どうして?」
「両親や両家の人生を俺達に押し付けられてるだけだ。どれだけ悪事をしても権力は親より」
「優矢…」
「やっぱ、16、17だし、お金持ちの息子なら、そういうもんかな?って…お金持ちはお金持ちらしく親の言う事を聞いておけってやつだろう?」
「………………」
「だけど俺は言いなりになんかなりたくねーから反発している。まあ、反抗期の部分もあるかもしんねーけど…自分の人生は自分で決めてーし!」
私達は、色々話をしながら帰るのだった
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