第6話 不幸と偶然の巡り合わせ
Trrr……
Trrr……
Trrr……
「……電話……?」
朝方くらいだろうか?
時間は定かではないが家の電話が鳴り響く。
眠い目をこすりながら電話の所に向かうものの途中で止まってしまう。
「……………」
しばらくして電話が今一度掛かってきた。
病院からだった。
私の両親が、玉突き事故で運悪く巻き込まれてしまい事故に遭った事を聞いた。
結婚式という幸せの後に絶対あってはいけない状況。
ショックだった。
私は両親の死を受け入れる事が出来ず
学校も休んでいた。
食事もままにならず
崖っぷちに立たされている気分だった。
キッチンから朝の香りがし
パパがスーツ姿で出入りする中
『行って来ます』
と言った私に
『行ってらっしゃい』
と返ってきた朝
『ただいま』
と言った私に
『おかえり』
と返ってきた夕方
キッチンからは夕方の香りがあって
ママの作っている料理を当てて
笑顔の絶えない毎日だった
でも……
もう……
その姿は見れない……
そんなある日の外出先の事だった。
ポツ……
ポツ……
空から突然の雨
私は帰る事を躊躇う
一層の事
このまま
肺炎でも起こして
死んだ方が良い……
そんな思いが
脳裏に過る
駄目だって事は
分かっている
だけど………
私は生きる気力がなくなっていた……
「なぁなぁ、見てみろよ!あそこに、すっげぇズブぬれの女子高生いるぜ」
「マジマジ?超イケてんじゃん!」
「なぁなぁ、優、見て…」
「つーか、言う前に食い付いてんだけど!」
俺達の視界に飛び込んだのは紛れもなく同級生であり同じクラスの緒賀本 藍花の姿だった。
学校に来なくなったと思い気にはなっていたのだ。
本当なら、他人なんて干渉もしないし興味がないし、どうって事ないはずの俺だけど、何故かアイツだけは俺の心の中に存在し、常に気に掛けてしまう。
引っ越して転校続きだからか、俺も初めて言い合った相手だったからだ。
面白い奴だと思った。
この俺に本音ぶつける奴なんて、そういない。
だけど、彼女はまだ、もちろん俺も、完全に本音をぶつけあっていない存在だと………
そう思う中、彼女に近付く奴等がいた。
明らかに下心見え見えの奴等だった。
「彼女、どうしたの?そんなに濡れて風邪引いちゃうよ〜」
「………………」
私は無視して通り過ぎる。
「お嬢ちゃん、これでどうだい?」
指で数字を出す。
中年の男性だ。
援交の誘いだろう。
私は再び無視をする。
すると、グイッと背後から腕を掴まれた。
「彼女、そのままじゃ駄目、駄目。俺達と体温めに行こうぜ」
「………………」
「もしかして口が訊けねーの?」
「もしくは耳が聴こえないとか?」
最初に声を掛けてきたと思われる二人組みの人達が再び声を掛けてきた。
後を付けて来ていたのだろうか?
「なあ、その手離せよ!」
「あ?何だ?てめぇ!」
「女から離れな!」
「うるせーな!てめぇに指し図されんのムカつくんだけど!」
殴る音がし、我に返る私。
「…優……矢…?」
揉み合いになる瞬間―――
彼等に札束を見せる優矢。
「……………」
「やり合ってても警察沙汰になるだけだ。女から手ぇ引けよ!」
ドキン
一瞬、違う優矢を垣間見た気がした。
だけど、優矢は優矢だ。
「それとも、まだ足りない感じ?」
「い、いいえっ!」
「マジかよっ!ヤバくね?」
次の瞬間――――
「こらーーっ!何をしている!」
「ヤベッ!警察……」
二人組みは足早に去った。
そんな中、優矢は逃げる素振りなく私に制服を羽織らせた。
ドキン
「優…」
「お前は、今すぐここから去りな!俺は常連だから警察(さつ)なんて怖くねーし、どうって事……」
グイッと私は咄嗟に優矢の手を掴み逃げる。
「お、おいっ!馬鹿っ!逃げたらややこしくなる…」
「こらーっ!待てーっ!」
私達の後を追う警察官達。
「おいっ!藍花っ!お前、逃げるならもっと早く走れよ!」
「……………」
走っているけど、体が思うように発揮されず
「おいっ!追い付かれっぞ!」
「そんなの…」
「あーっ!もうっ!」
グイッと、もう片方の手を掴み引き止められたかと思ったら、足を止め、優矢は私を背後に隠すようにした。
「もう無理だから、お前は黙ってろ!俺が上手く言うからじっとしてろ!」
「……………」
「また君か?」
「悪い!警察の方々。今日は大目に見てよ」
「……………」
「彼女、絡まれてて、そこを助けた所なんだけどさぁ〜。もう、遅いし彼女送らせてよ。これ以上、巻き込みたくないんだけど!だから、お願いっ!頼む!」
片手で謝るような仕草を見せながらも普段と余り変わらない話し方で多少まともな言い訳をする優矢。
意外な一面だ。
まあ、本当の対応なんだろうけど……
「しかしだねー」
「未成年だろう?」
「分かっているからこそ、今から送るんだよ。また何かあったら駄目じゃん?それに…実は彼女、親公認の大事な婚約者なんだよねぇ〜」
《こ、婚約者っ!?》
「そっちも何かと深く関わると後々ヤバイでしょう?もちろん、俺達もだけど…」
意外な言葉に戸惑う中、私の体に異変が起き始めていた。
まともな食事も取れてなく、体がフラっとなる中、耐える。
《ヤバイ…耐えろ藍花》
私は自分に言い聞かせた。
「真っ直ぐ帰るから!」
「…全く…早く帰りなさいっ!」
「サンキュー!真っ直ぐ帰りまぁ〜す♪」
警察官達が去り始める。
「藍花、送る…から…。うわっ!」
ドサッ
俺は抱き止めた。
「おいっ!藍花っ!?」
「……………」
「すげー…熱…」
俺は、藍花を俺の所に連れて帰る事にした。
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