第7話 優しさ

街で優矢に偶然遭遇し私は全く覚えていない。



「…………」



目を覚ます私は見慣れない部屋に驚き辺りを見渡す。




「…ここは……」



カチャ

部屋のドアが開く。



私は布団を被る。



バッと布団を捲られた。



「きゃあっ!」




ドキッ

私の目の前にはまさかの相手。




「…優矢ぁっ!?」

「お目覚めですか?眠り姫の緒賀本 藍花さん」

「どうして?」


「どうして?…じゃねーよ!むしろ何で?ってこっちが聞きてーよ!全く…突然、倒れるからマジ焦ったし!すっげぇ熱あったから、専属医師に診てもらったら栄養失調と軽く肺炎起こし掛けてたって…」



「…そうか…ごめん…迷惑掛けて。もう平気だから、私、帰んなきゃ…」



起き上がろうとする私の両肩を掴み止めた。




「寝てろっ!」


「嫌っ!」


「その体じゃ無理だろっ!?」


「迷惑掛けたくないのっ!私は、ここの住人じゃないから!自分の所で寝たいの!」


「素直じゃねー所、最初から知ってっけど、何、意地になって強気な事言ってんだよ!無茶しすぎなんだよ!」



「……………」



「今日は素直に言う事、聞けよ!あんな雨の中、ずぶ濡れになって、らしくねーだろっ!?」


「放っておいて!何も分かんないくせにっ!」




私はベッドから降りフラつく体で歩き始める。





「藍花っ!待てよ!」




グイッと腕を掴まれバランスを崩しベッドに倒れる私達



優矢は迷う事なく私の手首を押さえつけ動きを塞ぐように私の上に股がった。




ドキンと胸が大きく跳ねる中、上から見る体勢に私の胸は、おかしいくらいドキドキとざわついた。




「素直に言う事聞けよ!」

「…退いて…」


「退くわけねーだろ!言う事利かないっつーなら、あんたを傷付けるまでだけど?」


「…だったら…傷付ければ?転入初日に言った事はどうやら事実みたいだし!噂だとナンパして関係持ってるらしいじゃん!」




「………………」




私の首スジに顔を埋めた。





ドキン



体に優しい重みを感じる中、



「…本来なら…とっくに…そうしてる…」



「……………」



私から離れベッドに腰をおろす優矢。



スッと私の両頬を優しく包み込み、優しい眼差しを見せる優矢に私の胸がドキンと大きく跳ねる。




「…でも…今のお前を…これ以上傷付けてどうすんだよ……」




私は涙がこぼれた。




「…藍花…?」


「…ぃよ……」


「えっ?」


「…ずるいよ…優しかったり…冷たかったり…優矢の事…本当分かんないよ…だから気になんじゃん…今の私に…あんたが…あんたの存在が…」




キスをする優矢。



ドキッと胸が高鳴る。




「何があったかは知らねーけど…学校を休んでるかと思ったら目の前に現れたずぶ濡れのお前…。理由は聞かねーけど今日の所はこっちにいろ!」




「………………」



「家に連絡…」


「…気…。平気。大丈夫だから…。両親…外出してて…今日は帰って来ないから」


「…そっか…」


「じゃあ安静にしてろ!お前がいなくならないように監視に来てやるからな」


「か…監視って…」




そして、優矢は部屋を後に出て行った。




朝方。


目を覚ます。




「…ここ…あっ…そうか…」



私は帰ろうと思い布団から出る。



部屋のドアに手を掛けようとした時、ドアが開いた。




ビクッ



「帰るのか?」




ドキン



「優矢…うん…」



頭に軽く触れるようにポンとするとのぞき込む優矢。


ドキン



「お前の事だから、黙ってこっそり帰るだろうと思ったけど案の定そうだったな」



スッとオデコに触れる。


ドキン



「熱は下がってる様子だけど…送ろうか?」



私は首を左右に振りながら




「大丈夫…ありがとう」

「別に当たり前の事しただけだし。余り無理すんな!」

「うん…じゃあ…」



優矢は引き止めるキスをし抱きしめた。



ドキン


「…優矢…?」

「藍花…俺にはもっと素直になってくんねーか?」




ドキン…


「お前の悲しむ姿とか見たくねーから。俺にはもっと本音でぶつかって来いよ。俺もお前には本音でぶつかっていこうと思うから」




ドキン…


私の胸が再び跳ねる。



抱きしめた体を離すと至近距離で見つめてくる中、優しい眼差しの優矢に私の胸はドキドキと加速する中、胸がざわつく。

 


「まだ今は分かんねーけど…俺…多分お前の事、マジになっていく気がする…」



意外な言葉に胸がドキンと跳ねた。




「優矢…」



私の両頬を優しく包み込むと再びキスをされ今まで経験した事ない深いキスをされた。




「……………」



オデコ同士をくっつける優矢。



「悪い………」




ドキン




グイッと引き離す優矢。




「…お前の事…帰したくなくなってる」


「…えっ?優…矢…?」




少し顔を赤くなっているようにも見える。


 

《嘘…優矢が可愛く見えるのは気のせい…?》






正直私も戸惑っていた


恋愛経験のない私に



最低野郎と思い


言い合っていた


初めて会ったあの日とは



打って変わって


私の心までも


彼に夢中になっていた












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